活字紀行

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七回死んだ男【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『七回死んだ男』(西澤保彦/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

あらすじ

 

幾度も繰り返される殺人。殺されるのはいつも渕上零治郎。それは、現実の出来事。だが、それを認識できるのは孫の久太郎だけ。時間の“反復落とし穴”に嵌まり込んだ久太郎が、祖父の命を救うべき孤軍奮闘するが…。
(BOOKデータベースから引用。)

 

人物紹介

 

大庭久太郎:加美寿の息子。キュータローと呼ばれるが、本名はヒサタロウ。
"反復落とし穴"と呼ばれる、突如として同じ日を9回繰り返す不思議な体質をもつ。

渕上零治郎:エッジ・アップグループの社長。
跡継ぎとして胡留乃の養子に誰を迎えるか考えていた。

  胡留乃:零治郎の娘、次女。姉妹の中で唯一零治郎の面倒を見ていた。
大庭加実寿:同じく零治郎の娘、長女。息子は富士高と世史夫と久太郎。
鐘ヶ江葉流名:同じく零治郎の娘、三女。娘は舞とルナ。
槌屋龍一:零治郎の秘書兼運転手。
友理絵美:胡留乃の秘書。

感想

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今回は不思議な体質をもった一人の高校生の周りで起こるSFミステリーです。

主人公である久太郎は"反復落とし穴"と呼ばれる体質をもっています。
これは、頻度に差はあるものの、一度その穴に入ってしまうと同じ日を9回繰り返すというものです。

大のSF好きの私はこの説明の段階で、この本を読むことに選んで良かったなと思いました。

そしてタイトル名にもあるように、ある人物が作中で7回死亡することとなります。
あらすじにあるので言ってしまいますが、祖父である零治郎が毎回死亡します。
繰り返しのうち、最初と最後以外は死ぬんだろうなぁ、とやんわり想像しながら読んでいました。

背景としては跡継ぎ問題となりますので、人間関係のドロドロさも描かれています。
また、人の死が絡んでいるので暗い話ではないか?と思いがちですが、終始悩みながらも楽しく読むことができました。

家族や親戚ならではのやり取りも描かれているので、どこか懐かしい気持ちにもなれます。
少々、性格にクセのある人物ばかりですが。

人の名前が覚えにくい事や、読点がやたらと少ないな?と少々文章にクセはありますが、読みにくいといったことはなかったです。

物語の終盤ですべての謎が解ける感覚は、爽快以外の何物でもありませんでした。

SFだけでなく、ミステリーも読んでみたいという方にオススメしたい一冊です。

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

物語の結末

最終的には零治郎の死因が明らかとなり、零治郎の死は回避することができました。

繰り返しの真相、零治郎の死因等、私の想像とは全くかけ離れたものでした。
今回のミステリーも完全敗北です・・・(笑)
キュータローと一緒に混乱しっぱなしでした。

問題が解決したよ、やったね!!という描写になっても、新たに気にかかる点が出てくるのが本当にすごいなと思いました。

読了後は、なるほどなぁとすべてが解決してすっきりしました。
跡継ぎ問題はさらに複雑化していましたが・・・(笑)

久太郎は"反復落とし穴"もあって年齢に似つかわしくない説得力がありましたが、友理さんも理解力に富んだ聡明な人だと思いました。

え!今キュータローって言った!?って思うまで私は全然理解できていませんでした。
そこから、全ての点と点が線でつながる感覚は最高でした。

久太郎の人相

いや、大人っぽすぎん??
この"反復落とし穴"があったとはいえ、これが高校生とは。
友理さんから年齢を勘違いされて当然ですよね。

だとしても、久太郎のこの人相がなければ事件はより難解なものでしたよね。
いずれの週でも、久太郎の助言には素直に従う様が描かれていて、実年齢には似つかわしくない説得力が終始ありました。
まぁ、久太郎は同じ日を繰り返しているから当然と言えばそうなんですが。

親戚からすれば、なんでも知っている親戚や弟と思い、少々不気味なレベルですよね。
しかし、彼の行動力と説得力には高校生らしさを感じさせないものがありました。

"反復落とし穴"を経て、達観した高校生をここまで表現しているとは。
本当に高校生か!?と何度思ったことか。

冒頭では、人の名前とか文章表現が少々読みにくいな?と思っていましたが、読んで本当に良かった作品です。
SFミステリーが好きな方には、ぜひ読んでほしい一冊です。

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。