活字紀行

自分自身に満足を。つらつらと書評ブログ。Twitter@sh1roha_468

スモールワールズ【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『スモールワールズ』(一穂ミチ/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

夫婦円満を装う主婦と、家庭に恵まれない少年。「秘密」を抱えて出戻ってきた姉とふたたび暮らす高校生の弟。初孫の誕生に喜ぶ祖母と娘家族。人知れず手紙を交わしつづける男と女。向き合うことができなかった父と子。大切なことを言えないまま別れてしまった先輩と後輩。誰かの悲しみに寄り添いながら、愛おしい喜怒哀楽を描き尽くす連作集。
(本書より引用。)

 

人物紹介

 

美和:子供ができなく悩んでいる。子供部屋を想定した部屋でネオンテトラを飼っている。
貴史:美和の夫。美和が隠れて貴史の携帯を見ていることを知らない。
有紗:美和の姪。祖父母の家にいるが、時折美和の家にも行く。
笙一有紗のクラスメイト。父親にひどく嫌われている。

 

感想

今回は短編で構成された連作です。
とは言っても、一旦関連無いような話でも何らかの関わりがあります。
一体何が繋がっているのか、そういった点も注目しながら読んでほしい一冊です。

上記の登場人物には、冒頭の『ネオンテトラ』で登場した人物を記載してあります。

短編と言うこともあって、片手間に読むことができます。
活字が苦手な方にもオススメできます。

私は中でも『愛を適量』が一番好きでしたかね。
詳しいことは伏せますが、不器用ながらも次第に変化していく様子が感じられ、どこか明るくなれるようでした。
とは言っても、何事も適量って難しいですね。

余韻に浸れたという意味では、『式日』も良かったです。
先輩と後輩の何気ない関わりから築かれた信頼関係のようなものを感じて、どこか羨ましい気持ちになりました。

少々ゾッとするような話もありますが、その点も含めて読んでもらえればなと思います。
本屋大賞ノミネート作品とのことでしたが、読んで良かったです。

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

 

全体を読み終えての感想(ただの独り言)

ピクニックが怖くて少々ゾッとしましたが、読んで良かったです。
ただ、私には少々読み足りなさも感じました。
短編小説だから仕方ないことだと思いますけどね。

バロック・ホーダウンってなんだ?と思って読了後に調べましたが、デ〇ズニーの曲じゃないですか。
あまり詳しくない私でも知っているような超有名曲でしたね。
いや、この曲が朝飯のタイミングで流れてくるとか個人的にはちょっと騒がしい気が・・・。
秋生が「聞くといい気分になります。」と言うのもわからなくもないですが。

各話の繋がりがわからなくて所々読み直したのはここだけの話です。
最期の話が最初と関係しているとはなかなか気付きませんでした。

その『式日』ではこのような表現がありました。

きょうという一日の終わり、平安の祈り。変えられるものと変えられないもの。変えられたかもしれない過去、変えられなかったかもしれない未来を思い、後輩は飽きもせずに胸を痛めるだろう。
(本書より引用。)


後輩が冒頭の笙一であるとわかれば、彼の未来は読んでいる私でさえ胸を痛めるものがあります。
安易に彼の未来を願うことができないのは心苦しいですね。

何気ない日常を大切にしたいと思える一冊でした。

何を伝えたかったのか(これもただの独り言)

さて、では今回は何を伝えたかったのでしょうか。
まずはこのタイトルではないでしょうか。

スモールワールズ。
直訳すれば、小さき世界。
作中では、各話に何気ない繋がりがあったことからも、思ったよりも世界って狭いんだよって伝えているのではないでしょうか。

ただ、狭いからとは言っても、何が起こるかなんて誰にも予想できないし、時には辛く大変なことも立ちふさがる。
そういう時にそっと手を差し伸べてくれるような人を大切にしたいと思える一冊でした。

過去は考えても仕方ないことだし、未来は誰にもわからない。
世間は広いようで狭いものであり、今起こっている何気ない日常をかみしめたいですね。

私自身も未来を焦がれるのではなく、今ある幸せを嚙みしめます。
過去を考えるのなんて時間の無駄ですもんね。

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。