活字紀行

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推し、燃ゆ【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『推し、燃ゆ』(宇佐見りん/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

あらすじ

 

逃避でも依存でもない、推しは私の背骨だ。アイドル上野真幸を“解釈”することに心血を注ぐあかり。ある日突然、推しが炎上し――。(本書より引用。)

 

人物紹介

 

あかり:アイドル上野真幸を推す女子高校生。その真幸が炎上したことで生活が一変。

 

感想

concert singer 

今回はタイトルにある通り、主人公が推していたアイドルが炎上した(燃えた)ことで生活が変わったしまった様子を表した作品です。
芥川賞をとったとのことでいつか読んでみたいなぁと思っていましたが、ようやく読むことに。

正直、私より若い方がここまでの文章表現できるだなんて凄いわって思いましたね。
読み始めて一番最初に感じたことは、これコンビニ人間っぽいなということでした。

コンビニ人間を読んでいる時は、実際にコンビニにいるのではないかと錯覚してしまうほどに情景描写が明確で、ずるずると世界観に引き込まれていきました。

これに対して、本作品は主人公のあかりが多い描く心理描写がこれでもかと表現されています。
何を考えて何を実行し、何ができないのか。

きっと他者とのコミュニケーションが苦手なんですよね。
コミュニケーションのためにも"推し活"をしていたのにこんなことに。
あかり自身の苦しさが痛いほど伝わってきます。

購入時は、え?こんな短い作品なの?と驚いてしまいましたが、これほどまとまっているとは。
個人的にはまだまだあかりの先が知りたかったですが、良い幕引きでしたかね。

ネタバレありのコメント

やはり、あかりは発達障害とかそういったものを抱えた少女なんですかね。
自分だけが周りと同じようにできずに苦しむ描写には考えさせられるものがあります。

心理描写でも、思ったことややっていることが転々としているのは、まさにこの発達障害を表現しているのでしょうか。
深読みかもしれませんが、そうだとしたら本当に凄いなって。

個人的には少々読み足りないボリュームでしたが、今はこれくらいが万人受けするんですかね。
そうはいっても、この短さでありながらも全体のまとまり加減は圧巻です。
良くも悪くも今風な小説ですね。

あかりには自分らしく頑張ってほしいなと思いました。
気付いていないだけで私の周りにもそういったことで悩んでいる方もいると思うので、どこか人との付き合い方を見直す良いきっかけとなりました。

この作品が芥川賞に選ばれた所以が垣間見えた気がしました。