活字紀行

自分自身に満足を。つらつらと書評ブログ。Twitter@sh1roha_468

死刑にいたる病【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『死刑にいたる病』(櫛木理宇/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

あらすじ

 

鬱屈した日々を送る大学生、筧井雅也に届いた一通の手紙。それは稀代の連続殺人鬼・榛村大和からのものだった。「罪は認めるが、最後の一件だけは冤罪だ。それを証明してくれないか?」パン屋の元店主にして自分のよき理解者だった大和に頼まれ、事件を再調査する雅也。その人生に潜む負の連鎖を知るうち、雅也はなぜか大和に魅せられていく。一つ一つの選択が明らかにする残酷な真実とは。
(BOOKデータベースより引用。)

 

人物紹介

 

筧井雅也:俗にいう”Fラン大学”で憂鬱な日々を過ごす大学生。
榛村大和:一審で死刑を宣告され、現在控訴中。戦後最大級のシリアルキラー
加納灯里:筧井と同じ大学に在籍。義務教育時代、三年間同じクラスで過ごした仲。

感想

business people

今回は一人の大学生とシリアルキラーに焦点を当てた一冊です。

主人公である雅也は鬱屈とした大学生活を送っていたものの、シリアルキラーである榛村から一通の手紙が届く。
彼とは幼い頃に馴染みがあった雅也だが、面会室では最後の容疑は冤罪だからそれを証明して欲しいと頼まれる。
当時の榛村と関わりのあった人物への聞き取り調査を開始する。

シリアルキラーというだけあって、榛村は明確な悪人です。
殺人の獲物としているのはハイティーンの少年少女。
事件の描写も出てきますので、そういったものが苦手な方はご注意ください。

聞き取り調査の中では多数の人が登場し、誰が誰だかわからなくなるかもしれませんが、ほとんどの人は一度きりの登場となりますのでご安心ください。
セオリー通り、名前が説明あった人だけ覚えておけば問題ないです!

言いたいことはありますが、終盤に進むにつれてゾッとしました。
私は本書のテーマの一つに"洗脳"が挙げられると思いました。
最初は何気なく読み進めていたのに、ふとした瞬間から違和感が見え隠れしている、そんな恐ろしさがこの一冊には表れていたと思います。

あくまでもフィクションだから、と考えれば軽い気持ちで済ませられるのかもしれませんが、実際にこう言ったシリアルキラーによる大量殺人は起こっていますからね。

現在、映画も上映中なようですね。
軽く調べてみましたが、小説とは少々内容が違うとか?
ぜひ、何かの機会に見に行きたいと思いました。
描写がどの程度まで描かれているのか、恐怖心もありますが・・・。

サスペンスが好きな方にはオススメしたい一冊です。
ただ、ミステリーとして楽しみにする一冊ではないかと思いますね。

 

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!


物語の結末

雅也が徐々に榛村の影響を受けていく過程には思わずゾッとしました。
中盤では、榛村が実の父親なのではないか、という展開になったので、そういう素質があったという結末になるのかと思っていましたが考えが浅かったですね。

そして雅也だけでなく加納までもが榛村の影響を受けていたとは。
榛村の執着心、マインドコントロールには恐怖しかありませんでした。

赤の他人からすればどうしてそんな風に洗脳されてしまうんだ?と思ってしまいますが、当人にしかわからないことがあるんでしょうね。

独特な相槌や会話、視線、助言。
そういったカリスマ性が榛村にはあったんでしょうね。
ハイティーンへの驚異的な執着心にも背筋が凍る思いでしたが。

家庭環境で人格は育成されてしまうとのことですが、被害者やその関係者となれば擁護なんてできませんよね。

シリアルキラーの小説ってあまり読んだことがありませんでしたが、恐ろしいながらも読む手が止まらない一冊でした。

最後に私の好きな一節を紹介します。

対等にものを言ってくれる人は、人生において重要だよ。人間ってのはまわりの人に突っ込まれたり、笑われたりしながらふるまいを矯正していくのが普通なんだから。友達ってのは、自分を映す鏡だ。
(本書より引用。)

自分の置かれた環境に満足なら大切にしていきたいですね。

北九州監禁事件

本書は別件の史実が参考とされているようですが(アメリカのテッド・バンディ?)、私は北九州監禁事件を連想してしまいました。

北九州監禁殺人事件 - Wikipedia

この事件、ご存じの方も多いのではないでしょうか。
マインドコントロールがされており、自らの手を汚すことなく殺人が行われていた。

事件の詳細を読むだけではなんでこんなにも簡単に他人を意のままに操ることができるんだと思わずにはいられません。

本書でも、榛村によってとある兄弟が引き裂かれることになります。
ここで思わず私はこの北九州監禁事件を連想してしまいました。
今一度この事件を読み返してみましたが、なんて恐ろしい事件なんでしょうか。

こういった事件は忘れずに、犠牲となった方々の安らかな眠りを願わずにはいられません。
今よりも平和な世の中になりますように。

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。

この恋は世界で一番美しい雨【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『この恋は世界でいちばん美しい雨』(宇山佳佑/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

あらすじ

 

駆け出しの建築家・誠と、カフェで働く日菜。雨がきっかけで恋に落ちた二人は、鎌倉の海辺の街で愛にあふれた同棲生活を送っていた。しかし、ある雨の日、バイク事故で瀕死の重傷を負ってしまう。目を覚ました彼らの前に、“案内人”と名乗る喪服姿の男女が現れる。そして誠と日菜は、二人合わせて二十年の余命を授かり、生き返ることになるのだが、それは、互いの命を奪い合うという、あまりにも苛酷で切ない日々のはじまりだった―。
(BOOKデータベースより引用)

 

人物紹介

 

雨宮誠:建築家の卵。日菜からは"キョロちゃん"と呼ばれる。
相澤日菜:カフェ"レインドロップス"で働く。キョロちゃんの恋人。

真壁哲平:業界で最も注目されている建築家。
明智:案内人の一人。雨宮のそばに付くことになる。
能登:同じく案内人の一人。日菜のそばにつくことになる。

 

感想

今回は二人の男女が描く儚くも美しい恋愛小説です。
恋愛小説の中でも超王道。真ん中を突いてくるような作品です。

誠と日菜という二人の男女はバイク事故で命を落としてしまいます。
ただ"案内人"と名乗る二人から"ライフシェアリング"を提案されることに。
"ライフシェアリング"とは二人で20年の寿命を共有、奪い合いながら生きていくこと。
そして幸せを感じやすい日菜、悲観的な誠。
この段階で何となく破滅して良くない展開になるんだろうなぁと考えずにはいられませんでした。

結末としてはそこまで後味の悪い作品ではありませんでした。
個人的には、以前より雨が好きになる作品でした。
梅雨シーズンで気が滅入っていた私にはとても良かった作品でした。

仲睦まじい恋人模様には幸せを分けてもらった気もします。
こういった何気ないカフェで過ごす時間って本当に至福のひと時ですよね。

まさにタイトル名を表した一冊でした。

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

 

物語の結末

悪く言えばご都合主義と捉えられても仕方ないことだと思いますが、救いのあった結末で良かったです。

誠のヒステリックさには少々思う所がありましたが、自分だって同じ立場になったらこうなるのかも?と思って読み進めていました。

いかんせん、日菜が良い子過ぎて彼女が少しでも報われてほしいと願うばかりでした。
そう考えると最後に誠が奇跡を放棄したのは、個人的に満足な結末でした。
誠には申し訳ないですけどね?

日菜が余生はこんな家で過ごしたんだ、と語るシーンには驚きました。
誠が生きていた証は無くなるのでは?と思いましたが、明智さんがそのデータを死守しているとは。

誠は本当に良い人に恵まれましたね。
少々、ヒステリックさに嫌気がさすことがありましたが、読んで良かった作品でした。

日菜、そして腐れ縁である研ちゃんが幸せそうで安心しました。
日菜を失ったあとの研ちゃんを思うと胸が痛いものがありますが。
子供二人と強く生きてほしいですね。

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。

六人の噓つきな大学生【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『六人の嘘つきな大学生』(浅倉秋成/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

あらすじ

 

成長著しいIT企業「スピラリンクス」の最終選考。最終に残った六人が内定に相応しい者を議論する中、六通の封筒が発見される。そこには六人それぞれの「罪」が告発されていた。犯人は誰か、究極の心理戦スタート。
(本書より引用。)

 

人物紹介

 

波多野祥吾立教大学で経済学を学ぶ。散歩サークルに所属。
久賀蒼汰:慶応大学総合政策学部在籍。爽やかな印象でチームを先導する存在。
袴田亮明治大学在籍。高校時代は野球部でキャプテンを務め、気合と根性は負けないと自負。
矢代つばさお茶の水女子大在籍。容姿端麗でファミレスでアルバイトをしている。
蔦衣織早稲田大学社会学を学ぶ。バイト先はプロント。
森久保公彦一橋大学在籍。賢そうな雰囲気で寡黙な性格。

 

感想

computer keyboard

今回は就活を行う大学生6人に焦点を当てた一冊です。

読み始めて一番最初に思ったことは、これ新卒採用前に読まなくて良かったなぁと心の底から思いました。
読み終わった後に就職活動とか考えたくないですもん・・・。

就活のシーズンに読まなくて良かったぁ!と思っていましたが、共感する部分や考えさせられる表現、先の読めない展開など非常に満足な一冊でした。
個人的に、ここ最近読んだ小説の中で一番読んで良かった一冊だと思います。

長期間のグループディスカッションを行い、自身たちで入社する人物を選ぶという、現実ではありえない選考が行われています。
所詮はフィクションなのでそれも含めて楽しんでもらえればなと思います。

一番唸った表現を紹介します。

あんなに無意味な時間ってなかったと思うよ―就活。企業に気に入られるためにみんなして嘘ついて、一方の企業だって自分たちにとって都合のいいことしか伝えようとしない。
(本書より引用。)


理解はしていますが、こうはっきりと言われると心に来るものがありますね・・・。
タイトルにもありますように、誰もが嘘をつきながら就職活動に取り組んでいる。
就職活動の時期しか感じることのできない苦悩が表現されていて、読みごたえが非常にありました。

考えさせられる内容でありながらもミステリーとしても楽しめて、読了後はどこかすっきりとした気持ちになれる一冊でした。

ぜひとも読んでもらいたい一冊です。

 

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

 

物語の結末

犯人は誰なんだ、と展開されていきましたが、謎が解決したなぁと油断するのも束の間で次から次へと新たな謎が発生し、本当に読む手が止まらなかったです。

ははーん、これは森久保が犯人で終わりだな?と思っていた自分の浅はかさが恥ずかしいです(笑)

過去の描写が終わった段階で蔦が犯人だと思い、ここからどういう展開になるんだ?と思いました。
そしたら蔦視点の物語が始まり、蔦が犯人ではないことが判明。
何なら、蔦は波多野が犯人だと思っていた。

もう謎は迷宮入りですよ。
最近、私がハマっている某漫画のト○○チゲームみたいでワクワクが止まりませんでした。

これ、最初から謎がわかった人とかいるんですかね?
そして犯人の犯行目的は、真っ向から非難できるものではありませんでした。

本当にあの就職活動というのは、どこか精神が不安定な気がしてたな、と思い出されました。

誰しもが嘘をつき、そして自分の一面を隠している。
悪い面が見えたからと言って簡単に非難するのは間違っている。
読了後にはどこか優しくなれる一冊でした。

就職活動に関して

なんだか、自分の就職活動が懐かしく感じるような一冊でした。
前半ではグループディスカッションが1つのテーマとなっていましたが、あれは苦労ばかりだったなぁと当時の記憶が色濃く思い出されました。

さすがに本書のような長期間でのグループディスカッションはありませんでしたが、グループディスカッション後にカフェに行くみたいなイベントはあったんですよね。

当時も疑問でしたが、本当に不思議な関係性ですよね。
今となっては誰とも連絡を取ることはできませんが、鮮明な思い出として残っています。

ただ、あれ必要だったの?という話になると甚だ疑問ですが・・・(笑)
あの時期しかできない貴重な経験として刻んでおこうかと思います。

本書では以下のような表現もされていました。

将来的に何をやらせるのかは決まっていないけど、何となく向こう数十年にわたって活躍してくれそうな、なんとなく、いい人っぽい雰囲気の人を選ぶ。
(本書より引用。)

やっぱり最後は圧倒的に『運』です。学生が不完全な人間であるように、人事だって不完全な人間なのですから、やっぱりこの世界に絶対はないわけです。
(本書より引用。)


じゃあどうすればいいんだ、と学生も企業も頭を抱えてしまいますよね。
明確な答えがないからこそ、現状維持に頼ることしかできない。
近年だと学生のSNSを調査して選考に利用しているとの話もありますが、どれほどの効果があるのでしょうか。

本作品でもありました、人間には善い面と悪い面がある可能性がある。
これは、たとえどれだけ親しい間柄だったとしても人間性はわからないのではないか。

結局は他人であって理解できないこともある。
そんな中で、多数の学生から適切な人材を選ぶ就職活動。
え?無理すぎませんかね??

中途採用だったら実績や技術力で測ることはできますが、新卒採用では一概にそういったことはできない場合が多い。
日本の就職活動は間違っている!と非難するのは簡単ですが、何が正解かなんてわかりませんよね。
これがわかっていたら、いわゆる"バイトテロ"も起こらないですもんね。

当時の就職活動を活動を振り返るとともに、今後控えた学生を応援したいです。

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。

殺戮にいたる病【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『殺戮にいたる病』(我孫子武丸/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

あらすじ

 

永遠の愛をつかみたいと男は願った―。東京の繁華街で次々と猟奇的殺人を重ねるサイコ・キラーが出現した。犯人の名前は、蒲生稔!くり返される凌辱の果ての惨殺。冒頭から身も凍るラストシーンまで恐るべき殺人者の行動と魂の軌跡をたどり、とらえようのない時代の悪夢と闇を鮮烈無比に抉る衝撃のホラー。
(本書より引用。)

 

人物紹介

 

樋口武雄:元警視庁捜査一課の警部。妻の美絵を病気で亡くした。
島木敏子:猟奇事件に巻き込まれた被害者。樋口とは関わりのあった看護師。
島木かおる:敏子の妹。樋口と協力して犯人逮捕を決意する。

蒲生稔:猟奇事件の犯人。周囲には文学部の院生と偽っていた。
蒲生雅子:最近、息子の様子から猟奇事件の犯人ではないかと疑っている。
江藤佐智子:猟奇事件の最初の被害者。

 

感想

今回は3人の視点で描かれるサスペンス作品です。

最初に言いますと、描写が生々しく思わず目をそむけたくなるようなグロテスクな表現が多々ありますので、そういったものが苦手な方はご注意ください。

3人の視点で描かれると言いましたが、一人は犯人視点で描かれます。
つまりこれは倒叙ミステリーと言われる作品になるのでしょうか。

よくある倒叙だなー、結構グロいけど・・・と思いながら読んでいましたが、最後にはちょっとした予想しにくい展開があります。
私は所々で違和感を感じることもありましたが、最後の仕掛けには気付きませんでした。

他の方の書評を見ましたが、気付いていた方もいるんですね。
私はまだまだだなぁと思わされてしまいました。

 

全てがわかった後に読み直したいな?と思いましたが、あのグロテスクな描写に再度触れるには少々気が引けましたね・・・(笑)

グロテスクな描写に耐性があって倒叙ミステリーが好きな方には是非お勧めしたい一冊でした。

後味は最悪です(笑)

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

犯人の特定

もう少し早い段階でわからなかったんですかね?
最初の被害者である江藤佐智子は殺される際に抵抗し、犯人の手に傷を付けて腕からは血が出ていたとのことですが、爪の間から犯人のDNAが取れそうな気も??と思っていました。

気になって調べてみたんですけど、日本のDNAデータベースの登録件数は約130万件(2019年時点)で、およそ100人に1人が登録されているようです。
思っていたよりも少ないな?
映画とかドラマで個人が特定できるケースの方が珍しいんだなと初めて知りました。

現実は小説よりも奇なりとは言いますが、なかなか難しい事ばかりなんだなと思いました。

倒叙ミステリー

本作品は倒叙ミステリーという、いわゆる犯人視点から描かれるミステリーとなっています。

そう思って読み進めていましたが、まさか叙述トリックも含まれているとは思いもしませんでした。

でも、少々納得できない頃がありました。
これは私の理解力不足なんですかね。

稔は"さん付け"であることに違和感を感じていましたが、そういうことだったとは。
では、雅子が終始言っていた息子ってどっちなんですか?

父親と息子が逆に描写されていた、ということで雅子が言う息子とは稔(夫)の事だったんですかね。
だとしたら夫の性処理を監視していたってことなんですか?

なんかもう訳が分からなくなってしまいました(笑)
本当は再読してしっかり理解したいところですが、読む気はおきません・・・。

父親は息子に無関心だ、との描写がありましたがこれはどっちなんだ。
これは夫(稔)なんですか?食い違いがある気がしてしょうがないです。
理解力足らずで申し訳ないです。

息子(信一)が作中では父親として描かれていたんですか?彼が息子としてですか?
おそらく、息子として描かれていたのか父親として描かれていたのか私にはわかりませんでしたが、彼だけなんだか報われないなぁと思ってしまいました。

ただ単に私の理解力不足だと思いますが、忘れたころに再読したいと思いました。

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。

嘘【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『嘘』(北國浩二/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

あらすじ

 

認知症の父と、その父を憎みながらも介護をする娘。その家に、ひとりの少年が暮らし始めた…。気鋭のミステリ作家による「感動&驚愕」のストーリー。
(BOOKデータベースより引用。)

 

人物紹介

 

千紗子:絵本作家。久江からの連絡を受けて、父の面倒を見ることになる。
孝蔵:千紗子の父。認知症を患っている。現在は仏像彫刻にいそしむ。
拓未:事故を経て千紗子と出会った少年。虐待されており、千紗子と暮らすことになる。

亀田
:医師で孝蔵の幼馴染。
久江:福祉課の職員。千紗子の幼馴染。

 

感想

今回は訳ありな家族を描いた一冊です。

千紗子は憎んでいた認知症の父親と暮らし始めます。
その矢先、友人の久江が運転する車で人を轢いてしまいます。

久江の頼みから交通事故を隠蔽することになります。
久江は自身の手を染めることなく、被害者をどうにかして元の環境に戻そうとします。

ただ、千紗子は虐待されていることが明確なその少年を保護し、拓未と名付けて共に生活していくことを決意します。

これが序盤のあらすじとなりますが、早くも良い結末にはならないだろうな、と察してしまうような境遇でしたね。

久江が事故を隠蔽しよう、公務員の私の気持ちも分かって欲しい、といった発言には少々思う所がありましたが、当人だったらそう思ってしまうのかな?と思ったりも。
それに田舎とはいえ、飲酒運転を正当化しているあたり何とかなぁって。

予想通り、終始良い気持ちで読み進められる作品ではないです。
ただ、読了後にはどこか心が救われたような気がしました。

彼らの生活が幸せで色づくことを願うばかりです。
二度読み必至との記載がありましたが、個人的に再読はしたくないです(笑)

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

拓未との出会い、そして

物語の最終盤まで拓未の記憶が戻ることもなく、世間もバレることもなく進んでいたので、もしかしてこのまま終わってしまうの?と思ってしまいましたが、最後にあそこまでぐちゃぐちゃになるとは思いませんでした。

拓未が、そして千紗子が犬養安雄に危害を加えるシーンはさすがに驚きました。
千紗子が罪を犯しても拓未を守ってあげたい、と思えるほどに拓未には救われていた。

そう思うと何かグッと来るものがありますよね。
関係を断ってきた孝蔵の介護をする気になる、そして自分のせいで愛する息子の純を死なせてしまったのではないかということと向き合うことができた。

そして、拓未は母親である千紗子と祖父である孝蔵を守りたい。
この居心地の良い居場所を守りたいがためにあのような行動ができた。

千紗子と拓未。
歪な関係ではあったものの、お互いが以前よりも強くなれた。

支えたい人、支えてくれる人がいるからこそ強くなれた。
千紗子がしたことは決して許されることではないが、彼女らの生活が幸せでありますように。

あと、久江は何のお咎め無しなんですかね?(笑)
千紗子と拓未に焦点を当てた作品だからしょうがないとは思いますが、少々思う所がありました。

親の認知症

本作品は親の介護、認知症といった問題が密接に関係しています。
私自身、親が介護を必要とする状況にはまだなっていませんが、そうなってしまったら何をしてあげられるのか、何をしなければならないのかと考えさせられてしまいました。

最近だと、認知症の進行を遅くさせる医薬品の開発が進んでいるとか風のうわさで聞きましたが、さらに高齢化が進行したらどうなってしまうんですかね。

以前、認知症の第一人者である長谷川先生の本を読んだことがありますが結構タメになった記憶があります。
理解してもらえないんだ、話し合っても意味がない、と突き放してしまうのではなく、寄り添う事が必要、といったことが説明されていた覚えがあります。

とは言っても、全然簡単なことじゃないよなぁ。
今のうちから考えていますが、何が正解なのかさっぱりです。
寄り添おう!と口で言うのは簡単ですが、正直自身はないなって思ってしまいます。

この先も考え続けたい問題だと思いました。

興味のある方はこちらもぜひ読んでみてください。
医療の知識がほとんどない私にもわかりやすい一冊でした。


今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。

彼女が最後に見たものは【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『彼女が最後に見たものは』(まさきとしか/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

あらすじ

 

クリスマスイブの夜、新宿区の空きビルの一階で女性の遺体が発見された。五十代と思われる女性の着衣は乱れ、身元は不明。警視庁捜査一課の三ツ矢秀平と戸塚警察署の田所岳斗は再びコンビを組み、捜査に当たる。
そして、女性の指紋が、千葉県で男性が刺殺された未解決事件の現場で採取された指紋と一致。名前は松波郁子、ホームレスだったことが判明する。
予想外の接点で繋がる二つの不可解な事件の真相とは――!?
(本書より引用。)

 

人物紹介

 

田所岳斗:戸塚警察署所属。再び、三ツ矢とコンビを組むことになる。

三ツ矢秀平:警視庁捜査一課殺人捜査第5係所属。
つかみどころのない雰囲気で変わり者として知られる。

 

感想

今回は2人の警察が繰り広げるミステリー作品です。

本作は2作目となっておりますので、先に1作目を読んでからの方がより楽しめると思います。
下に1作目を貼っておきますので、興味のある方はぜひ!

また、2人の警察が共通するだけでストーリー自体は連続していないので、本作品から読んでも楽しめるとは思います。


以前、当ブログでも取り上げたことがあるのでこちらも良かったら!
今とはブログの体裁が大きく異なっておりますが、気楽に読んでもらえたら嬉しいです。

sh1roha468.hatenablog.jp


前作はいわゆる"イヤミス"と表現されるような、読了後に少々嫌な気分になる作品でした。

ただ本作の読了後は、悲しみの中にもどこか優しくホッとするような作品でした。
どこにも救いがないじゃないか!とはならずに、人の温かみに触れた気がします。

前作に続き、自由奔放で不思議な雰囲気ながらも頼りになる三ツ矢、そして事あるごとに三ツ矢や何もできない自分に腹を立てる田所のキャラクター性は健在です。

この2人のやり取りも楽しんでもらえたらと思います。
そして、田所と一緒に事件の謎を悩みませんか?
私は最後まで事件の真相はさっぱりでした(笑)


読書慣れしていない方や、ミステリー好きな方にオススメしたい一冊です。

 

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

タイトル名

これ、タイトル名が秀逸すぎませんかね?
読了後になんて良いタイトルなんだと、心の底から思いました。

"彼女"とはいったい誰なんだろうか。
そう思いながら読んでいましたが、読了後にタイトル名の意味に触れた瞬間思わず唸ってしまいました。(私の解釈違いだったら悲しいですが。)

結局は彼女(松波郁子)にしかわからないことなんだと。
そしてこれは松波郁子に限らず、東山瑠美子や木村成美にも言えること。
彼女らが、最後に見たものというのは本人にしかわからないということ。

特に、松波郁子に関しては亡くなっていますので、誰にもわからないものとなっています。
作中にはこんな表現があります。

人生の終わりに自分にしか見えない光景を見つめ、自分にしかわからない心を握りしめて死んでいく。
(本書より引用。)

 

読者の私たちは松波郁子が何を思いながら死んでいったのかわかりますが、三ツ矢たちがそれを知るすべはない。
それでも、松波郁子と関わった人たちのことを思うとどこか優しい気持ちになれる。

このような表現もとても好きでしたね。

死んだことよりも生きていたことを見てほしいのです。
(本書より引用。)

これは三ツ矢のセリフでしたが、読了後にこのセリフにどこか救われた気がしました。

読んで良かった作品でした。
個人的に私は1作目よりも本作品の方が好きでした。

物語の結末

事件の真相は最後までさっぱりでした。
この松波郁子と過ごしていた少年が一枚かんでいるとは思っていましたが、東山瑠美奈と同一人物だとは思いもしませんでした。

どの登場人物も、どうか幸せになってほしいと願うばかりでした。
ただそう思うのも綺麗事であって、言うのも非常に簡単なことでしかありません。

逃げ場のない人はどうすればいいのか。
この表現には考えさせられるものがありました。
読了前より読了後は、少しでも優しい存在でありたいと思いました。

あと、木村湊が不憫すぎて辛かったです。
彼に救いはないのでしょうか。
母親の木村成美とどうにか幸せになってほしいと願うばかりでした。

 

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。

ウィザードグラス【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『ウィザードグラス』(根本聡一郎/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

あらすじ

 

大学生の陽輝の下に、ずっと連絡のとれなくなっていた兄から、突然荷物が届いた。中身は、見慣れない眼鏡型のデバイスタブレット。説明によると、それは他人の検索履歴を見ることができるAR機器「ウィザードグラス」だった。なぜこんなものが存在するのか、そしてなぜ自分の下に送られてきたのか。陽輝は次第に、ウィザードグラスをめぐる事件へと巻き込まれていく―“1億総監視社会”の恐怖と希望を描き切った意欲作!
(BOOKデータベースから引用。)

 

人物紹介

 

高峯陽輝:大学生。軽音サークルで幽霊部員と化している。
那月から"Wizard Glasses"という他人の検索履歴が見えるメガネが送られてくる。

天瀬那月:Globe社に勤めていた。陽輝の兄だったが、親の離婚により離れ離れとなる。

黒須壮平:陽輝と同じ文学部の友人。見かけによらずオタク趣味をもつ。
諸星大河:軽音サークルでパンクロックバンド"Riot Lion"のボーカル。スマホをもたない。
霧島千晶:"PRISM"のボーカル。

感想

今回はスマホSNSを題材としたSF作品です。

陽輝は兄の那月から、携帯端末の個人情報を覗ける"Wizard Glasses"をもらうことになります。

那月からは正しいことに使ってくれと伝えられ、最初は痴漢を撃退することに成功。
陽輝は"Wizard Glasses"の恐ろしさを理解しながらも、このデバイスが持つ性能を理解するにつれて徐々に事件へと巻き込まれていく。

正に、今のスマホ時代を象徴するような一冊でした。
他人から検索履歴を除かれていると思うと、良い気持ちはしないですよね。

でももしかしたら、誰かに見られていてもおかしくはない。
それほどに、企業の力は強大で一個人にはどうすることもできない。

もう私たちはこの情報社会からは抜け出せないほどに依存してしまっているんですね。
作中で出てくる他人批判や承認欲求の体現。
そのリアリティだからこそ、どこか近年の異常さが伝わってしまいました。


近代社会を体現した一冊で、非常に読みやすかったです。
私のように、SF作品が好きな方にはたまらない作品だと思います!

 

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

物語の結末

公安2人の圧倒的な頼り強さ。
この2人がいなかったら終わっていたのでは?と思う場面ばかり。

そして、謎だらけだった那月も博識な人物でしたね。
G○○gleの元社員だけあって、非常に頼もしかったです。

陽輝と那月。
親の離婚によって離れ離れにはなってしまったが、兄弟の計り知れない信頼関係。
陽輝にしかわからないメッセージを書き残し、那月のメッセージをくみ取る陽輝。
どこか懐かしさを感じさせる熱い展開に心が躍りました。

意外と本編に絡まなくて驚いたのは、霧島千晶という人物。
協力するとか、事件のヒントになるやり取りがあるのかなと思っていましたが、陽輝が察して終わるとは。
個人的には、事件解決後に大学の知人たちとの後日談がもう少し欲しかったです。

諸星大河という人物は、作者が伝えたいメッセージを表しているのかもしれませんね。
このまま何の迷いなく情報社会に身を投じていて良いのかと。

あと、最後に登場したジャーナリズム4という団体は、最後に裏切るのではないかと勘繰っていました。
ごめんなさい(笑)ただの善人集団でした。

近年のスマホSNSの便利ながらも恐ろしさを暗示する一冊でした。
読んで良かったです。

スマホ普及率

現代のスマホ普及率ってどの程度なんだろうと疑問に思って調べてみました。

総務省|令和2年版 情報通信白書|情報通信機器の保有状況 (soumu.go.jp)
(総務省HPより引用。)

こちらの資料によると、ここ10年(2009年から2019年)で各家庭の普及率は10%以下から83.4%に増加、個人の普及率は2019年段階で63.4%とのことです。

今は2022年ですので、同じようなペースで増加していると仮定すると、各家庭ではおよそ90%、個人では70%とかになりますかね。

そう考えると本当に高いですね。
ほんの10年前からは想像できなかったほどの普及率です。

実際に、私も突然スマートフォンがない生活をするとなったら?と考えると色々と苦労することがありそうです。

スマホが普及する前まではどんな生活をしていたんだ?と考えてしまうほど、生活の中心にこのスマートフォンというものは鎮座しています。

便利であるものの、依存しきってしまっている現状にはゾッとするするものがあるのは私だけでしょうか。

私が中高生だったころは今ほど普及していませんでしたが、あの頃にスマホがあったら勉強習慣とか崩れていたでしょうし、友人との関係もまた変わっていたんだろうなと思います。

以前、書籍のスマホ脳を読んだ時にも、この手軽なスマホという媒体の恐ろしさを感じさせられました。
だからといって、読了後に生活が変わったわけでもないので、依存ってなかなか抜けられませんね。

興味のある方はこちらもぜひ読んでみてください。
スマホとの付き合い方を見つめ直すきっかけになるかもしれませんよ。

スマホが普及する前は何をして時間を過ごしていたんですかね。

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。