活字紀行

自分自身に満足を。つらつらと書評ブログ。Twitter@sh1roha_468

傲慢と善良【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『傲慢と善良』(辻村深月/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

婚約者が忽然と姿を消した。その居場所を探すため、西澤架は、彼女の「過去」と向き合うことになる―。作家生活15周年&朝日新聞出版10周年記念作品。圧倒的な“恋愛”小説。
(「BOOK」データベースより引用。)

 

人物紹介


西澤架:輸入業の代理店を経営。突如、行方の分からなくなった婚約者を追うことに。
坂庭真実:架の婚約者。先日、英会話教室の事務を退職した。

感想

今回は一組の恋人を描いた恋愛小説です。
恋愛とは言っても、結婚や婚活といった要素が色濃く描かれています。

私としては少々耳が痛いなぁと思う部分も・・・。
おおまかな流れとしては、架の婚約者である真実の行方が分からなくなってしまい、真実の行方を追う所から始まります。

真実にはストーカーがいると相談を受けていた架。
きっとそのストーカーに連れていかれたのではないか?と話が展開していきます。

彼女は無事なのか。
その結末は、ぜひ読んで確かめてほしいと思います。

読み終えての感想は、耳が痛いだけでなく色々と考えさせられるものでした。
結婚や婚活だけでなく、生きることの難しさを痛感させられました。

ぜひ皆さんも、"ピンとこない"という感覚が何なのか考えてみてほしいです。
そして、傲慢と善良とは何を意味するのか、自分自身はどうなのか。
そういった内面に目を向ける良いきっかけになる一冊だと思いました!

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

 

全体を読み終えての感想(ただの独り言)

なんだか、結婚に対して少し背中を押してもらえた気がします。
私のような未婚の人にも既婚の方にも何かしら影響のある一冊だったのではないでしょうか。

なんといっても心理描写が圧巻ですね。
前半は架視点、後半では真実視点で話が展開されていますが、お互いここまでのことを考えているとは。

実際に人間ってこれと同じくらい?に多くのことを考えながら生活してるとは思いますが、他人の考えなんて理解できなくない?と思ったのが正直なところでした。

きっと無意識のうちに、相手は自分のことを理解してくれているのであろう、と考える。
これがまさに”傲慢”なことなんですね。

作中の結婚相談所ではこのような表現がされていました。

皆さん、謙虚だし、自己評価が低い一方で、自己愛の方はとても強いんです。傷つきたくない、変わりたくない。―高望みするわけじゃなくて、ただ、ささやかな幸せが掴みたいだけなのに、なぜ、と。
(本書より引用。)

なんだか、共感してはいけないような後ろめたさがあるものの、意識せずとも思っているんでしょうね。

結婚相談所で聞いた話でしたが、日常生活にも当てはまる思いあたりがいくつもあって、私って嫌な人間だなぁってちょっと思いました。

人付き合いってわからないことばかりだし、他人に流されて人生を左右されることなんていくらでも起こりうる。
本当に、生きていくことって大変だな。


何を伝えたかったのか(これもただの独り言)

傲慢と善良。
架視点から見た真実には少々理解ができない点が多々ありましたが、彼女も苦しんでもがいていたんですね。

架から見た善良さ。真実自身の中にある傲慢さ。
そういった対比があるからこそ、秀逸なタイトル名だなと思わされました。

作中でも出てきた、似たタイトルである"傲慢と偏見"とは違った良さがありました。

思わず、一度本を閉じてここ最近の生活を振り返るきっかけとなってのは次の表現です。

 

しかし、この世の中に、「自分の意思」がある人間が果たしてどれだけいるだろう。
(本書より引用。)

なんとなくみんながそうしているから。親に言われたから。
周りで結婚している人が多くなってきたから。

そう知らず知らずのうちに誰かの意思を自分の意思だと勘違いしているんでしょうね。
実際に、私が本書を読もうと思ったきっかけも偶然Amazonに出てきてレビューが高かったから、以前読んだ辻村深月さんの小説が好きだったからでした。
はたして、これは私の意思だと言えるのでしょうか。

何気ない日常ですが、自分の意思をもって行動できることがいかに難しいのか。
誰かの意思を自分の意思だと誤認しながら、密かに傲慢さを携えながら私たちは生きていくしかないんでしょうね。

架と真実が最終的にはハッピーエンドで良かったです。
彼らの結末にも、どこか勇気づけられたものがあります。

 

うまくいくのは、自分がほしいものがちゃんとわかっている人です。自分の生活を今後どうしていきたいかが見えている人。ビジョンのある人。
(本書より引用。)


今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。