活字紀行

自分自身に満足を。つらつらと書評ブログ。Twitter@sh1roha_468

雨上がりの川【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『雨上がりの川』(森沢明夫/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

出版社に勤める川合淳は、中学生の娘・春香がいじめをきっかけに不登校になったことに悩んでいた。さらに、妻・杏子がこの現状を打破しようと怪しげな霊能者に心酔。淳は近所の釣り好きな心理学者の千太郎に相談するが…。暗雲垂れ込める一家に「当たり前の日々」は戻るのか?誰かの幸せを願い切に生きる人々を描いた、家族の再生物語。
(「BOOK」データベースより引用。)

 

人物紹介


川合淳:出版社に勤める編集者。娘の引きこもりをきっかけに生活が一変したことを嘆いている。
杏子:淳の妻。娘の出産をきっかけに専業主婦となった。以前は化学メーカーの研究員を務めていた。
春香:淳、杏子の一人娘。いじめをきっかけに去年から引きこもりとなった。

紫音:杏子が心酔する怪しげな霊能者。
千太郎:近所の釣り好きな心理学者。

感想

今回は様々な問題を抱える一つの家族らを描いた作品です。
最初に言いますと、私は読む前と読んだ後で印象の変わる秀逸なタイトルだなと思いました。

あなたは雨上がりの川と言うとどのような川を思い浮かべますか?
表紙絵のような川でしょうか?それともこれとは違った川でしょうか?
そういった点も想像しながら読んでもらえればなと思います!

さて、簡単な内容ですが、娘の引きこもりをきっかけにして一つの家庭が崩れつつあるという、なんとも不穏な始まり方をします。
娘の引きこもりだけでなく、妻も怪しげな霊能者を心酔してしまうんですね。

父として、夫として、淳は何ができるのか。
家族の行く末を見守りながら読んでほしい一冊です!

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

 

全体を読み終えての感想(ただの独り言)

洗脳や引きこもり。全体を通して暗い印象を感じずにはいられません。
そして『雨上がりの川』と言うタイトル。
私は豪雨とかが去った後特有の川を想像しながら読んでいたため、終始暗い話で進行していくのではないか?と思いながら読んでいました。

淳や春香、どちらの視点をとっても終始頼りになる千太郎でした。
彼がいなかったら淳はどうしていたのだろう、春香はどのような行動に出たのだろうか。そう考えると少々怖いものがあります。

作中ではこのような表現がありました。

「人を傷つける人は、自分の心が傷ついている可哀想な人。人を騙す人は人に騙されて世界を信頼できなくなった淋しい人」
(本書より引用。)


千太郎から教えてもらった春香の発言ですね。
彼がいたからこそ、春香はいじめから立ち直ることができたんでしょうね。
いじめなんて本当に救いようのないクズだと思いますが。

相手を完全には理解できないながらも、人を助けることの暖かさを感じられた作品でした。
森沢明夫さんらしい、温かみにあふれた一冊でした。読んで良かったです。

何を伝えたかったのか(これもただの独り言)

それぞれにしかわからない立場と心情、苦悩がある。
しかし、それを理解できるからこそ寄り添ってともに歩んでいく暖かさ感じた一冊でした。

淳目線だと、妻が怪しげな霊能者に心酔してしまっただけでなく、娘の春香も追随してしまうような形で、本当に心配でならなかったと思います。
しかし、杏子視点だと家を外しがちな淳を見て、誰も頼ることのできない疎外感を感じていたからこそ紫音という霊能者にすがってしまってのではないでしょうか。

私たち外部の人からすれば、洗脳にハマってしまうなんて、馬鹿らしいとか不信感を抱くこととかあるんでしょうけど、本人間でしかわからない状況ってあるんだなって思わされました。

千太郎が頼り強かったことはもちろん、娘の春香も不登校らしさを感じさせないほどにとても強く立派だったと思います。
最後には、本人から転校したいと打ち明けられて本当に良かったです。

雨上がりの川。
最初はどんよりと暗い川を想像していましたが、雨上がりの透き通った川と雲一つない晴れやかな青空。
そんな明るさが感じられる結末でした。
読了後だからこそ、より美しさがわかるタイトルだったなと思いました。

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。