活字紀行

自分自身に満足を。つらつらと書評ブログ。Twitter@sh1roha_468

菓子先輩のおいしいレシピ【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『菓子先輩のおいしいレシピ』(栗栖ひよ子/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

友達作りが苦手な高1の小鳥遊こむぎは、今日もひとりぼっち。落ち込んで食欲もなかった。すると謎の先輩が現れ「あったかいスープをごちそうしてあげる」と強引に調理室へと誘い出す。彼女は料理部部長の菓子先輩。割烹着が似合うお母さんみたいにあったかい人だった。先輩の作る料理に勇気づけられ、徐蕨に友達が増えていくこむぎ。しかしある時、想像もしなかった先輩の“秘密”を知ってしまい―。みんなを元気にするレシピの裏に潜む、切ない真実を知った時、優しい涙が溢れ出す。
(「BOOK」データベースより引用。)

 

人物紹介


小鳥遊こむぎ:高一で友達作りが苦手。一人ぼっちで悩んでいたところ、菓子先輩に出会う。
百瀬菓子:料理部の部長。非常階段で弁当を開けていたこむぎにミネストローネをふるまった。
浅木真汐:以前、料理部顧問をしていた。現在は学校を退職して"pale-green"という店を経営している。

感想

今回は高校の料理部での日常を描いた作品です。
レシピも載っていて、どこかお腹が空いてくる一冊です。

主人公のこむぎはふさぎがちな性格で、高校生活に馴染めなくて悩んでいます。
そんな矢先、ミネストローネをふるまってくれる、明るく少々強引な菓子先輩と出会います。

先輩と出会ったことでクラスにも友達ができたこむぎ。
料理部への入部を決め、そこでの暮らしが中心となってどう変わっていくのか、その過程を美味しそうな料理と共に楽しんでもらえればなと思います。

上記のあらすじにもあるように、菓子先輩にはとある秘密があります。
こむぎがその秘密に気付き、何をすることができるのか。

助けてもらったこむぎは菓子先輩のために何ができるのか。
健気に奮闘する様をどこか応援しながら読んでもらえればなと思います!

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

 

全体を読み終えての感想(ただの独り言)

味覚がない中で料理を食べなければならないなんてどれほど辛かったのでしょうか。
そんな秘密を抱えながら、菓子先輩はどうしてこれほどまでに明るく振舞えたのでしょうか。

終始、人柄の良さが伺えますよね。
こむぎがあまりにも美味しそうに菓子先輩の料理を食べていた影響もありそうですが。

一人暮らしという立場ですので、料理を美味しそうに食べてくれる人がいるってちょっと羨ましく感じてしまいます。
これほど美味しく食べてくれて、感想まで聞けるなんて最高ですよね。

誰かに料理を振舞ったことはありませんが、こういったことも料理のモチベーションになり得るんでしょうね。

高校生ならではの生活だけでなく、誰か料理を食べてくれる人がいるという境遇にどこか眩しいものを感じてしまいました。

学生からしたら少々年を取りましたね。
今も今で楽しいので満足していますが。

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。

すべてがFになる【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『すべてがFになる』(森博嗣/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

14才で両親殺害の罪に問われ、孤島の研究施設に閉じ込もった天才工学博士、真賀田四季。教え子と共に島を訪れた助教授の犀川は、交信を断っていた博士の部屋から女の死体を発見する。
(「BOOK」データベースより引用。)

 

人物紹介


真賀田四季:天才プログラマ

犀川創平:N大学工学部建築学助教授。
西之園萌絵:N大学工学部建築学科一年生。

感想

african hut

今回は一つの研究所で起こった事件を描いた作品です。
登場人物が非常に多いですが、作中冒頭に一覧が表記されていますので、そちらを適宜参照していただけると読みやすいと思います!

ミステリといっても理系ミステリと評されることもあります。
私は理系出身ですので、結構くすぐられるものがあって非常に面白かったです。

ただ、ミステリのトリックは最後までさっぱりでした。
これ読みながら真相にたどり着ける人っているんですかね・・・。

これから読む人にはぜひ真相がわかるかどうか挑戦してみてください。
"すべてがFになる"はシリーズものですので、続編も読んでみようと思います。

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

 

全体を読み終えての感想(ただの独り言)

"すべてがFになる"。
果たして、この言葉は何を表しているのだろうか。
そんなことを彼らと共に考えながら読んでいました。

何かの頭文字かな?だなんて考えていましたが、思いもよらぬ方向からボールが飛んできたように驚きました。
真相がわかれば、あーなるほどね!?とはなりましたが、絶対に私には推理なんてできないなと思いました(笑)

やっぱりミステリ作家と言うのは本当に凄いです。
どうやったらこのようなプロットが書けるんですかね。

登場人物が多くて把握しきれないながらも読んでいましたが、読んで良かったです。

何を伝えたかったのか(これもただの独り言)

さて、好きだなーとかこれは良い表現だなーと思った点をつらつらと書きたいと思います。
中でも書き留めておきたいのは以下の2点です。

 

「そうやって、個人を満足させる他人をコンピュータが作り出して、(中略)情報化社会の次に来るのは、情報の孤立、つまり分散社会だと思うよ」
(本書より引用。)

 

流動的で、渾然一体になりたいという欲求を社会本能的に持っている。欧米では、個人はソリッドだから、けっして混ざりません。どんなに集まっても、必ずパーツとして独立している……。
(本書より引用。)


20年以上も前の作品なのに、近年の情報化社会にも通じる部分があって考えさせられました。

情報の孤立、分散社会。
他人に認められて一員となりたいと思う一方、いつも孤立感を感じずにはいられない方も珍しくない。

どれだけ便利な社会になったとしても、精神的に満たされない人は一定以上いますし。
まぁこんなこと、人が存在している限り絶対に解決しないですもんね。

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。

百花【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『百花』(川村元気/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

晦日、実家に帰ると母がいなかった。息子の泉は、夜の公園でブランコに乗った母・百合子を見つける。それは母が息子を忘れていく、始まりの日だった。認知症と診断され、徐々に息子を忘れていく母を介護しながら、泉は母との思い出を蘇らせていく。ふたりで生きてきた親子には、どうしても消し去ることができない“事件”があった。母の記憶が失われていくなかで、泉は思い出す。あのとき「一度、母を失った」ことを。泉は封印されていた過去に、手をのばす―。現代において、失われていくもの、残り続けるものとは何か。すべてを忘れていく母が、思い出させてくれたこととは何か。
(「BOOK」データベースより引用。)

 

人物紹介


葛西泉:レコード会社勤務。実家に帰ると母がいなかったが公園のブランコで発見。
  百合子:泉の母。シングルマザーとして泉を育てた。認知症を患ってしまう。
  香織:泉の妻。泉とは社内婚をした。お腹の中には子供がいる。

感想

今回は認知症となってしまった母とその息子の生活を描いた作品です。

読んでいる私たちからしても、百合子の不可解な行動が徐々に増えてくることはどこか悲しい気持ちになってしまいます。

そんな母親を見ながら息子の泉は、そして妻の香織は何を思うのか。
この本は広い年代にオススメできる一冊かと思います。

実際に介護する立場になった人、まだまだ先の人、そして遠くない未来に介護される立場になる人。
読んでいて感じ方が大きく違うと思います。

読んで良かった一冊でした。
本当に川村元気さんの作品はどこか温かい気持ちになれます。

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

 

全体を読み終えての感想(ただの独り言)

認知症って何なんだろう。どうやって向き合えばいいのだろう。
記憶って、思い出って、忘れるって何なんだろう。
そんなことをぼんやりと思いながら読んでいました。

自分はまだ親の介護をしなければならない場面になったことはありませんが、実際には泉のように仕事、家庭、そして介護を抱えながら苦労するのだろうなって。

そして当たり前のように、もっとこうしていれば良かったと後悔するんだろうなって。
"認知症"という概念はわかりますが、当事者にならないとわからないですもんね。

表紙の大半が不鮮明になっているのは記憶を表しているのでしょうか。
記憶が欠落していくのは本人にも理解できているのでしょうか。

以前、認知症関連の本で読んだ気がしますが、本人は自分が思うようにできないことにもどかしさを感じているとか。

介護する側からすれば、以前とは変わってしまった相手に戸惑いや苛立ちを感じてしまうことも多いかと思いますが、少しでも優しくありたいです。

何を伝えたかったのか(これもただの独り言)

失っていくということが大人になるということなのかもしれない。
(本書より引用。)


作中では人工知能が登場しましたが、人工知能はこの点が非常に人とは対照的ですよね。
決して忘れることのない人工知能だから決して人にはなりえない。

だからこそ、記憶を失わせることで人工知能に個性や才能を与えられるかも、と言う説が出たんですね。

記憶があるからこそ、個性が生まれるのかもなぁ。

だからといって認知症の方は記憶の喪失と共に個性を失うのでしょうか。
そんな風に私は思いません。

実際に百合子も特定の記憶に基づいて行動していることが多かったですよね。
特定の記憶が垣間見えることで、その人の個性が色濃く出ることもあるかもな、とぼんやり思いました。

そう考えると、認知症って怖いものなんだ、その人が別人になってしまうんだ、と恐れてしまうのはどこか違う気がしてきました。

人工知能にしかできないこともありますが、人ってやっぱり美しい。
何事も恐れずに今を大切にしたいです。

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。

スロウハイツの神様【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『スロウハイツの神様』(辻村深月/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

ある快晴の日。人気作家チヨダ・コーキの小説のせいで、人が死んだ。猟奇的なファンによる、小説を模倣した大量殺人。この事件を境に筆を折ったチヨダ・コーキだったが、ある新聞記事をきっかけに見事復活を遂げる。闇の底にいた彼を救ったもの、それは『コーキの天使』と名付けられた少女からの百二十八通にも及ぶ手紙だった。事件から十年―。売れっ子脚本家・赤羽環と、その友人たちとの幸せな共同生活をスタートさせたコーキ。しかし『スロウハイツ』の日々は、謎の少女・加々美莉々亜の出現により、思わぬ方向へゆっくりと変化を始める…。
(「BOOK」データベースより引用。)

 

人物紹介


赤羽環:人気急上昇中の脚本家。『スロウハイツ』のオーナー。
狩野壮太:投稿を繰り返す漫画家の卵。
チヨダ・コーキ:本名は千代田公輝。中高生に絶大な人気を誇る小説家。
長野正義:映画製作会社で働く監督の卵。
森永すみれ
:画家の卵。正義の彼女。炊事担当。
黒木智志:チヨダ・コーキを売り出した敏腕編集者。

感想

今回は『スロウハイツ』というシェアハウスで送られる日々をつづった作品です。
登場人物はいずれも何かしたらの創作活動で芸術に携わっているような人たちです。
上下巻に分かれているためボリュームはあります。

私はその辺にいるような会社員であるため、創作を生業にしている方は自分と違った気苦労があるんだなぁと思いながら読んでいました。

最初は何気ない日常がそれぞれの視点で描かれるような作品なのかな?と思っていましたが、徐々に謎解き要素を交えつつ登場人物のすれ違いも出てきます。

ちょっとした謎解きを考えつつ、人のすれ違いの歯がゆさがありながらもどこか暖かくなれる作品でした。
自身の夢や追い求めるものに向かって突き進む人たちはどうしてこんなにもカッコいいのでしょうか。

どこか自分にも活力を与えてくれたと思います。
前半は少々退屈するなぁと思っていましたが、気づけば下巻まで一気に読んでいました。
序盤で止めずに読んで本当に良かったです。

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

 

全体を読み終えての感想(ただの独り言)

男女を含んだシェアハウスというのはどこかドロドロとした展開を予想してしまうのは私だけでしょうか。
本作品もそのような展開になってしまうのではないか?とハラハラしながら読みましたが、決してそんなことはない美しい内容でした。

決してうまくいかないこともあるからこそ人付き合いなんだと感じさせられました。
もちろん、環とコーキだけでなく他の登場人物たちがどのような運命に向かっていくのか、非常に楽しめながら読むことができました。

そして、芸術のように自身が目指す目標に向かって、ひたむきに努力する人たちは、どうしてこんなにもカッコいいのでしょうか。
彼らの人間関係にもどかしさを感じつつも、どこか応援するように読んでいました。
何様だよって感じですけどね・・・。

個人的に上下巻に分かれてではなく、ドン!と分厚い書籍だったら感じ方も違ったのかなぁと思うことも。
私だけでしょうかね?

本当に上巻だけで読むのを止めなくて良かったなと思います。
スロウハイツの神様をお勧めしてくれた友人には本当に感謝です。

何を伝えたかったのか(これもただの独り言)

人ってどうしてこんなにも不器用なんでしょうかね。
当事者ではなかったり、読んでいる我々だったりすればはっきりと言い表すことができるのに、いざ当事者となると視野角が半分以下になっていることも。

如何せん、何かを目指して努力している人は本当にカッコいい。応援したくなります。
不器用ながらも自身の軸は決してブレることなく邁進していきたいですね。

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。

月曜日の抹茶カフェ【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『月曜日の抹茶カフェ』(青山美智子/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

川沿いの桜並木のそばに佇む喫茶店「マーブル・カフェ」。その「マーブル・カフェ」が定休日の月曜日にだけ「抹茶カフェ」を営むことに。ついていない携帯ショップの店員、妻を怒らせてしまった夫、恋人と別れたばかりのシンガー、時代に取り残されたと感じている京都老舗の元女将……。思い悩む人々が誰かの何気ない言葉で前向きな気持ちになっていく――。人は知らず知らずのうちに、誰かの背中を押している。――
(本書より引用。)

 

人物紹介


美保:携帯ショップに勤務。ツイてない日だったためお気に入りのカフェであるマーブル・カフェに立ち寄った。
吉平:マーブル・カフェの若旦那。最近、ガラケーからスマホに買い替えた。
マスター:マーブル・カフェのマスター。

感想

hot teapot

今回は一つのカフェテリアで起こる何気ない日常を綴った作品です。
こちらの続編となっております。(個人的にとても楽しみにしていた一冊です。)

 

sh1roha468.hatenablog.jp

 

書評書いたの、思った以上に前だったんですね。
ブログの体裁が今と全然違くて結構長い事やってんだなぁとも思いました。

今回はココアではなく抹茶が飲みたくってしまいました・・・。
カフェとか喫茶店と呼ばれる場所を舞台とした作品は罪ですねホント(笑)

さて、内容としてはですが相も変わらず短編小説と見せかけた長編小説で最高です。
一見すると関わりがないような?といった人物らが次第に線でつながっていく様はいつ見ても心地良いものです。

現実でもこういった何気ない繋がりはあるんだろうなぁと考えると、どこか人の温かみを感じます。

ぜひ何か飲み物でも用意しながら読んでもらえればなと思います。
きっとあなたに癒しを与えてくれることでしょう!

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

 

全体を読み終えての感想(ただの独り言)

どうしてここまで読んでいてい心が温かくなるのでしょうか。
青山美智子さんのいつどの作品を読んでも満足感が非常にあります。
そして読了後には自身の周りにある何気ない人付き合いを大切にしようと思えます。

前編である木曜日にはココアをでも登場した人物が再登場するのはアツかったです。
こうやって誰彼も、変わらず日常が過ぎていくんだなぁと思うと感慨深いものがあります。

ふとしたら何も目標もなく無為な日々を過ごしているのではないか?と思ってしまうことがありますが、それでも良いんだなって私は思いました。

誰彼にもその人にしか味わえない人生ですもんね。
精一杯楽しんでやろうと思います!!

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。

雨上がりの川【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『雨上がりの川』(森沢明夫/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

出版社に勤める川合淳は、中学生の娘・春香がいじめをきっかけに不登校になったことに悩んでいた。さらに、妻・杏子がこの現状を打破しようと怪しげな霊能者に心酔。淳は近所の釣り好きな心理学者の千太郎に相談するが…。暗雲垂れ込める一家に「当たり前の日々」は戻るのか?誰かの幸せを願い切に生きる人々を描いた、家族の再生物語。
(「BOOK」データベースより引用。)

 

人物紹介


川合淳:出版社に勤める編集者。娘の引きこもりをきっかけに生活が一変したことを嘆いている。
杏子:淳の妻。娘の出産をきっかけに専業主婦となった。以前は化学メーカーの研究員を務めていた。
春香:淳、杏子の一人娘。いじめをきっかけに去年から引きこもりとなった。

紫音:杏子が心酔する怪しげな霊能者。
千太郎:近所の釣り好きな心理学者。

感想

今回は様々な問題を抱える一つの家族らを描いた作品です。
最初に言いますと、私は読む前と読んだ後で印象の変わる秀逸なタイトルだなと思いました。

あなたは雨上がりの川と言うとどのような川を思い浮かべますか?
表紙絵のような川でしょうか?それともこれとは違った川でしょうか?
そういった点も想像しながら読んでもらえればなと思います!

さて、簡単な内容ですが、娘の引きこもりをきっかけにして一つの家庭が崩れつつあるという、なんとも不穏な始まり方をします。
娘の引きこもりだけでなく、妻も怪しげな霊能者を心酔してしまうんですね。

父として、夫として、淳は何ができるのか。
家族の行く末を見守りながら読んでほしい一冊です!

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

 

全体を読み終えての感想(ただの独り言)

洗脳や引きこもり。全体を通して暗い印象を感じずにはいられません。
そして『雨上がりの川』と言うタイトル。
私は豪雨とかが去った後特有の川を想像しながら読んでいたため、終始暗い話で進行していくのではないか?と思いながら読んでいました。

淳や春香、どちらの視点をとっても終始頼りになる千太郎でした。
彼がいなかったら淳はどうしていたのだろう、春香はどのような行動に出たのだろうか。そう考えると少々怖いものがあります。

作中ではこのような表現がありました。

「人を傷つける人は、自分の心が傷ついている可哀想な人。人を騙す人は人に騙されて世界を信頼できなくなった淋しい人」
(本書より引用。)


千太郎から教えてもらった春香の発言ですね。
彼がいたからこそ、春香はいじめから立ち直ることができたんでしょうね。
いじめなんて本当に救いようのないクズだと思いますが。

相手を完全には理解できないながらも、人を助けることの暖かさを感じられた作品でした。
森沢明夫さんらしい、温かみにあふれた一冊でした。読んで良かったです。

何を伝えたかったのか(これもただの独り言)

それぞれにしかわからない立場と心情、苦悩がある。
しかし、それを理解できるからこそ寄り添ってともに歩んでいく暖かさ感じた一冊でした。

淳目線だと、妻が怪しげな霊能者に心酔してしまっただけでなく、娘の春香も追随してしまうような形で、本当に心配でならなかったと思います。
しかし、杏子視点だと家を外しがちな淳を見て、誰も頼ることのできない疎外感を感じていたからこそ紫音という霊能者にすがってしまってのではないでしょうか。

私たち外部の人からすれば、洗脳にハマってしまうなんて、馬鹿らしいとか不信感を抱くこととかあるんでしょうけど、本人間でしかわからない状況ってあるんだなって思わされました。

千太郎が頼り強かったことはもちろん、娘の春香も不登校らしさを感じさせないほどにとても強く立派だったと思います。
最後には、本人から転校したいと打ち明けられて本当に良かったです。

雨上がりの川。
最初はどんよりと暗い川を想像していましたが、雨上がりの透き通った川と雲一つない晴れやかな青空。
そんな明るさが感じられる結末でした。
読了後だからこそ、より美しさがわかるタイトルだったなと思いました。

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。

こころ食堂のおもいで御飯【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『こころ食堂のおもいで御飯 仲直り変わりの親子丼』(栗栖ひよ子/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

“あなたが心から食べたいものはなんですか?”―味オンチと彼氏に振られ、内定先の倒産と不幸続きの大学生・結。そんな彼女がたどり着いたのは「おまかせで」と注文すると、望み通りのメニューを提供してくれる『こころ食堂』。店主の一心が振舞ったのは、むかし結の祖母が作ってくれた思い出の“焼きおにぎり”。懐かしい味に心を解かれ、結は食欲を取り戻す。不器用で優しい店主と、お節介な商店街メンバーに囲まれて、結はここで働きたいと思うようになり…。
(「BOOK」データベースより引用。)

 

人物紹介


持田結:半年前に内定先が倒産。さらに二年間付き合った彼氏に振られる。
味沢一心:こころ食堂の店主。"おまかせ"を注文すると、その人が今求めるメニューを提供する。
酒井響:こころ食堂の近くにあるバーのマスター。
宮尾優:ミャオと呼ばれる、言葉を発することができない少女。猫と会話できる。

感想

今回は"こころ食堂"という一つの食堂を舞台とした作品です。
以前、私の勘違いで続編を読んでしまった下記作品の前編です。

sh1roha468.hatenablog.jp

 

個人的には、なぜ結が"こころ食堂"と親交のある方とどのようにして馴染んでいったのか、その経緯が後ながらも知れてよかったです。

続編と同様に、どの料理もとても美味しそうで食べたくなりました。
私はその中でも、チキンカツレツが一番気になったので実際に作って食べてみました。
非常に満足でした!!また作ります。

さて、全体としては続編では描かれなかった一心さんがなぜ"こころ食堂"を開くことになったのか。
そして、なぜその人が求める料理を提供できるのか、そういったことが知れてよかったです。

素敵な料理を思い浮かべながら楽しんでもらえればと思います!

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

 

全体を読み終えての感想(ただの独り言)

続編と同様に、読んでいてとてもお腹が空く作品でした。
料理を食べているだけでどうしてここまで温かい気持ちになれるのでしょうか。
どうして、一心さんはこのような料理を提供できるのでしょうか。

こういう家庭的な食堂ってふとした時に行きたくなるんですよね。
(近場にないんだよなぁ。)

さて、あとがきではこのようなことが書かれていました

あなただけの"心から食べたい料理"を見つけてもらえたら、とても幸せです。
(本書より引用。)


全部で5つの話と料理が描かれていましたが、きっとあなたにもこの料理はぜひとも食べてみたい!!と思うのがきっとあると思います。

料理小説、最高です。

何を伝えたかったのか(これもただの独り言)

人の三大欲求の一つである食欲。
生きていくうえで食事は決して欠かすことのできない存在です。

ついつい何気なく一食を選んで食べてしまいますが、この作品はその一食でしか味わえない愛情や温かみを感じました。
落ち込んでいる時や元気がないとき、食が進まないことってありますよね。

そういった時だからこそ、食べやすいものをしっかり食べることの大切さを教えてもらった気がします。
食事を通して人の温かみに触れられた一冊だったと思います。

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。