活字紀行

自分自身に満足を。つらつらと書評ブログ。Twitter@sh1roha_468

流浪の月【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『流浪の月』(凪良ゆう/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

あらすじ

 

最初にお父さんがいなくなって、次にお母さんもいなくなって、わたしの幸福な日々は終わりを告げた。すこしずつ心が死んでいくわたしに居場所をくれたのが文だった。それがどのような結末を迎えるかも知らないままに――。だから十五年の時を経て彼と再会を果たし、わたしは再び願った。この願いを、きっと誰もが認めないだろう。周囲のひとびとの善意を打ち捨て、あるいは大切なひとさえも傷付けることになるかもしれない。それでも文、わたしはあなたのそばにいたい――。
(本書より引用。)

 

人物紹介

 

家内更紗:幼い頃に父が他界、母は蒸発。
叔母のところに預けられたが、近所で噂になっていたロリコンについていくことになる。
佐伯文:更紗が幼い頃に近所でロリコンと噂されていた人物。
ひょんなことから更紗と同居することになる。

感想


今回はとある女性が少女時代から成人女性まで、人生の一片を綴った作品です。

少女時代には母親と父親で仲睦まじく過ごす日々が綴られ、突如その生活が壊れます。
叔母さんのところに預けられることとなりますが肩身が狭く、まるで自身の居場所がないように感じる日々を過ごします。

まだまだ幼く、もがき苦しむ様が描かれていきます。
読んでいる分には、声を上げればいいじゃないかと思ってしまいますが、9歳の少女にできることなんてたかが知れていますよね。

更紗は、公園で出会った大学生の文と同居することになります。
文と過ごすようになった更紗は、一見すると幸せに見えますがそんな歪な関係が続くこともありません。

そして、とあることをきっかけにして、文とは離れ離れになり、場面は現在の大人になった更紗になります。

少女時代での事件、そしてそれが現在まで影響を及ぼしている様はまさに現代社会にふさわしいと思いました。

発展したデジタル社会ならではの展開、非難、擁護。
そういった生き辛さを感じずにはいられない一冊ではないかと思いました。

ひとえに、更紗が声を上げないのが誤っている、と一言で非難するには違うのではないか。

自分の気持ちは、決して他人に理解してもらえるものではないが、本作品を読んだからには他人にも優しくありたいと思いました。
結局は自分が一番ですけどね。

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

 

他人への同情心

本作品を読んで一番初めに思ったことは、他人に同情できるということは、どんな場合でも良い事なのでしょうか。

私はあなたの味方だから、私はあなたの気持ちがわかるよ、だなんて言葉には何ら意味をなさないこともあるのではないでしょうか。

言い方は良くないですが、相手の気持ちを分かってあげられる自分はなんて美しい存在なのだろうかと、心のどこかでは思っている節があるのではないでしょうか。

作中にはこのような描写があります。

未成年だからといって、なにも守られたりはしないのだ。善人な人たちの好奇心を満たすために、どんな悲劇も骨までしゃぶりつくされる。
(本書より引用。)


可哀想に、大変だったね、と簡単に思ったり伝えたりするのは野暮なのでは。
じゃあどうすればいいんだよって感じですが・・・。

「普通」とか「常識」といった言葉で表してしまえば簡単ですが、つまはじきにされて生き辛い気持ちを感じている人もいる。

昨今では、表現の自由と言われていますが、なかなか難しい問題ですよね。
同情する、害を与えた人を非難するのは簡単ですが、果たしてそれは正しい事でしょうか。

改めて思いますけど、カウンセラーを請け負っている方って本当に凄いですね。
これほど扱いが繊細な職業、なかなか無いと私は思います。

結局は他人の気持ちだなんて完全には理解できませんし、自分の気持ちを一番理解できるのは自身でしかないですもんね。

気休め程度に人の相談に乗るのは、もうやめようかなとまで思いました。
正直、何も言わずに相槌を打つ程度が一番良いのかもしれませんね。

人間の不器用さ

では、結局私たちは一人で生きていくのが一番なのでしょうか。

私は決してそんなこと思いません。
作中にはこんな表現もされていました。

ひとりのほうがずっと楽に生きられる。それでも、やっぱりひとりは怖い。神さまはどうしてわたしたちをこんなふうに作ったんだろう。
(本書より引用。)


人間ってめんどくせーな・・・(笑)
そんなこと思ってはダメですよね、ごめんなさい(笑)

少しでも、自分のことを理解してくれる人は大事にしないとダメですね。

そして、自分もその相手のことを少しでも理解できる存在でありたいですね。
理解できなくても、困ったときだけでも寄り添えるように。

 

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。