活字紀行

自分自身に満足を。つらつらと書評ブログ。Twitter@sh1roha_468

本と鍵の季節【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『本と鍵の季節』(米澤穂信/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

堀川次郎は高校二年の図書委員。利用者のほとんどいない放課後の図書室で、同じく図書委員の松倉詩門と当番を務めている。背が高く顔もいい松倉は目立つ存在で、快活でよく笑う一方、ほどよく皮肉屋ないいやつだ。そんなある日、図書委員を引退した先輩女子が訪ねてきた。亡くなった祖父が遺した開かずの金庫、その鍵の番号を探り当ててほしいというのだが…。図書室に持ち込まれる謎に、男子高校生ふたりが挑む全六編。
(「BOOK」データベースより引用。)

 

人物紹介


堀川次郎
:高校二年の図書委員。利用者のいない図書室でそつなく仕事をこなす。
松倉詩門:同じく図書委員。快活でよく笑い、ほどよく皮肉屋。

 

感想

今回は二人の図書委員によるミステリ作品です。
学生時代に図書委員を務めたことのある方なら、どこか懐かしい気持ちにもなれるかも?

全六篇で構成された短編小説となっており、片手間に読むことができます。
ミステリ好きだけでなく、活字が苦手な方でも気楽に読める一冊かと思います!

短編ですが、基本的に堀川と松倉という二人の図書委員が中心に物語が進んでいきます。
図書委員をこなす中で、様々な謎に直面する。
一体何が起こっているのか、考えながら読んでもらえるとなお楽しいと思います!

え?私ですか?
全六篇で全敗ですね・・・。
堀川も松倉も非常に頭がキレ、納得するシーンしかなかったです。

私も図書委員でしたが、こんな相談をされていたら手の打ちようがなかったですね。

堀川と松倉という二人の図書委員が織りなす謎解きを楽しんでもらえればなと思います!

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

 

全体を読み終えての感想(ただの独り言)

私自身、学生時代には図書委員を務めていたこともあるので、なんだか懐かしい気持ちになりました。
図書委員において、貸出返却の受付をするとか、お便りを作る、返却を催促する。
どれをとっても懐かしい思い出ばかりです。

昔の事なのに、何気ないきっかけで簡単に思い出せるものだなぁと感傷に浸っていたのが個人的には大きな感想ですね。

本の分類番号とか本当に懐かしかったです(もう忘れてしまいましたが)。

一緒に図書委員となった人物は松倉のような頼りになる人では決してなかったので、彼らの関係性が非常にうらやましかったです。


作中で私の好きな表現を一つ紹介します。

「つまり、だ。体内で生成された物質が過剰になったから、外部に廃棄しに行くわけだ。よって、二人で髪を切りに行く行為は、連れションに類似する。ゆえに、別におかしなことじゃない。」
(本書より引用。)

真面目な顔して何言ってんだ、って感じですがこういう何気ないやり取りが大好きなんですよね。
私も学生時代には一度だけ友人と一緒に散髪に言ったことを思い出しました。
何とも言えないこっぱずかしさがあったのを覚えています。

図書委員や友人とのやり取り。
何を取っても懐かしい思い出を取り戻させてくれるような作品でした。


何を伝えたかったのか(これもただの独り言)

堀川と松倉。
知り合ってさほど時間が経っているわけではないですが、徐々にお互いを信頼していく過程が非常に良かったです。

図書委員という何気ない関係から始まった彼らですが、傍から見ればただの親友のように見えてました。
本好きという一つの垣根を超えた信頼感?のようなものに憧れていたんですかね。

謎解きは終始予想のできないものでした。

こうなんじゃね?と思っていたことをことごとく打ち砕かれてしまいました。
今回のミステリも完敗です(ミステリ好きのくせに謎は解けません)。

一見すると、松倉の頭がキレるだけなのでは?と思いがちですが、主人公である堀川も非常に頭がキレますよね。

ワトソンとホームズのような関係性ではなく、彼らがお互いに対等である関係性も良いなぁと思いました。

堀川と松倉による話はまだ続くそうですね。
続編がすでに発売されているようですので、ご興味のある方はこちらもぜひ!
私も買って読んでみようと思います。


今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。

体育館の殺人【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『体育館の殺人』(青崎有吾/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

風ヶ丘高校の旧体育館で、放課後、放送部の少年が刺殺された。密室状態の体育館にいた唯一の人物、女子卓球部部長の犯行だと警察は決めてかかる。卓球部員・柚乃は、部長を救うために、学内一の天才と呼ばれている裏染天馬に真相の解明を頼んだ。アニメオタクの駄目人間に―。
(「BOOK」データベースより引用。)

 

人物紹介


袴田柚乃
:女子卓球部一年。部長に殺人容疑が欠けられ、真相を追うことに。
裏染天馬:二年生。学校に住んでいるアニメオタクな駄目人間。

朝島友樹:放送部部長。体育館で殺されているのを発見された。

 

感想

今回は高校の体育館を舞台としたミステリです。
体育館という何気ない日常の中で殺人が起こってしまう。

警察は事情聴取を経て犯行が行えたのは卓球部の部長である佐川奈緒であると断定。
しかし、当人をよく知る柚乃は彼女が殺人をするような人物ではないと断言。
事件の真相を追うために学校の変人でありながら秀才でもある裏染天馬の手を借りることにする。
そんな冒頭から始まります。

もしかしたら外部の人間による犯行も考えられるのでは?という考え方もできますが、作中序盤で生徒による犯行しか考えられないと裏染によって断言されます。
言ってしまえば、このミステリはクローズドサークルのようなものですね。

アリバイのない生徒の中から一体だれが犯人なのか、考えながら読んでもらえればなと思います!

終盤では著者からの挑戦とも取れる文章があります。
読む方はぜひ挑戦してみてほしいです。
(え?私ですか?もちろんわかりませんでしたけど・・・?)

裏染がアニメオタクというだけあって、一部アニメの小ネタがたくさん仕込まれています。
そういった知識がある方はきっと楽しめると思います!

私自身もすべてはわかりませんでしたが、楽しみながら謎解きを追うことができました。

ライトノベルのような軽快さがありつつも、難解なミステリとなっていますので、ぜひ挑戦してもらえればなと思います!

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

 

全体を読み終えての感想(ただの独り言)

えぇ!?登場人物多すぎじゃないですか!?
と思ったのが最初の感想となります・・・。
しかし、全体を読み終えての感想は非常に満足に一言に尽きます。

いやー、秀才ってずるいなぁ。
完全にヤ○チャ視点で裏染の推理を追っていましたよ。
柚乃と同じ感情で読む続けてしました。

とは言っても、読み終えて考え直してみれば犯人が誰か明確なんですね。
紙に書き留めていたらわかったいたかも?と思いましたが、そしたら袴田兄と同じ結末となっていた気もしますね。

読者である私たちにもありとあらゆる情報を与えてくれる。
だからこそ私たちも事件の真相にたどり着けるはずなのに、それは困難なものとなっている。

読者への挑戦とも取れる本作品を非常に楽しく読むことができました。


何を伝えたかったのか(これもただの独り言)

え?副会長が仕組んでいたとか本当ですか?
結末としては殺人が起こってしまい、最悪なものとなってしまいましたが、副会長の執念には恐ろしいものがありますね。

結局は裏染によってすべてを解決したわけですが(格好良すぎないか?)、そこまでして生徒会長になりたかったのだなと。

汚いことをしていれば報いを受けることもありますし、悪を成敗しようとしたら手に掛けられてしまうこともある。

人の執念とは良くも悪くも恐ろしいものだなと認識しました。

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。

ハサミ男【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『ハサミ男』(殊能将之/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

美少女を殺害し、研ぎあげたハサミを首に突き立てる猟奇殺人犯「ハサミ男」。三番目の犠牲者を決め、綿密に調べ上げるが、自分の手口を真似て殺された彼女の死体を発見する羽目に陥る。自分以外の人間に、何故彼女を殺す必要があるのか。「ハサミ男」は調査をはじめる。
(「BOOK」データベースより引用。)

 

人物紹介

ハサミ男:犯行の特徴から「ハサミ男」と呼ばれている殺人犯。女子高校生を2人殺害。

磯部龍彦:目黒西署刑事課巡査。警視正の命令の下、捜査を進めることに。
下川宗夫:長さんと呼ばれるがその呼び方を嫌う。
村木晴彦クラシック音楽マニア、オーディオマニアとして刑事課で有名。
上井田嘉暁:刑事課長。誰に対してもフェアな態度をとる。
進藤誠斗:若手の刑事。
松元順三郎:人から必要な情報を聞き出すことに長けている。
堀之内靖治犯罪心理分析官職。通称"マルサイ"。

 

感想

今回は犯人と事件を追う刑事たちの視点で描かれるサスペンスミステリです。

犯人は少女を殺害し、首元にハサミを突き立てることから通称"ハサミ男"と呼ばれています。
物語冒頭では、そのハサミ男による犯行と思われる3件目の事件が発生します。

刑事らはハサミ男を追うことに。
しかし、すべてを知る"ハサミ男"には今回の事件が自分による犯行ではないことから、真犯人を追うことに。

事件の真相とは。
果たして、刑事らは"ハサミ男"を捕まえることができるのか、という作品です。

読み終えての感想としては、完敗でしかありません。
ミステリ好きと自称しているくせに、いつになったら犯人に気付けるようになるんですかね。

倒叙ではなく刑事としての視点もたくさん描かれるので、どこか刑事たちに感情移入しながら読んでいました。
事件の全貌が明らかとなった際には、思わず声が出てしまいました(自宅で読んでいる時で良かったです)。

軽く触れておきますと、本作品はいわゆる叙述トリックが仕掛けられています。
ぜひ一読される際には、どういった仕掛けがあるのか用心しながら楽しんでもらえればと思います。

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

 

全体を読み終えての感想(ただの独り言)

終盤になるにつれて、なんて頼りになる刑事たちなんだ!これで今回は解決してハッピーエンドだな!!と思っていましたが、見事に打ち砕かれてしまいました。

叙述トリックも見抜けませんでしたし、事件の真相もさっぱりだったので完敗です。

読了後はどこか後味が悪いのが本作品の一つの魅力かと思います。
事件を解決したと思っている刑事たち。方や、犯行を予兆するような演出。

全てを知っている読者だからこそ味わえる余韻ですね。
今後どうなっていくんでしょうかね。
バッドエンドを匂わせるような描写には思わずゾッとしました。


何を伝えたかったのか(これもただの独り言)

"ハサミ男"ってどうしてあそこまで自殺に固執していたんですかね。
医者として存在するぼくが、殺人犯としての私を殺すために自殺へ執着していたとかですかね。

なんでだろうなーとぼんやり考えていましたが、私にはわかりませんでした。
有名なミステリですので、何らかのタイミングで解説に触れてみようと思います。

作中で出てきた私の好きな表現を紹介します。

「おまえに求められているのは、俺と同じ直感を身につけることじゃない。おまえ自身の物の見方を貫くことだよ」
(本書より引用。)

この表現があったからこそ磯部は真犯人の下に行くことができたのでは?と思うと同時に、"ハサミ男"事件の解決には至らなかったということの不甲斐なさを感じます。

叙述トリックとして楽しめるだけでなく、暗い余韻を味わえる良い作品だなと思いました。
20年近く前に出版されたはずですが、今読んでも楽しめますね。

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。

俺ではない炎上【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『俺ではない炎上』(浅倉秋成/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

ある日突然、「女子大生殺害犯」とされた男。既に実名・写真付きでネットに素性が曝され、大炎上しているらしい。まったくの事実無根だが、誰一人として信じてくれない。会社も、友人も、家族でさえも。ほんの数時間にして日本中の人間が敵になってしまった。必死の逃亡を続けながら、男は事件の真相を探る。
(本書より引用。)

 

人物紹介

住吉初羽馬:"PAS"という社会派サークルに所属する大学生。
山縣泰介:大帝ハウスの営業部長。SNSを通じて殺人の冤罪をかけられる。
山縣夏美:山縣泰介の娘。SNSを通じて成人男性を会おうとしたことがある。
堀健比古:万葉町第二公園で発見された死体の犯人を追う警察。

 

感想

phone cellphone

今回はSNSを題材とした社会派ミステリです。
タイトルにもあるように、身に覚えのない冤罪から物語が始まります。
内容としては殺人事件です。

実際にSNSの投稿を思わせるような文章も多々登場します。
著名人が炎上した際に、こういう投稿もあるよなぁとリアリティがあります。

事実を確認することなくただ単に非難する者、俯瞰して中立的なコメントを投稿する者、容疑者を懲らしめてやろうとする者。
実際に、作中のような殺人事件を思わせるような投稿がされたらネット上はこのような大混乱となってもおかしくないなと思いました。

冤罪をかけられた山縣泰介。
彼の運命はどうなってしまうのでしょうか。
そして殺人事件の犯人とは何者なのでしょうか。

ミステリとしても楽しめる作品だと思います。
SNSとの向き合い方を見つめ直すこともできるかと思います。
私は改めてSNSの便利さと危険さを実感しました。

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

 

全体を読み終えての感想(ただの独り言)

SNSの炎上。本当に怖いですね。
私自身は著名人ではないため、炎上と言うとどこか遠い世界で起こっていることのように感じていましたが、突然身近なものに感じて恐怖を感じました。

山縣泰介はSNSを利用していないにもかかわらず、こういった冤罪に巻き込まれてしまいました。
小説だから誇張表現なところもあると思いますが、ネット社会の怖さをひしひしと感じました。

この作品は、夏美視点の話が現在ではなく過去を描いていたという叙述トリックであったという認識で合ってますかね?
後半に行くにつれて違和感が生じてきて、全貌が明らかとなった瞬間は爽快でした。
犯人像は全く予想できませんでした

さて、全体を読み終えての感想ですが、私には少々物足りなかったです。
犯人の動機や初羽馬視点の後日談がもう少し知りたかったです。
犯人は殺人事件を実行してしまうまでの嫌悪感がそこまであったのでしょうか。

私としては、事件後の話がもっと読んでみたかったです。
山縣泰介の奮闘ぶりには非常に満足でした。
彼がこの事件を経て、人相に変化があってよかったと思います。


何を伝えたかったのか(これもただの独り言)

浅倉秋成さんは社会派ミステリを多く手掛ける印象がありますが、何かと考えさせる余韻がありますよね。
今回であれば、SNSや人との付き合い方を考えさせられました。

ネットを通じた炎上ということもあってSNSに焦点が当たりがちだと思いますが、人との付き合い方にも思うこともありました。
山縣泰介を例にすれば、家族は仕事の対人関係には何ら問題がないと思っていたが、改めて人に聞いてみると問題が出てくるわ出てくるわ。

住吉初羽馬を例にすれば、あくまでも自己満足でサークル活動を行っていた。
サクラからこう言われるシーンがありました。

すべての議題の前提が、『どうして自分たちは悪くないか』だったからですよ。
(本書より引用。)

社会を批判するようなサークル内容でしたが、読んでいる私までハッとさせられました。

再三話が戻りますが、作中で出てくるような炎上事件に対して一方的に批判意見を投稿する人にも通ずるものがありました。
当事者ではないから、決して事件の真相がわかるわけではないのに、どうして一方的に批判できるのでしょうか

どこか、SNSの便利さよりも怖さを感じる一冊でした。
夏美が幼少期にネットの人と会おうとして事件に遭いかけたことも怖いですが、自分には関係ないからこそ何を言ってもいいという昨今の風潮がより怖くなりました。

浅倉秋成さんの作品では、こちらが一番好きです。
個人的に、就職活動に対して思うことがたくさんあった時期に読んだこともあり、非常に共感したのを覚えています。

sh1roha468.hatenablog.jp

ご興味ありましたらこちらも一読ください!

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。

傲慢と善良【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『傲慢と善良』(辻村深月/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

婚約者が忽然と姿を消した。その居場所を探すため、西澤架は、彼女の「過去」と向き合うことになる―。作家生活15周年&朝日新聞出版10周年記念作品。圧倒的な“恋愛”小説。
(「BOOK」データベースより引用。)

 

人物紹介


西澤架:輸入業の代理店を経営。突如、行方の分からなくなった婚約者を追うことに。
坂庭真実:架の婚約者。先日、英会話教室の事務を退職した。

感想

今回は一組の恋人を描いた恋愛小説です。
恋愛とは言っても、結婚や婚活といった要素が色濃く描かれています。

私としては少々耳が痛いなぁと思う部分も・・・。
おおまかな流れとしては、架の婚約者である真実の行方が分からなくなってしまい、真実の行方を追う所から始まります。

真実にはストーカーがいると相談を受けていた架。
きっとそのストーカーに連れていかれたのではないか?と話が展開していきます。

彼女は無事なのか。
その結末は、ぜひ読んで確かめてほしいと思います。

読み終えての感想は、耳が痛いだけでなく色々と考えさせられるものでした。
結婚や婚活だけでなく、生きることの難しさを痛感させられました。

ぜひ皆さんも、"ピンとこない"という感覚が何なのか考えてみてほしいです。
そして、傲慢と善良とは何を意味するのか、自分自身はどうなのか。
そういった内面に目を向ける良いきっかけになる一冊だと思いました!

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

 

全体を読み終えての感想(ただの独り言)

なんだか、結婚に対して少し背中を押してもらえた気がします。
私のような未婚の人にも既婚の方にも何かしら影響のある一冊だったのではないでしょうか。

なんといっても心理描写が圧巻ですね。
前半は架視点、後半では真実視点で話が展開されていますが、お互いここまでのことを考えているとは。

実際に人間ってこれと同じくらい?に多くのことを考えながら生活してるとは思いますが、他人の考えなんて理解できなくない?と思ったのが正直なところでした。

きっと無意識のうちに、相手は自分のことを理解してくれているのであろう、と考える。
これがまさに”傲慢”なことなんですね。

作中の結婚相談所ではこのような表現がされていました。

皆さん、謙虚だし、自己評価が低い一方で、自己愛の方はとても強いんです。傷つきたくない、変わりたくない。―高望みするわけじゃなくて、ただ、ささやかな幸せが掴みたいだけなのに、なぜ、と。
(本書より引用。)

なんだか、共感してはいけないような後ろめたさがあるものの、意識せずとも思っているんでしょうね。

結婚相談所で聞いた話でしたが、日常生活にも当てはまる思いあたりがいくつもあって、私って嫌な人間だなぁってちょっと思いました。

人付き合いってわからないことばかりだし、他人に流されて人生を左右されることなんていくらでも起こりうる。
本当に、生きていくことって大変だな。


何を伝えたかったのか(これもただの独り言)

傲慢と善良。
架視点から見た真実には少々理解ができない点が多々ありましたが、彼女も苦しんでもがいていたんですね。

架から見た善良さ。真実自身の中にある傲慢さ。
そういった対比があるからこそ、秀逸なタイトル名だなと思わされました。

作中でも出てきた、似たタイトルである"傲慢と偏見"とは違った良さがありました。

思わず、一度本を閉じてここ最近の生活を振り返るきっかけとなってのは次の表現です。

 

しかし、この世の中に、「自分の意思」がある人間が果たしてどれだけいるだろう。
(本書より引用。)

なんとなくみんながそうしているから。親に言われたから。
周りで結婚している人が多くなってきたから。

そう知らず知らずのうちに誰かの意思を自分の意思だと勘違いしているんでしょうね。
実際に、私が本書を読もうと思ったきっかけも偶然Amazonに出てきてレビューが高かったから、以前読んだ辻村深月さんの小説が好きだったからでした。
はたして、これは私の意思だと言えるのでしょうか。

何気ない日常ですが、自分の意思をもって行動できることがいかに難しいのか。
誰かの意思を自分の意思だと誤認しながら、密かに傲慢さを携えながら私たちは生きていくしかないんでしょうね。

架と真実が最終的にはハッピーエンドで良かったです。
彼らの結末にも、どこか勇気づけられたものがあります。

 

うまくいくのは、自分がほしいものがちゃんとわかっている人です。自分の生活を今後どうしていきたいかが見えている人。ビジョンのある人。
(本書より引用。)


今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。

君の話【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『君の話』(三秋縋/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

二十歳の夏、僕は一度も出会ったことのない女の子と再会した。架空の青春時代、架空の夏、架空の幼馴染。夏凪灯花は記憶改変技術によって僕の脳に植えつけられた“義憶”の中だけの存在であり、実在しない人物のはずだった。「君は、色んなことを忘れてるんだよ」と彼女は寂しげに笑う。「でもね、それは多分、忘れる必要があったからなの」これは恋の話だ。その恋は、出会う前から続いていて、始まる前に終わっていた。
(本書より引用。)

 

人物紹介


天谷千尋
:大学生。<レーテ>と呼ばれる記憶を消す義憶を買う。
夏凪灯花千尋の記憶の中にのみ存在する幼馴染。

感想

今回は義憶と呼ばれる、自分が欲する仮想の記憶を買うことができる世界の中で、二人の男女を描いた青春小説です。

あなたにも、こういう記憶があったのなら、この記憶が無かったら、と思うことはありませんか?
作中では、理想の妻、理想の子供、理想の青春時代といった義憶を手にする描写があります。

テーマとしては恋愛と記憶でしょうかね。(そのままですが。)
こういった理想の記憶を焦がれる要因として、このような表現がされていました。

最初から手に入らないとわかっていたものは、簡単に諦めがつく。しかし、あと一歩で手に入れられそうだったものは、いつまでも未練が残る。
(本書より引用。)

まさにこれですよね。
あの時に勉強をもう少し頑張っていたら、あの人とあんな別れ方をしなければ、あの頃にもっと練習をしていれば。
そういった思い出がある方にはとても刺さる一冊ではないでしょうか。

お互いに虚構の存在だからこそ惹かれあう。
実際には無いだろうとは思いつつも、どこかにこういう相手がいるのではないかと言う気持ちになります。

お察しの通り、ファンタジー要素が強めとなっておりますのでそういうものが受け入れられる方にはおすすめです。
若い男女が描く恋愛模様を楽しんでもらえればと思います。

きっと、どこか懐かしい気持ちになれると思います!

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

 

全体を読み終えての感想(ただの独り言)

結果として、千尋と灯花は一緒にいられなかったわけですが、二人が共に過ごした日々はなんと美しいのでしょうか。
偽りの関係から始まったものの、お互いを認めて本当に良かったと思います。

序盤で、灯花が作った料理を躊躇なく捨てる千尋は少々嫌でしたが・・・。
あと、どんだけ千尋は酒とカップラーメンだけの日々を過ごしているんだ、と結構引きましたよ。

だからこそ、灯花との出会いを経て、酒を断ち自炊をするようになる様には少々感動しました。
酒に関してはこんなことも言ってましたね。

気持ちよく酔っ払っている僕と二日酔いに悩まされている僕は別人であり、一方の学習結果はもう一方には反映されない。一方の僕は酒の楽しさだけを学び、もう一方の僕は酒の苦しさだけを学ぶ。
(本書より引用。)

いやー、これわかるわ。
なんで二日酔いを経験して二度と飲まねえ!となってもきっかけがあれば飲んでしまうんでしょうかね。
お酒もほどほどにしようと思いました・・・。


何を伝えたかったのか(これもただの独り言)

義憶という、現実にはないものが取り上げられていた本作品ですが、いつの日かこういったことも実現されるのでしょうか。
実現されたら色々と倫理的に問題がありそうですが、こういう理想の記憶にはちょっと憧れますよね。

言い方を変えてしまえば、現状では過去の記憶を変えることはできないのでこれからの人生をどうしていくのか、それが大事であるということなんですかね。

過去にすがったって何も解決しませんし、戻れるわけでもないですもんね。
ファンタジーな本作品から現実に戻ってくると、やるせない気持ちにもなりますが、これからをどうしたいのか考えていきます。

もう何を言っているのかわからないので今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。

みかづき【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『みかづき』(森絵都/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

昭和36年。小学校用務員の大島吾郎は、勉強を教えていた児童の母親、赤坂千明に誘われ、ともに学習塾を立ち上げる。女手ひとつで娘を育てる千明と結婚し、家族になった吾郎。ベビーブームと経済成長を背景に、塾も順調に成長してゆくが、予期せぬ波瀾がふたりを襲い―。山あり谷あり涙あり。昭和~平成の塾業界を舞台に、三世代にわたって奮闘を続ける家族の感動巨編!
(本書より引用。)

 

人物紹介

大島吾郎:小学校の用務員を経て、学習塾教師・経営者に。
大島千明:学習塾教師、経営者。
  蕗子:大島家の長女。吾郎との血のつながりはない。
   :大島家の次女。
  菜々美:大島家の三女。
赤坂頼子:千明の母。大島三姉妹の祖母。
(本書より引用。)

感想

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今回は昭和から平成に至るまで、三世代をめぐって描かれる家族作品です。
舞台としては千葉、テーマとしては塾といった子供の勉強となっています。
津田沼や八千代といった地名が出てくるので、近辺に住んでいる方には馴染みやすい内容かと思います!

ぜひとも、教育にかかわるお仕事をされている方には一読いただきたい一冊だと思います。
主人公らは学校ではなく塾にかかわる人たちでしたが、その視点ならではの視点が伝わってきました。

私も幼い頃から塾に通わせてもらっていた立場でしたが、通うのが楽しくて仕方なかったことは一度もありませんね。(私の親、ごめんなさい。)
一時は、なんで勉強ってしなくてはならないんだろう?と思ったこともありました。

そういった時に、作中で登場した吾郎のような教師に出会えていたら、また違ったんだろうなぁと読んでいて思いました。

大人になってから、勉強が楽しくなった口ですけどね。
もっと幼い頃にこの事実に気付けていたら、もっと選択肢も多かったのだろうなんて思いました。

昨今は教育だけでなく教師不足も嘆かれていますが、ひとえに教育といっても文句を言うのは簡単ですもんね。
実際に吾郎やほかの登場人物のように何らかの行動をできる人は本当に立派だなと思いました。

内容としては昭和から徐々に時代が進んでいくという作風でしたが、節目節目にはいったい何があったのだろう?と想像し、後に内容が明らかとなっていくという展開がとても私好みでした。
今回もボリュームもある一冊でしたが、教育に携わる方は一読くださればと思います。

 

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

 

全体を読み終えての感想(ただの独り言)

一番思ったことは、教育なんていつの時代も変わらないんだなって思いました。
昭和から平成に至るまで教育というものが様々な形で書かれていましたが、いつだって苦労している人でもどうしようもないんことはどうしようもないんだなって思いました。

今回は家族作品でしたが、中盤あたりで頼子が逝去したあたりで、おいおいこの作品はこれからどうなっていくんだ、と不安になりながら読んでいました。

頼子という名前だけあってか、作中では何かと頼りになっていた頼子がいなくなったことで、すべてがばらばらとなっていきました。
千明と吾郎だけでなく、蕗子や菜々美までもが。
終盤では綺麗に収まっていて本当に良かったです。

あと、年齢が近いこともあって?最後の一郎視点が一番私には刺さりました。
一郎と同じくゆとり世代ではありませんでしたが、実際に片親家庭で勉強に苦しんでいる同級生もいたのだろうなと思ってしまいました。

その事実に気付き、学習を無償提供しようと奮闘する様は本当に格好良かったです。
謝辞のところでNPO法人キッズドア様の名前が出てきましたが、こういった活動をされている団体がいることさえ私は知りませんでした。
簡単に寄付することができるそうなのでしてみようと思います。

教育の現場において、ひとえにこいつは勉強ができない、やる気がないと一蹴してしまうのは違うんだなと。
だからといって、一教師がすべての面倒を見られるはずがない。
教師とは数が減りゆく中で、家族からの文句や生徒間のトラブルも対処しなければならなく、本当に大変な仕事なんだと改めて思いました。

国がなんとかしてくれねぇかなぁ、とぼんやり思っていたこともありましたが、いつの時代も問題があって当然だったんだなと思わされました。

「自分の頭でものを考える力を育む」教育
(本書より引用。)

千明はこういった思想の下、教育に携わっていたそうですが、言葉にすると実にシンプルですが、実際に実現しようと思ったら非常に難しいですよね。

私自身もこういったことができる学生であったとはなかなか思えませんし、ではどういった教育を施したらいいのかと考えると、これまた難しいものですね。

教育の在り方を教えてもらえたような気がします。
私自身、決して勉強が得意な生徒ではありませんでしたが、勉強が少しでも好きになってくれる人が多くなってくれることを願っています。
何らかの形で寄与できないかなと、ぼんやり考えてみます。

何を伝えたかったのか(これもただの独り言)

なんといっても教育とはどうあるべきなのか、ということに尽きるのでしょうね。
"みかづき"というタイトル名はなんと秀逸なことでしょうか。

作中最後に出てきた吾郎のスピーチが全てなんでしょうね。

 

どんな時代のどんな書き手も、当世の教育事情を一様に悲観しているということだ。最近の教育はなっていない、(中略)常に何かが欠けている三日月。教育も自分と同様、そのようなものであるのかもしれない。欠けている自覚があればこそ、人は満ちよう、満ちようと研鑽を積むかもしれない、と
(本書より引用。)

これ本当に良い表現だなと思いました。
自分が欠けているという自覚があるからこそ勉学に励む。
かつての偉人達も決して才能があった人ばかりではなく、血のにじむような努力によって偉業を成しえた人もいる。

自分ではまだ足りない、と貪欲に取り組むことの大切さを教えてもらえた気がします。
大人になった今でも、勉強って楽しい事なんだと気づけて良かったです。

常に自分の足りない部分を補えるように精進したいと思いました。
本当に読んで良かった一冊です。勉強する励みにもなりました。

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。