活字紀行

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教室が、ひとりになるまで【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『教室が、ひとりになるまで』(浅倉秋成/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

北楓高校で起きた生徒の連続自殺。ショックから不登校の幼馴染みの自宅を訪れた垣内は、彼女から「三人とも自殺なんかじゃない。みんな殺された」と告げられ、真相究明に挑むが……。
(本書より引用。)

 

人物紹介

垣内友弘:二年A組。美月とは幼馴染。
白瀬美月:二年A組。三人目の自殺がショックで不登校に。
山瀬こずえ:二年A組。中心生徒でレク企画には積極的。小早川の遺体発見者。
八重樫卓:二年A組。サッカー部所属。
壇優里:二年B組。高井の自殺現場に居合わせていた生徒。

小早川燈花
:奇麗な顔立ちで二年B組の中心的存在。女子トイレで首を吊って自殺。
村嶋竜也:二年A組。元バスケ部のエース。校舎から飛び降りた二人目の自殺者。
高井竜也:二年A組のムードメーカー。村嶋と同じく飛び降りた三人目の自殺者。

 

感想

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今回は学校を舞台としたミステリー作品です。
クラス内から三人の自殺者が出たが本当に自殺だったのだろうか、と物語が展開します。
最初に言うと、超能力じみた内容を含んでおりますので、受け入れられない方はご注意ください。

読了後に一番感じたことは、これ"SPEC"っぽいなって思いましたね。
皆さんは"SPEC"というドラマ(映画も)をご存じですかね?
放映時、私はこのドラマが本当に大好きでした。(年代がバレますねこれ(笑))

本書を読み始めて"受取人"が出てきたあたりで、これは"SEPC"系の作品だ!絶対に私が好きな作風だ!!と思いましたね(笑)

主人公の能力は"嘘を見破る能力"ということで、"SPEC"と比べたら貧弱なものではありますが、主人公が自殺者の真相を追います。
あのドラマが好きだった方はきっと楽しめると思います!

自殺はあっさりと他殺であったことがわかりますし、犯人も序盤で明確となりますが、垣内はどうすることもできない。
タイトルにあるように、本当に教室が一人になるまで殺人は続いてしまうかも?とどこかで感じないではいられません。

SF要素の強いミステリー作品は大好物なので、終始ハラハラと楽しく読めました。

ネタバレありのコメント

読了後、まず最初に思ったのはなんて秀逸なタイトル名なんだと思いましたね。
そして誰もいなくなったを彷彿とさせながらも、別の意味に帰着させる。

読了後はタイトルに思わず唸ってしまいました。
教室が、という"が"の一文字だけでそんな意味があったとは。

学校という逃れることのできないコミュニティの中の生き辛さ。
SF要素がありながらも、リアリティ溢れる心理描写には引き込まれるものがありました。

学校ならではの、あの閉鎖的な空気感を如実に表現した一冊だと思います。

では、檀のしたことは正当化されるものなのか。
決してそんなことは思いませんが、物語後半では垣内の言動に少々共感を覚えてしまったのも正直なところです。

私はそこまで活発的な生徒ではなかったので、このようなレク企画で拘束されてしまうことにどこか窮屈さを感じるタイプだと思います。
だから垣内の気持ちもわかる、だけどここまで事件解明に奮起する姿はどこか格好良い。

もちろん、八重樫がみんなのために盛り上げよう!という気持ちもわかります。
登場人物それぞれに、どこか共感を覚える部分があるので、いったい何が正しいのだろうかとわからなくなりました。

よく言われる"みんな"という特定の人物を示すものではないが明確に存在する概念。
みんなが言ってる、やってると言うのは簡単ですが、本当にそれは正しい事でしょうか。
学生時代にありがちな生き辛さを思い出させてくれました。

読了後はどこか救いのあるフェードアウトとなってホッとしました。
垣内がもがきながらも、自由になれるその日まで応援したいです。

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。