こんにちはしろはです。
今回は『君の話』(三秋縋/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。
あらすじ
二十歳の夏、僕は一度も出会ったことのない女の子と再会した。架空の青春時代、架空の夏、架空の幼馴染。夏凪灯花は記憶改変技術によって僕の脳に植えつけられた“義憶”の中だけの存在であり、実在しない人物のはずだった。「君は、色んなことを忘れてるんだよ」と彼女は寂しげに笑う。「でもね、それは多分、忘れる必要があったからなの」これは恋の話だ。その恋は、出会う前から続いていて、始まる前に終わっていた。
(本書より引用。)
人物紹介
天谷千尋:大学生。<レーテ>と呼ばれる記憶を消す義憶を買う。
夏凪灯花:千尋の記憶の中にのみ存在する幼馴染。
感想
今回は義憶と呼ばれる、自分が欲する仮想の記憶を買うことができる世界の中で、二人の男女を描いた青春小説です。
あなたにも、こういう記憶があったのなら、この記憶が無かったら、と思うことはありませんか?
作中では、理想の妻、理想の子供、理想の青春時代といった義憶を手にする描写があります。
テーマとしては恋愛と記憶でしょうかね。(そのままですが。)
こういった理想の記憶を焦がれる要因として、このような表現がされていました。
最初から手に入らないとわかっていたものは、簡単に諦めがつく。しかし、あと一歩で手に入れられそうだったものは、いつまでも未練が残る。
(本書より引用。)
まさにこれですよね。
あの時に勉強をもう少し頑張っていたら、あの人とあんな別れ方をしなければ、あの頃にもっと練習をしていれば。
そういった思い出がある方にはとても刺さる一冊ではないでしょうか。
お互いに虚構の存在だからこそ惹かれあう。
実際には無いだろうとは思いつつも、どこかにこういう相手がいるのではないかと言う気持ちになります。
お察しの通り、ファンタジー要素が強めとなっておりますのでそういうものが受け入れられる方にはおすすめです。
若い男女が描く恋愛模様を楽しんでもらえればと思います。
きっと、どこか懐かしい気持ちになれると思います!
ネタバレありのコメント
これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!
全体を読み終えての感想(ただの独り言)
結果として、千尋と灯花は一緒にいられなかったわけですが、二人が共に過ごした日々はなんと美しいのでしょうか。
偽りの関係から始まったものの、お互いを認めて本当に良かったと思います。
序盤で、灯花が作った料理を躊躇なく捨てる千尋は少々嫌でしたが・・・。
あと、どんだけ千尋は酒とカップラーメンだけの日々を過ごしているんだ、と結構引きましたよ。
だからこそ、灯花との出会いを経て、酒を断ち自炊をするようになる様には少々感動しました。
酒に関してはこんなことも言ってましたね。
気持ちよく酔っ払っている僕と二日酔いに悩まされている僕は別人であり、一方の学習結果はもう一方には反映されない。一方の僕は酒の楽しさだけを学び、もう一方の僕は酒の苦しさだけを学ぶ。
(本書より引用。)
いやー、これわかるわ。
なんで二日酔いを経験して二度と飲まねえ!となってもきっかけがあれば飲んでしまうんでしょうかね。
お酒もほどほどにしようと思いました・・・。
何を伝えたかったのか(これもただの独り言)
義憶という、現実にはないものが取り上げられていた本作品ですが、いつの日かこういったことも実現されるのでしょうか。
実現されたら色々と倫理的に問題がありそうですが、こういう理想の記憶にはちょっと憧れますよね。
言い方を変えてしまえば、現状では過去の記憶を変えることはできないのでこれからの人生をどうしていくのか、それが大事であるということなんですかね。
過去にすがったって何も解決しませんし、戻れるわけでもないですもんね。
ファンタジーな本作品から現実に戻ってくると、やるせない気持ちにもなりますが、これからをどうしたいのか考えていきます。
もう何を言っているのかわからないので今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。