活字紀行

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この夏の星を見る【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『この夏の星を見る』(辻村深月/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

亜紗は茨城県立砂浦第三高校の二年生。顧問の綿引先生のもと、天文部で活動している。コロナ禍で部活動が次々と制限され、楽しみにしていた合宿も中止になる中、望遠鏡で星を捉えるスピードを競う「スターキャッチコンテスト」も今年は開催できないだろうと悩んでいた。真宙(まひろ)は渋谷区立ひばり森中学の一年生。27人しかいない新入生のうち、唯一の男子であることにショックを受け、「長引け、コロナ」と日々念じている。円華(まどか)は長崎県五島列島の旅館の娘。高校三年生で、吹奏楽部。旅館に他県からのお客が泊っていることで親友から距離を置かれ、やりきれない思いを抱えている時に、クラスメイトに天文台に誘われる――。
(本書より引用。)

 

人物紹介


溪本亜紗:砂浦第三高校二年生。天文部所属。
飯塚凛久:同じく天文部所属の二年生。学校では珍しい男子生徒の一人。
綿引邦弘:天文部顧問。亜紗が星に興味を持つようになった原因の人物。

安藤真宙:渋谷区立ひばり森中学校一年生。学年唯一の男子生徒。
中井天音:真宙のクラスメート。理科部所属で真宙を誘った。
森村尚哉:真宙の担任。

佐々木円華長崎県立泉水高校三年生。長崎の五島列島で生まれ育った。
武藤柊:野球部所属。円華のクラスメート。島の外の福岡から来た。
小山友悟弓道部所属。武藤と同じく島の外の神奈川から来た。
才津勇作:五島天文台館長。

感想

今回はコロナ禍を舞台とした作品です。
もしかしたらこのようなことも起こっていたのかも?と感じながら読みました。

内容としては、遠く離れた地域に住む学生らが同じ星を観測するものとなっています。
星空は遠く離れていようとも、そしてコロナ禍で会うことが難しい中でも。
そんな状況でも、同じ星空を(天候によっては)楽しむことができます。

なんだか、星観測が好きだった頃の幼い私を思い出しました。
当時は星空を眺め、何座が見えるだの言って喜ぶ程度でしたが、望遠鏡をこしらえて見たらまた違った感想を抱くんでしょうね。

普段はあまり気を付けて観ることのない星空を眺めてみませんか?
遠く離れた友人と連絡を取ってみませんか?

どんな状況だろうと、楽しむ方法なんていくらでもあるんだなと再認識しました。
明日は夜空を眺めようと思います。

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

 

全体を読み終えての感想(ただの独り言)

私たちの状況って、今、すごくおかしいよね?
(本書より引用。)


コロナ禍の時にこう思っていた方も少なくはないのではないでしょうか。
とは言っても、何が正解なのかなんて誰にもわからない。
それはコロナ禍が落ち着いてきた今になっても。

今だからこそ言えることもあるのかもしれませんが、当時はその時にしかない独特な雰囲気がありましたからね。
言ってはいけないことは正しい、のかもしれない。

何が正解かなんて終わってみないと誰にもわからない。
だからといって、自分の境遇に文句を言うだけでなく、自分たちにできることを見つけて、作って実行した彼ら彼女らの美しさには目を見張るものがあります。

まぁ私が実際に学生時代にコロナ禍に巻き込まれていたら、ひたすらに文句を言っていただけの人になっていたと思いますが・・・。

だからこそ、彼ら彼女らの正に"今"を生きているんだという姿勢は見習うべきものがありました。

たとえどんな状況だろうと、今きっとできることが何かありますもんね。

何を伝えたかったのか(これもただの独り言)

どんな状況だろうと、どんな距離だろうと、誰とだって簡単に同じ時間を共有することができる。
何気ないことですけど、これって今のように技術が発展したからこそできる素晴らしいことですよね。

作中はまだコロナ禍の最初期で、混乱の最中にあります。
学生にとっては、本当に辛い日々だっただろうなと改めて痛感しました。

私たち大人からすれば、自粛なんて大したことない(人によるか・・・。)かもしれませんが、学生たちは本当に"今"しか味わえない瞬間にいましたからね。

ただ、そんな中でも何とかして自分たちのやりたいことを成し遂げたい!
そんな姿勢は本当に眩しいものでした。

作中ではこのように亜紗がコメントしています。

 

「コロナの年じゃなかったら、私たちはこんなふうにきっと会えなかったから。どっちがいいとか悪いとか、わからないね。悪いことばかりじゃなかったと思う」
(本書より引用。)


所詮はフィクションだからー、とか言うのは簡単ですが、自分もあのコロナ禍は悪いことばかりじゃなかったなと思います。

何年か経って、こんなこともあったよなー、と笑い飛ばせる日がいつかきっと来ますよね。

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。