活字紀行

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ウィザードグラス【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『ウィザードグラス』(根本聡一郎/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

あらすじ

 

大学生の陽輝の下に、ずっと連絡のとれなくなっていた兄から、突然荷物が届いた。中身は、見慣れない眼鏡型のデバイスタブレット。説明によると、それは他人の検索履歴を見ることができるAR機器「ウィザードグラス」だった。なぜこんなものが存在するのか、そしてなぜ自分の下に送られてきたのか。陽輝は次第に、ウィザードグラスをめぐる事件へと巻き込まれていく―“1億総監視社会”の恐怖と希望を描き切った意欲作!
(BOOKデータベースから引用。)

 

人物紹介

 

高峯陽輝:大学生。軽音サークルで幽霊部員と化している。
那月から"Wizard Glasses"という他人の検索履歴が見えるメガネが送られてくる。

天瀬那月:Globe社に勤めていた。陽輝の兄だったが、親の離婚により離れ離れとなる。

黒須壮平:陽輝と同じ文学部の友人。見かけによらずオタク趣味をもつ。
諸星大河:軽音サークルでパンクロックバンド"Riot Lion"のボーカル。スマホをもたない。
霧島千晶:"PRISM"のボーカル。

感想

今回はスマホSNSを題材としたSF作品です。

陽輝は兄の那月から、携帯端末の個人情報を覗ける"Wizard Glasses"をもらうことになります。

那月からは正しいことに使ってくれと伝えられ、最初は痴漢を撃退することに成功。
陽輝は"Wizard Glasses"の恐ろしさを理解しながらも、このデバイスが持つ性能を理解するにつれて徐々に事件へと巻き込まれていく。

正に、今のスマホ時代を象徴するような一冊でした。
他人から検索履歴を除かれていると思うと、良い気持ちはしないですよね。

でももしかしたら、誰かに見られていてもおかしくはない。
それほどに、企業の力は強大で一個人にはどうすることもできない。

もう私たちはこの情報社会からは抜け出せないほどに依存してしまっているんですね。
作中で出てくる他人批判や承認欲求の体現。
そのリアリティだからこそ、どこか近年の異常さが伝わってしまいました。


近代社会を体現した一冊で、非常に読みやすかったです。
私のように、SF作品が好きな方にはたまらない作品だと思います!

 

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

物語の結末

公安2人の圧倒的な頼り強さ。
この2人がいなかったら終わっていたのでは?と思う場面ばかり。

そして、謎だらけだった那月も博識な人物でしたね。
G○○gleの元社員だけあって、非常に頼もしかったです。

陽輝と那月。
親の離婚によって離れ離れにはなってしまったが、兄弟の計り知れない信頼関係。
陽輝にしかわからないメッセージを書き残し、那月のメッセージをくみ取る陽輝。
どこか懐かしさを感じさせる熱い展開に心が躍りました。

意外と本編に絡まなくて驚いたのは、霧島千晶という人物。
協力するとか、事件のヒントになるやり取りがあるのかなと思っていましたが、陽輝が察して終わるとは。
個人的には、事件解決後に大学の知人たちとの後日談がもう少し欲しかったです。

諸星大河という人物は、作者が伝えたいメッセージを表しているのかもしれませんね。
このまま何の迷いなく情報社会に身を投じていて良いのかと。

あと、最後に登場したジャーナリズム4という団体は、最後に裏切るのではないかと勘繰っていました。
ごめんなさい(笑)ただの善人集団でした。

近年のスマホSNSの便利ながらも恐ろしさを暗示する一冊でした。
読んで良かったです。

スマホ普及率

現代のスマホ普及率ってどの程度なんだろうと疑問に思って調べてみました。

総務省|令和2年版 情報通信白書|情報通信機器の保有状況 (soumu.go.jp)
(総務省HPより引用。)

こちらの資料によると、ここ10年(2009年から2019年)で各家庭の普及率は10%以下から83.4%に増加、個人の普及率は2019年段階で63.4%とのことです。

今は2022年ですので、同じようなペースで増加していると仮定すると、各家庭ではおよそ90%、個人では70%とかになりますかね。

そう考えると本当に高いですね。
ほんの10年前からは想像できなかったほどの普及率です。

実際に、私も突然スマートフォンがない生活をするとなったら?と考えると色々と苦労することがありそうです。

スマホが普及する前まではどんな生活をしていたんだ?と考えてしまうほど、生活の中心にこのスマートフォンというものは鎮座しています。

便利であるものの、依存しきってしまっている現状にはゾッとするするものがあるのは私だけでしょうか。

私が中高生だったころは今ほど普及していませんでしたが、あの頃にスマホがあったら勉強習慣とか崩れていたでしょうし、友人との関係もまた変わっていたんだろうなと思います。

以前、書籍のスマホ脳を読んだ時にも、この手軽なスマホという媒体の恐ろしさを感じさせられました。
だからといって、読了後に生活が変わったわけでもないので、依存ってなかなか抜けられませんね。

興味のある方はこちらもぜひ読んでみてください。
スマホとの付き合い方を見つめ直すきっかけになるかもしれませんよ。

スマホが普及する前は何をして時間を過ごしていたんですかね。

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。