こんにちはしろはです。
今回は『余命10年』(小坂流加/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。
あらすじ
20歳の茉莉は、数万人に一人という不治の病にかかり、余命が10年であることを知る。笑顔でいなければ周りが追いつめられる。何かをはじめても志半ばで諦めなくてはならない。未来に対する諦めから死への恐怖は薄れ、淡々とした日々を過ごしていく。そして、何となくはじめた趣味に情熱を注ぎ、恋はしないと心に決める茉莉だったが……。
(本書より引用。)
人物紹介
茉莉:20歳の夏、10年生きられることのない病気を告げられる。
礼子:茉莉と同じ病気を患っていた。茉莉が20歳の時に逝去。
沙苗:茉莉とは同じ中学の元同級生。趣味のオタク仲間。
和人:茉莉とは小学校の同級生。当時、茉莉に恋心を抱いていた。
桔梗:茉莉の姉。
感想
今回は余命宣告をされた一人の女性が歩む人生を描いた一冊です。
タイトルからも、主人公が亡くなるのだろうなと思いながら読み始めましたが、感情移入しやすい私には少々心に来る心理描写が多すぎました。
主人公の茉莉、そして姉の桔梗。
アウトドア好きな両親が名付けた花由来の名前。
病気を患う前の茉莉は、桔梗と同じように、花のように朗らかな性格だったのだろうと思うとどこか切ない気持ちを感じずにはいられません。
私自身、ジャスミン茶を飲むので、飲むたびにこの茉莉のことを思い出してしまいそうですが・・・。
茉莉はもう恋はしないと思いながらも、和人に惹かれていく。
和人は初恋の相手でもある茉莉と付き合いたいと願う。
和人の優しさ、そして茉莉の強さが様々な場面で伝わってきます。
この作品は茉莉が気丈であろうとしながらも、誰にも言えない不安を抱き続ける。
そんな心理描写には何度も胸に来るような作品でした。
来月には、映画化もされるようですね。
小説ではなく映像で見たい!という方はそちらをぜひチェックしてみてください!
ネタバレありのコメント
各小節の末尾に記載されたポエムのようなものは何だろう?と思いながら読んでいましたが、茉莉の手記だったんですね。
茉莉が気丈であろうとしながらも、周りにはいうことのできない思いを綴っていたと思うと、物語後半では思わず涙腺に来てしまうこともありました。
死にたいと思ったのは、告知をされた時じゃない。汚れていく自分に耐えられなくなった時だ。
なんて切ない表現なのでしょうか。
余命宣告された時はどこか絵空事なんじゃないかと思い、症状が徐々に進行することで現実味を帯びてくる。
そのようなことを表したのではないかと考えると胸が痛くなります。
健康であることがどれだけ恵まれたことなのか。
そんな茉莉が和人とで出会い、病気を隠しながら付き合っていく。
長い人生を背負った人もまたつらいのだと、その時初めて気付いた。(中略)途方もない時間の中を何も指標もなく歩いていかなければならない人の不安も計り知れないのだ。
いやー、この考え方は当人だったとしてもなかなかできませんよ。
闘病されていた著者さんもこのように思うことがあったのでしょうか。
(この著者である小坂流加さんは刊行を待たずして逝去されたようです。)
そう思うと、なんてついつい嫌なことから逃げてしまうことが恥ずかしいとまで思いました。
最後ではありますが、以下の言葉で締めさせていただこうと思います。
わたしを一番大切にできるのは、わたししかいないんだから。
この作品に触れた人が、他人だけでなく自分のことを今よりも思いやれますように。
今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。