こんにちはしろはです。
今回は『ぼくのメジャースプーン』(辻村深月/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。
あらすじ
忌まわしいあの事件が起きたのは、今から三ヵ月前。「ぼく」の小学校で飼っていたうさぎが、何者かによって殺された…。大好きだったうさぎたちの無残な死体を目撃してしまった「ぼく」の幼なじみ・ふみちゃんは、ショックのあまりに全ての感情を封じ込めたまま、今もなお登校拒否を続けている。笑わないあの子を助け出したい「ぼく」は、自分と同じ力を持つ「先生」のもとへと通い、うさぎ殺しの犯人に与える罰の重さを計り始める。「ぼく」が最後に選んだ答え、そして正義の行方とは。
(「BOOK」データベースより引用。)
人物紹介
ぼく:不思議な力をもつ小学生。発した言葉で相手を縛ることができる。
ふみちゃん:ぼくのクラスメイト。皆から慕われて頼りにされている。
市川雄太:うさぎを殺した犯人。
感想
今回は不思議な力をもつ小学生による"言葉"の強さを描いた一冊です。
主人公であるぼくは、他人の行動を縛る不思議な能力を持っています。
あらすじにもありますが、学校で飼育していたうさぎが何者かによって惨殺されるという、とても残忍な事件が起こります。
その際に、うさぎがどうやって殺されたのか、どのような状態で発見されたのか、と事細かに描写されておりますので、そういったものが苦手な方はご注意ください。
私自身もペットを飼っているので、読んでいて苦しい限りでした。
うさぎが殺されたことによってふみちゃんは口がきけなくなってしまう。
"ぼく"は不思議な力を犯人である市川雄太に使うことを決意しますが、どんな縛りを言い渡すのでしょうか。
ぜひ、自分自身だったら?と考えながら読んでもらえると嬉しいです(私には結論を出せませんでした)。
今だからこそ、読むべき一冊だと思いました。
ネタバレありのコメント
これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!
全体を読み終えての感想(ただの独り言)
ただただ、うさぎが可哀想でしょうがなかったです。
どうしてこんなことができるのか、と胸が痛いばかりです。
そしてふみちゃんが少しでも早く元気になってくれることを願うばかりです。
PTSDとか、そういった精神的な苦痛は読んでいるだけでも辛いです。
ましてや、理解もされにくいので厄介ですよね。
さて、自分が"ぼく"だったらどうしたのだろう?
そう考えてみますが、彼のように明確な結論を出せるとは思えませんでした。
"ぼく"は小学生でありながら、どうしてここまでの意思をもてるのでしょうか。
小学生でありながら、こんな発言も良くないんでしょうね。
目には目を歯には歯を、の精神でやり返したくなってしまうかもしれませんが、手を出した時点で負けですからね。
そう考えると、何が正解なのか全くわかりません。
正解なんてないんでしょうね。
動物だから、と色眼鏡で見ていることもあるのではないか?
そんな風に見つめ直す一冊でした。
豚を飼育して食べるのか食べないのか、と皆で考えるシーンがありましたが、『銀の匙』という漫画を思い出してしまいました。
本当に、命って尊いものでありながら難しいよなぁとぼんやり思いました。
何を伝えたかったのか(これもただの独り言)
作中ではPTSDが出てきましたね。
こういった精神的な病は、どうして理解できない人はできないのでしょうか。
私自身も理解できているとは言えませんが。
決して自分が悪いだけではないのにそういった思いやりのない発言をする人だっている。
言葉はナイフにもなり得る。
気軽に発している言葉が、相手を苦しめているのではないか。
SNSを通じて書き込んでいる文章が、相手を追い詰めているのではないか。
そんな、"言葉"が持つ負の一面を感じました。
作中ではこんなセリフがありました。
「それが『有名税』を払うという考え方です。(中略)ですが、突然の不幸や事件に見舞われた人たちがそうされることは、本物の被害です。それは『税』ではなく、暴力としか言いようがない」
(本書より引用。)
なんだか、昨今の情勢を見ているようで耳が痛いです。
この本が10年以上も前に出版されているとか本当ですか?
ニュースで被害者となった方が報道される。記事にされる。
そういった方々に向けた、コメントが多数見受けられるのが今の情報社会。
どうしてこんな発言ができるのだろう?と思うようなコメントを目にしたことがある方は珍しくもないのでは。
面と向かって発する言葉がすべてではないですからね。
何気なく書き込んでいるSNSだって、誰かを苦しめて居るかもしれませんし。
当然、こういったブログを書いている私も他人ごとではないのですが。
情報発信をしやすい、自分の感想を述べやすい。
まさに、昨今だからこそ読むべき一冊ではないかと思いました。
私も気を付けようと思います。
今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。