活字紀行

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恋に焦がれたブルー【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『恋に焦がれたブルー』(宇山佳佑/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

靴職人を目指す高校生の歩橙(あゆと)は、同じ学年の青緒(あお)に恋心を寄せている。彼女はいつもボロボロのローファーを履き、友達も作らず、ひとりぼっちで笑顔を見せたことすらない。歩橙はそんな青緒に手作りの靴をプレゼントしようと思い立つ。「僕が作ります。あなたが胸を張って笑顔で歩きたくなる靴を」不器用に、真っ直ぐに、恋する気持ちを靴に込めようとする歩橙。そのひたむきな想いに触れて、青緒も次第に彼に惹かれていく。しかし二人を試練が襲う。彼を愛おしいと思う気持ちが、青緒の身体に耐えがたい痛みを与える不思議な病を発症してしまったのだ。歩橙の言葉が、愛情が、してあげることのすべてが、青緒の身体を焦がすように傷つけてゆく……。
(本書より引用。)

 

人物紹介


夏目歩橙:靴職人を目指す高校生。密かに青緒に恋心を抱いている。
渡良井青緒:ボロボロのローファーを履く高校生。通称"ボロアオ"。
落窪桃葉:夏目の幼馴染。夏目の兄のような存在。

 

感想

今回は靴職人を目指す男子高校生と陰気な女子高校生が夢を目指す青春を描いた作品です。

簡単に言ってしまうと、純情な恋愛小説です。
しかし、ただの純情では決して終わりません。
青緒は歩橙のことを思うと、体に痣ができて痛みに苦しむ病気にかかってしまいます。

そんな苦しい病気にかかってしまった青緒。
青緒の気遣いなんてつゆ知らず、靴職人になるため奮闘する歩橙。
彼らの運命は。そして歩橙は靴職人になることができるのか。
そんな作品です。

歩橙の自分の夢を叶えるためだったら何だってする!!
そんなエネルギッシュな姿勢を見ていると、なんだか若いって羨ましいなと思ってしまいました(年を取りましたね・・・)。

二人を引き裂こうとするイベントが何度も発生します。
感情移入しやすいたちなので、どうしてここまで可哀想な目に合わなくちゃならないんだ?誰か彼らを救ってくれ・・・。
そんな風に思いながら読んでいました。

病気にかかった青緒は歩橙とどんな結末を迎えることになるのか。
歩橙は靴職人になることができるのか。
読んで確かめてもらえればなと思います。

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

 

全体を読み終えての感想(ただの独り言)

桃葉が良い奴過ぎませんかね?
彼女がいなかったら、二人共々挫折して壊れていたのではないか?と思うことが何度もありました。

歩橙に密かな恋心を抱いていた桃葉ですが、大切な友達でもある青緒のためにも奮闘する様は本当に格好良かったです。
二人のためにブライダルの仕事に就くなんて、どこまで友達思いなんだと。

歩橙には振り向いてもらえないんだろうなぁ、と思っていましたが、彼女自身も幸せを掴んでいてホッとしました。

さて、個人的に歩橙の父親の話は外せないですよね。

「歩きたくなるだろ。お前の靴を履いたら、俺はまた、きっと歩きたくなる……」
(本書より引用。)

このセリフはずる過ぎませんかね?
どうせ不器用な父親なんだろうなぁ、と思いながら読んでいましたが、最期にこのセリフなんて。

歩橙からしてみれば、いつも厳しくて分かり合えないような存在だった父親だと思いますが、ここのシーンは親子愛をとても強く感じてグッと来てしまいました。

終盤では歩橙が事故に遭いますが、思わずマジか・・・。とつぶやいてしまいました。
当事者ではない読者でさえ、どうしようもな絶望感がありました。

高校生の頃から必死に努力してきた描写があるからこそ、ここまで感情移入できるのだろうなぁと思いました。

全体を通して、苦しいシーンが多かったように感じましたが、読んで良かったです。

何を伝えたかったのか(これもただの独り言)

タイトルにあるブルー。
そして本作品のヒロインとも言えるシンデレラの青緒。
青色という色が一つのテーマとなっています。

これに対して、作中では雨の描写がやたらと多いなと感じました。
青色、晴れの対称でもある雨があるからこそ、晴れが際立って良いものとしているのではないか?と勝手に思いました。

辛く苦しい時期(雨)があったからこそ、晴れやかな心持ち(晴れ)でいられる。
苦しい時期があっても、いつかは報われる、そんな希望を感じさせてくれました。

著者である宇山さんは天気の描写が好きなんですかね?
以前読んだ本でも天気の描写が多く、空模様の見方が変わったことを覚えています。

興味があればこちらもぜひ。

sh1roha468.hatenablog.jp

 

靴職人を目指す歩橙には、"才能"という言葉が度々出てきましたね。

「才能とは―」(中略)「悔しいと思うその気持ちを、君自身の力に変えられるかどうかだよ」
(本書より引用。)

これは先生である榛名のセリフですが、自分が他人に負けたくないと強く思ったものは何だろう?と振り返るきっかけにもなりました。

歩橙のように、長い間追い続けられるかどうかはわかりませんが、自分が欲したものは諦めないでいたいですね。
コンプレックスを力に変えられるかどうか、ですもんね。


今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。