活字紀行

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死刑にいたる病【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『死刑にいたる病』(櫛木理宇/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

あらすじ

 

鬱屈した日々を送る大学生、筧井雅也に届いた一通の手紙。それは稀代の連続殺人鬼・榛村大和からのものだった。「罪は認めるが、最後の一件だけは冤罪だ。それを証明してくれないか?」パン屋の元店主にして自分のよき理解者だった大和に頼まれ、事件を再調査する雅也。その人生に潜む負の連鎖を知るうち、雅也はなぜか大和に魅せられていく。一つ一つの選択が明らかにする残酷な真実とは。
(BOOKデータベースより引用。)

 

人物紹介

 

筧井雅也:俗にいう”Fラン大学”で憂鬱な日々を過ごす大学生。
榛村大和:一審で死刑を宣告され、現在控訴中。戦後最大級のシリアルキラー
加納灯里:筧井と同じ大学に在籍。義務教育時代、三年間同じクラスで過ごした仲。

感想

business people

今回は一人の大学生とシリアルキラーに焦点を当てた一冊です。

主人公である雅也は鬱屈とした大学生活を送っていたものの、シリアルキラーである榛村から一通の手紙が届く。
彼とは幼い頃に馴染みがあった雅也だが、面会室では最後の容疑は冤罪だからそれを証明して欲しいと頼まれる。
当時の榛村と関わりのあった人物への聞き取り調査を開始する。

シリアルキラーというだけあって、榛村は明確な悪人です。
殺人の獲物としているのはハイティーンの少年少女。
事件の描写も出てきますので、そういったものが苦手な方はご注意ください。

聞き取り調査の中では多数の人が登場し、誰が誰だかわからなくなるかもしれませんが、ほとんどの人は一度きりの登場となりますのでご安心ください。
セオリー通り、名前が説明あった人だけ覚えておけば問題ないです!

言いたいことはありますが、終盤に進むにつれてゾッとしました。
私は本書のテーマの一つに"洗脳"が挙げられると思いました。
最初は何気なく読み進めていたのに、ふとした瞬間から違和感が見え隠れしている、そんな恐ろしさがこの一冊には表れていたと思います。

あくまでもフィクションだから、と考えれば軽い気持ちで済ませられるのかもしれませんが、実際にこう言ったシリアルキラーによる大量殺人は起こっていますからね。

現在、映画も上映中なようですね。
軽く調べてみましたが、小説とは少々内容が違うとか?
ぜひ、何かの機会に見に行きたいと思いました。
描写がどの程度まで描かれているのか、恐怖心もありますが・・・。

サスペンスが好きな方にはオススメしたい一冊です。
ただ、ミステリーとして楽しみにする一冊ではないかと思いますね。

 

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!


物語の結末

雅也が徐々に榛村の影響を受けていく過程には思わずゾッとしました。
中盤では、榛村が実の父親なのではないか、という展開になったので、そういう素質があったという結末になるのかと思っていましたが考えが浅かったですね。

そして雅也だけでなく加納までもが榛村の影響を受けていたとは。
榛村の執着心、マインドコントロールには恐怖しかありませんでした。

赤の他人からすればどうしてそんな風に洗脳されてしまうんだ?と思ってしまいますが、当人にしかわからないことがあるんでしょうね。

独特な相槌や会話、視線、助言。
そういったカリスマ性が榛村にはあったんでしょうね。
ハイティーンへの驚異的な執着心にも背筋が凍る思いでしたが。

家庭環境で人格は育成されてしまうとのことですが、被害者やその関係者となれば擁護なんてできませんよね。

シリアルキラーの小説ってあまり読んだことがありませんでしたが、恐ろしいながらも読む手が止まらない一冊でした。

最後に私の好きな一節を紹介します。

対等にものを言ってくれる人は、人生において重要だよ。人間ってのはまわりの人に突っ込まれたり、笑われたりしながらふるまいを矯正していくのが普通なんだから。友達ってのは、自分を映す鏡だ。
(本書より引用。)

自分の置かれた環境に満足なら大切にしていきたいですね。

北九州監禁事件

本書は別件の史実が参考とされているようですが(アメリカのテッド・バンディ?)、私は北九州監禁事件を連想してしまいました。

北九州監禁殺人事件 - Wikipedia

この事件、ご存じの方も多いのではないでしょうか。
マインドコントロールがされており、自らの手を汚すことなく殺人が行われていた。

事件の詳細を読むだけではなんでこんなにも簡単に他人を意のままに操ることができるんだと思わずにはいられません。

本書でも、榛村によってとある兄弟が引き裂かれることになります。
ここで思わず私はこの北九州監禁事件を連想してしまいました。
今一度この事件を読み返してみましたが、なんて恐ろしい事件なんでしょうか。

こういった事件は忘れずに、犠牲となった方々の安らかな眠りを願わずにはいられません。
今よりも平和な世の中になりますように。

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。