活字紀行

自分自身に満足を。つらつらと書評ブログ。Twitter@sh1roha_468

ハサミ男【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『ハサミ男』(殊能将之/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

美少女を殺害し、研ぎあげたハサミを首に突き立てる猟奇殺人犯「ハサミ男」。三番目の犠牲者を決め、綿密に調べ上げるが、自分の手口を真似て殺された彼女の死体を発見する羽目に陥る。自分以外の人間に、何故彼女を殺す必要があるのか。「ハサミ男」は調査をはじめる。
(「BOOK」データベースより引用。)

 

人物紹介

ハサミ男:犯行の特徴から「ハサミ男」と呼ばれている殺人犯。女子高校生を2人殺害。

磯部龍彦:目黒西署刑事課巡査。警視正の命令の下、捜査を進めることに。
下川宗夫:長さんと呼ばれるがその呼び方を嫌う。
村木晴彦クラシック音楽マニア、オーディオマニアとして刑事課で有名。
上井田嘉暁:刑事課長。誰に対してもフェアな態度をとる。
進藤誠斗:若手の刑事。
松元順三郎:人から必要な情報を聞き出すことに長けている。
堀之内靖治犯罪心理分析官職。通称"マルサイ"。

 

感想

今回は犯人と事件を追う刑事たちの視点で描かれるサスペンスミステリです。

犯人は少女を殺害し、首元にハサミを突き立てることから通称"ハサミ男"と呼ばれています。
物語冒頭では、そのハサミ男による犯行と思われる3件目の事件が発生します。

刑事らはハサミ男を追うことに。
しかし、すべてを知る"ハサミ男"には今回の事件が自分による犯行ではないことから、真犯人を追うことに。

事件の真相とは。
果たして、刑事らは"ハサミ男"を捕まえることができるのか、という作品です。

読み終えての感想としては、完敗でしかありません。
ミステリ好きと自称しているくせに、いつになったら犯人に気付けるようになるんですかね。

倒叙ではなく刑事としての視点もたくさん描かれるので、どこか刑事たちに感情移入しながら読んでいました。
事件の全貌が明らかとなった際には、思わず声が出てしまいました(自宅で読んでいる時で良かったです)。

軽く触れておきますと、本作品はいわゆる叙述トリックが仕掛けられています。
ぜひ一読される際には、どういった仕掛けがあるのか用心しながら楽しんでもらえればと思います。

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

 

全体を読み終えての感想(ただの独り言)

終盤になるにつれて、なんて頼りになる刑事たちなんだ!これで今回は解決してハッピーエンドだな!!と思っていましたが、見事に打ち砕かれてしまいました。

叙述トリックも見抜けませんでしたし、事件の真相もさっぱりだったので完敗です。

読了後はどこか後味が悪いのが本作品の一つの魅力かと思います。
事件を解決したと思っている刑事たち。方や、犯行を予兆するような演出。

全てを知っている読者だからこそ味わえる余韻ですね。
今後どうなっていくんでしょうかね。
バッドエンドを匂わせるような描写には思わずゾッとしました。


何を伝えたかったのか(これもただの独り言)

"ハサミ男"ってどうしてあそこまで自殺に固執していたんですかね。
医者として存在するぼくが、殺人犯としての私を殺すために自殺へ執着していたとかですかね。

なんでだろうなーとぼんやり考えていましたが、私にはわかりませんでした。
有名なミステリですので、何らかのタイミングで解説に触れてみようと思います。

作中で出てきた私の好きな表現を紹介します。

「おまえに求められているのは、俺と同じ直感を身につけることじゃない。おまえ自身の物の見方を貫くことだよ」
(本書より引用。)

この表現があったからこそ磯部は真犯人の下に行くことができたのでは?と思うと同時に、"ハサミ男"事件の解決には至らなかったということの不甲斐なさを感じます。

叙述トリックとして楽しめるだけでなく、暗い余韻を味わえる良い作品だなと思いました。
20年近く前に出版されたはずですが、今読んでも楽しめますね。

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。