活字紀行

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群青の夜の羽毛布【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『群青の夜の羽毛布』(山本文緒/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

ひっそり暮らす不思議な女性に惹かれる大学生の鉄男。しかし次第に、他人とうまくつきあえない不安定な彼女に、疑問を募らせていき--。家族、そして母娘の関係に潜む闇を描いた傑作長篇小説。
(本書より引用。)

 

人物紹介

 

毬谷さとる:大学在籍中に体調を崩し、現在は退学して家事を担う。聡明で物静か。
毬谷みつる:さとるの妹。さとるとは違って明るい性格の社会人。
母親:さとるのみつるの母親。門限が10時などと厳しい性格。
鉄男:スーパーみやこしで働く大学生。さとると付き合うことになる。

 

感想

building apartment 

今回はとある一家を描いた家族作品です。

結論から言いますと、私には恐怖を通り越して少々気分が悪くなってしまいました。
最初は家族愛を描いた本なのかな?だなんて呑気に考えていた私を一発ぶん殴りたいです。
あらすじを全く読まずに手に取ったのが良くなかったですね・・・(笑)

あらすじにもあるように、母娘の関係に潜む闇が大きな題材となっています。
簡単に言い表すことができませんが、原因の一つに母親が関係していることは明確。
母親を含めて、情景描写にはリアリティが高すぎて、気分が悪くなるほど。

では、どうすればいいのか。そう考えると良い答えが全く浮かばない。
手遅れだと言い切ってしまうのは簡単だが、当事者であったらと考えると、抗わずにそつなく過ごすしかないのではないかと思ってしまうのではないか。

さとるは鉄男と出会ったことで好転するかな?と思っていましたが、問題は非常に複雑。
恐怖心を覚えながらも、物語は、家族はどこに終着するのだろうと読む手が止まりませんでした。

冒頭からカウンセラーを受ける人物の描写で始まりますが、いったいこれが誰視点で描かれているのかがしばらくわからないままで進みます。

読了後に、この各節にあるカウンセラーとの対談を読み直しましたが、
この方の苦悩がひしひしと伝わって来て悲しい気持ちになりました。

家族間の問題は非常に複雑で、外部の人間からは解決することが難しいというもどかしさを感じさせられた一冊でした。
虐待のようなサディスティックな描写も多々ありますので、苦手な方はご注意ください。

 

ネタバレありのコメント

この家族は間違っている、ただどうすれば良かったのかと考えると何もわからない。

母親が原因となっているのは明確だが、彼女自身も苦労していたことが伺える。
自身が苦労した身だからこそ、娘であるさとるとみつるには厳しく指導する。
ただ、そのやり方がほとんど虐待で間違っている。

読んでいる身からすれば、さとるが脱してくれと願うばかりだが、母親からの洗脳から簡単に抜けられない。
幼い頃から、価値観を操作されているとこのような事態を起こしうるのか、と考えると恐怖でたまらない。

 

私は男の子が欲しかったの。女の子なんかいらなかったと。

お父さんと私は他人よ。あなた達は血が繋がっているじゃない。

この二つのセリフは恐ろしすぎてゾッとしました。
でも間違ったことは言っていない。正しい事でもない。
言っちゃダメなことだろ・・・と思いましたが言うのも簡単じゃないなって。

家族という切っても切れない縁は永遠の問題なんだということを痛感させられました。

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。