活字紀行

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俺ではない炎上【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『俺ではない炎上』(浅倉秋成/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

ある日突然、「女子大生殺害犯」とされた男。既に実名・写真付きでネットに素性が曝され、大炎上しているらしい。まったくの事実無根だが、誰一人として信じてくれない。会社も、友人も、家族でさえも。ほんの数時間にして日本中の人間が敵になってしまった。必死の逃亡を続けながら、男は事件の真相を探る。
(本書より引用。)

 

人物紹介

住吉初羽馬:"PAS"という社会派サークルに所属する大学生。
山縣泰介:大帝ハウスの営業部長。SNSを通じて殺人の冤罪をかけられる。
山縣夏美:山縣泰介の娘。SNSを通じて成人男性を会おうとしたことがある。
堀健比古:万葉町第二公園で発見された死体の犯人を追う警察。

 

感想

phone cellphone

今回はSNSを題材とした社会派ミステリです。
タイトルにもあるように、身に覚えのない冤罪から物語が始まります。
内容としては殺人事件です。

実際にSNSの投稿を思わせるような文章も多々登場します。
著名人が炎上した際に、こういう投稿もあるよなぁとリアリティがあります。

事実を確認することなくただ単に非難する者、俯瞰して中立的なコメントを投稿する者、容疑者を懲らしめてやろうとする者。
実際に、作中のような殺人事件を思わせるような投稿がされたらネット上はこのような大混乱となってもおかしくないなと思いました。

冤罪をかけられた山縣泰介。
彼の運命はどうなってしまうのでしょうか。
そして殺人事件の犯人とは何者なのでしょうか。

ミステリとしても楽しめる作品だと思います。
SNSとの向き合い方を見つめ直すこともできるかと思います。
私は改めてSNSの便利さと危険さを実感しました。

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

 

全体を読み終えての感想(ただの独り言)

SNSの炎上。本当に怖いですね。
私自身は著名人ではないため、炎上と言うとどこか遠い世界で起こっていることのように感じていましたが、突然身近なものに感じて恐怖を感じました。

山縣泰介はSNSを利用していないにもかかわらず、こういった冤罪に巻き込まれてしまいました。
小説だから誇張表現なところもあると思いますが、ネット社会の怖さをひしひしと感じました。

この作品は、夏美視点の話が現在ではなく過去を描いていたという叙述トリックであったという認識で合ってますかね?
後半に行くにつれて違和感が生じてきて、全貌が明らかとなった瞬間は爽快でした。
犯人像は全く予想できませんでした

さて、全体を読み終えての感想ですが、私には少々物足りなかったです。
犯人の動機や初羽馬視点の後日談がもう少し知りたかったです。
犯人は殺人事件を実行してしまうまでの嫌悪感がそこまであったのでしょうか。

私としては、事件後の話がもっと読んでみたかったです。
山縣泰介の奮闘ぶりには非常に満足でした。
彼がこの事件を経て、人相に変化があってよかったと思います。


何を伝えたかったのか(これもただの独り言)

浅倉秋成さんは社会派ミステリを多く手掛ける印象がありますが、何かと考えさせる余韻がありますよね。
今回であれば、SNSや人との付き合い方を考えさせられました。

ネットを通じた炎上ということもあってSNSに焦点が当たりがちだと思いますが、人との付き合い方にも思うこともありました。
山縣泰介を例にすれば、家族は仕事の対人関係には何ら問題がないと思っていたが、改めて人に聞いてみると問題が出てくるわ出てくるわ。

住吉初羽馬を例にすれば、あくまでも自己満足でサークル活動を行っていた。
サクラからこう言われるシーンがありました。

すべての議題の前提が、『どうして自分たちは悪くないか』だったからですよ。
(本書より引用。)

社会を批判するようなサークル内容でしたが、読んでいる私までハッとさせられました。

再三話が戻りますが、作中で出てくるような炎上事件に対して一方的に批判意見を投稿する人にも通ずるものがありました。
当事者ではないから、決して事件の真相がわかるわけではないのに、どうして一方的に批判できるのでしょうか

どこか、SNSの便利さよりも怖さを感じる一冊でした。
夏美が幼少期にネットの人と会おうとして事件に遭いかけたことも怖いですが、自分には関係ないからこそ何を言ってもいいという昨今の風潮がより怖くなりました。

浅倉秋成さんの作品では、こちらが一番好きです。
個人的に、就職活動に対して思うことがたくさんあった時期に読んだこともあり、非常に共感したのを覚えています。

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今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。