活字紀行

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四月になれば彼女は【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『四月になれば彼女は』(川村元気/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

恋愛なき時代のベストセラー恋愛小説、ついに文庫化!
精神科医・藤代に大学時代の恋人から手紙が――失った恋に翻弄される十二か月。『世界から猫が消えたなら』『億男』著者の恋愛小説。
(本書より引用。)

 

人物紹介

藤代俊:大学では写真部の副部長を務めた。現在は精神科医
伊与田春:藤代の後輩として写真部に入部。当時は藤代と恋人関係にあった。
ペンタックス:写真部の部長。ペンタックスとは藤代が命名したあだ名。
大島:写真部のOB。いつも左肩が少し下がった猫背で歩く。

坂本弥生:藤代の婚約者。職業は獣医師。
坂本純:弥生の妹。アルバイトをしながら様々なブランド物を身に着ける。
松尾:純の夫。公立高校に勤める数学教師。
奈々:藤代の後輩の医師。

 

感想

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今回は恋愛を大きな題材とした作品です。

主人公である藤代が大学生時代の話、精神科医となった現在の描写から物語が展開されていきます。

個人的に、私はカメラの知識が全くなかったので現像の仕方など、とても勉強になりました。
楽しそうに風景画を撮っている描写を見ると、私自身も写真を撮りたくなりましたよ。

 

学生時代の部活動は本当に楽しそうでした。
思い出してもしょうがないですが、学生時代特有の何でもできる日々を思い出して懐かしい気持ちになりました。

さて、本作品は恋愛や結婚が大きなテーマになっていると思うのですが、率直に言いますと何が正しいのかわからなくなりました(笑)

これまでぼんやりと描いていたものがひっくり返されて壊された気がします。
恋愛は良いもの、素晴らしいもの、と考えている人にはあまり向いてないかもしれません。

人と恋愛をするということ、結婚して共に余生を過ごすということ、を考えるきっかけになる一冊だと思います。

ぜひ機会があれば読んでみてください。

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

 

恋愛とは

読了後に最も感じたことは、恋愛って何なんだろうということでした。

これまで私はどこかで恋愛は美しく良いものだと何となく感じていました。
ただ、読了後にはそういったことがボロボロと崩れてしまいました。


藤代も悩んでいたのだな、と思う節が色濃く表れています。

思えば藤代は、ハルと別れてからずっと、なにが好きなのかを探していた。弥生とともに嫌いなものを見つけていくことで、藤代は自分の居場所を見つけていくことができるような気がしていた。
(本書より引用。)


え?恋愛とかいうもの、難しすぎませんかね?
深く考えすぎなんでしょうか。

私の好きなライトノベルでもある通称"俺ガイル"でも共依存という表現が使用されます。
読んでいた当時も、じゃあ何が正しいんだ?と思考がぐるぐるしていたのを思い出しました。

自分を大切にするだけでなく、相手を尊重し思いやること。
人の関係とは、不器用ながらもどこか美しさを感じさせるものだと思いました。

ハルという人物

ハルは作中終盤まで、手紙という形でしか登場しませんでした。
そしてハルは病気ですでに他界していることが判明します。

驚きも大きかったですが、ハルの手紙には考えさせられるものが多々ありました。

以下に思わずうなった表現を2つ紹介します。

わたしは、わたしに会いたかった。あなたのことが好きだった頃のわたしに。
(本書より引用。)

わたしは愛したときに、はじめて愛された。それはまるで日食のようでした。「わたしの愛」と「あなたの愛」が等しく重なっていたときは、ほんの一瞬。
(本書より引用。)


なんか、本当に今までの"恋愛"という概念が崩されたような気がしました。

特に響いたのはこの恋愛は日食のようなものという捉え方。
いくらお互いを理解したとしても、結局は他人でしかない。
そして、あの頃こうしていれば良かったと考えたところで取り返しはつかない。

恋愛や結婚とは良いもの、と考えがちですがそんなことないなと思わされてしまいました。

過ぎ去って、手が届かなくなっても、後悔しない日々を過ごすために。

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。