活字紀行

自分自身に満足を。つらつらと書評ブログ。Twitter@sh1roha_468

大人は泣かないと思っていた【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『大人は泣かないと思っていた』(寺地はるな/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

時田翼32歳、農協勤務。九州の田舎町で、大酒呑みの父と二人で暮らしている。趣味は休日の菓子作りだが、父は「男のくせに」といつも不機嫌だ。そんな翼の日常が、真夜中の庭に現れた"ゆず泥棒"との出会いで動き出し……
(本書より引用。)

 

人物紹介

 

時田翼:耳中市膝差に住む32歳。お菓子作りが趣味。
時田正雄:翼の父親。妻とは離婚し、大酒呑み。
田中絹江:隣に住む婆さん。父とは仲が悪い。
小柳レモン:翼の家の庭からゆずを盗んだ人物。絹江のヘルパーとして来ていた。

 

感想

今回は短編で構成された作品です。
ただ、それぞれの内容が独立しているのではなく、同じ舞台を違った視点から描かれる作品となっています。

舞台としては耳中市膝差という、まさに田舎と言われる場所です。
私自身、こういった場所で暮らしたことはありませんが、ご近所の噂話とかくだらねーなと思ってしまいました。

はい、こんなこと言ってはダメですよね、ごめんなさい(笑)

短編集というだけあって、様々な人の視点で物語が描かれています。
年代や性別、育った環境も違うため考え方が全く異なります。

小説でもこれだけ考え方が違うんだから、現実でも分かり合えない人とは分かり合えなくて当然だよなぁとも思いました。

結局、誰の考え方が正しいということはないと思います。
ただ、それぞれを完全否定するのではなく、そういった考え方もあるのか、自分はこうしたいんだと、冷静に考える視点も必要かなと思いました。

周りがどうであろうとも、自分らしくありたいと思いましたね。

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

 

全体を読み終えての感想(ただの独り言)

男性ならでは、女性ならではの固定概念がこれでもか!とまでに描写されている作品でしたね。
そういった固定概念に苦しめられている、苦しめられた人も多いのではないでしょうか。

昨今では"古い考え方"と揶揄されることも増えてきましたが、こういった立場に苦しめられている方もいるかと思います。

昔からあるしきたりに捕らわれ、苦しんでいる方もいる。
そう思うと、人付き合いって本当に難しいものだなと思いました。

作中で出てきた私の好きな表現を2つ紹介します。

望まない人間に「常識なんてくだらない、もっと強くなれ」と言うのは、それは「はやく結婚しなきゃね」と言うのと同じ価値観の押し付けでしかないのだ。言っていることは正反対であっても、同じ種類の圧力だ。
(本書より引用。)

 

「去っていかれたほうの人間が『忘れる』をやりとげるのは、大仕事です。(中略)治癒後の姿だけ見て『簡単に治ったんだね。じゃ、別にいいじゃない。怪我したことなんか忘れなよ』なんて言うもんじゃないと思いますね」
(本書より引用。)


自分が思うままに、人付き合いや人との別れをコントロールできるのならば楽なことはないですよね。
受け手側が何を思うのか、どんな立場にあるのかを、多少なりとも理解しながら発言するようにしたいですね。

無理なのはわかりきっていますが・・・(笑)

何を伝えたかったのか(これもただの独り言)

では、全体を通して何を伝えたかった作品なのでしょうか。
私なりに思ったことをつらつらと書きたいと思います。

どんな年齢や立場であろうとも、辛いときは泣いたっていいんだなって。
そういう時に頼れるひとがいることがどれだけ幸せなことなのか。
タイトル名にあるように、大人だって泣いたっていいんです。

何気ない人との関わりを大切にしたいと思いましたね。
そして、結局は未来なんて誰にもわからないものなんだから、立ちふさがった問題に一つずつ対処していきたいですね。
時には頼りになる人の手を借りながら。

なんだか、見栄を張らずに自分らしく生きようと思いました。
読んで良かったです。

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。