活字紀行

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腹を割ったら血が出るだけさ【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『腹を割ったら血が出るだけさ』(住野よる/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

高校生の茜寧は、友達や恋人に囲まれ充実した日々を送っている。しかしそれは、「愛されたい」という感情に縛られ、偽りの自分を演じ続けるという苦しい毎日だった。ある日、茜寧は愛読する小説の登場人物、〈あい〉にそっくりな人と街で出逢い――。 いくつもの人生が交差して響き合う、極上の青春群像劇。
(本書より引用。)

 

人物紹介


糸林茜寧:高校生。偶然手に取った"少女のマーチ"という本が自分を理解してくれたと感じた。
宇川逢:ライブハウスのスタッフ。茜寧が書籍の中で登場した人物とそっくりだったことから声をかけられた。
後藤樹里亜インパチェンスのメンバー。主に作曲を担当。
小楠なのか:"少女のマーチ"の著者。

 

感想

今回は小説の中で別の小説を読んでいるような、いわゆる明晰夢に近い作品です。

主な視点である茜寧は、愛されるために自分を偽りながら生きています。
そんな中で、自分のことを描いているのではないか?と錯覚してしまうような"少女のマーチ"という一冊の小説と出会います。
さらに、作中で登場する"あい"という人物とそっくりな人物と出会い、思わず声をかけてしまう。

もちろん、茜寧のように小説のような経験が現実で起こったことはありませんが、実際に起こったとしたらここまで行動できない気がします。
多分、動揺するか夢だろうなと冷めてしまうのが私だと思います。

さて、読んでみての感想ですが、私にはいまいち理解ができませんでした。
なんだか、もっと若いときとか年に深みが出てきたときとかに読んだら感じ方が全く違うんだろうなぁと思いました。

ただ、あい(逢)は終始ずっといい人でした。
私はこういう人が近くにいたら、依存して破滅しそうですね・・・。

青春小説と聞いて軽く読みましたが、なんだか難しい作品でした。
より年を重ねたときに再読してみようと思います。

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

 

全体を読み終えての感想(ただの独り言)

ちょっと読みにくい作風かな?と思いながら読み進めていましたが、『あ、これは住野よるテイストな本だわ』と勝手に感じました。

茜寧の自分を偽りながら生きているという歯がゆさには、どこか懐かしさを感じました。
私も学生時代には見栄を張って自分を着飾っていることもあったので。

あの時特有の窮屈さはとてもわかります。
ぜひあの時の不器用な私に読んでほしい一冊でした。


話は変わりますが、茜寧は小説に対してこのように話しています。

友人や家族の小説に対する態度を信じているわけでもない。彼ら彼女らは多くの場合、世間の評価と自分の感想の区別がついていないように感じた。結局、自分にとって大切な本に出会う方法など、運以外にはないのだと茜寧は実感している。
(本書より引用。)

うわー、これ耳が痛いわ。
果たして、自分が良いと思った本は、世間の評価と照らし合わせずに客観的に判断できているのだろうか。
世間の評価が良いから読んでいるだけではないか。

振り返ってみると本当に耳が痛いです。
客観的に判断できるようになりたいですが、これは難しいですね。

何を伝えたかったのか(これもただの独り言)

何を伝えたかったんでしょうね。
やはり、自分のことなんて偽っているのはザラだし、周りの人もその人の真意なんて誰にもわからない。

作中ではこんな表現がありました。

 

「お前のさ、閉じ込められているって辛さは、どうにかしてやれたらいいけど、どうしたらいいんだろうな。お前の腹とか掻っ捌いたって、中から本物が出てくるわけじゃないもんな、着ぐるみじゃあるまいし」
(本書より引用。)

この逢のセリフがタイトル名につながっているのではないかなぁと私は思いました。
いくら相手のことを思ったって、心の内を知るすべなんてないし、腹を切っても血が出るだけ。

自分のことを取り繕う。誰からも愛されたい。
そんな人間臭さが茜寧には痛いほど表れていました。

もちろん、茜寧だけでなく樹里亜や幼馴染の上村も。

人間臭さが表れた一冊でした。
人付き合いって難しいですね。


今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。