活字紀行

自分自身に満足を。つらつらと書評ブログ。Twitter@sh1roha_468

余命10年【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『余命10年』(小坂流加/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

20歳の茉莉は、数万人に一人という不治の病にかかり、余命が10年であることを知る。笑顔でいなければ周りが追いつめられる。何かをはじめても志半ばで諦めなくてはならない。未来に対する諦めから死への恐怖は薄れ、淡々とした日々を過ごしていく。そして、何となくはじめた趣味に情熱を注ぎ、恋はしないと心に決める茉莉だったが……。
(本書より引用。)

 

人物紹介

茉莉:20歳の夏、10年生きられることのない病気を告げられる。
礼子:茉莉と同じ病気を患っていた。茉莉が20歳の時に逝去。
沙苗:茉莉とは同じ中学の元同級生。趣味のオタク仲間。
和人:茉莉とは小学校の同級生。当時、茉莉に恋心を抱いていた。
桔梗:茉莉の姉。

 

感想

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今回は余命宣告をされた一人の女性が歩む人生を描いた一冊です。
タイトルからも、主人公が亡くなるのだろうなと思いながら読み始めましたが、感情移入しやすい私には少々心に来る心理描写が多すぎました。

主人公の茉莉、そして姉の桔梗。
アウトドア好きな両親が名付けた花由来の名前。
病気を患う前の茉莉は、桔梗と同じように、花のように朗らかな性格だったのだろうと思うとどこか切ない気持ちを感じずにはいられません。
私自身、ジャスミン茶を飲むので、飲むたびにこの茉莉のことを思い出してしまいそうですが・・・。

マツリカ - Wikipedia
キキョウ - Wikipedia


茉莉はもう恋はしないと思いながらも、和人に惹かれていく。
和人は初恋の相手でもある茉莉と付き合いたいと願う。
和人の優しさ、そして茉莉の強さが様々な場面で伝わってきます。

この作品は茉莉が気丈であろうとしながらも、誰にも言えない不安を抱き続ける。
そんな心理描写には何度も胸に来るような作品でした。

来月には、映画化もされるようですね。
小説ではなく映像で見たい!という方はそちらをぜひチェックしてみてください!

ネタバレありのコメント

各小節の末尾に記載されたポエムのようなものは何だろう?と思いながら読んでいましたが、茉莉の手記だったんですね。


茉莉が気丈であろうとしながらも、周りにはいうことのできない思いを綴っていたと思うと、物語後半では思わず涙腺に来てしまうこともありました。

 

死にたいと思ったのは、告知をされた時じゃない。汚れていく自分に耐えられなくなった時だ。

なんて切ない表現なのでしょうか。
余命宣告された時はどこか絵空事なんじゃないかと思い、症状が徐々に進行することで現実味を帯びてくる。
そのようなことを表したのではないかと考えると胸が痛くなります。
健康であることがどれだけ恵まれたことなのか。


そんな茉莉が和人とで出会い、病気を隠しながら付き合っていく。

長い人生を背負った人もまたつらいのだと、その時初めて気付いた。(中略)途方もない時間の中を何も指標もなく歩いていかなければならない人の不安も計り知れないのだ。

いやー、この考え方は当人だったとしてもなかなかできませんよ。
闘病されていた著者さんもこのように思うことがあったのでしょうか。
(この著者である小坂流加さんは刊行を待たずして逝去されたようです。)
そう思うと、なんてついつい嫌なことから逃げてしまうことが恥ずかしいとまで思いました。

最後ではありますが、以下の言葉で締めさせていただこうと思います。

わたしを一番大切にできるのは、わたししかいないんだから。

この作品に触れた人が、他人だけでなく自分のことを今よりも思いやれますように。

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。

ペッパーズ・ゴースト【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『ペッパーズ・ゴースト』(伊坂幸太郎/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

中学の国語教師・檀は猫を愛する奇妙な二人組が暴れる小説原稿を生徒から渡される。さらに檀は他人の未来が少し観える不思議な力を持つことからサークルと呼ばれるグループに関わり始め……。(本書より引用。)

 

人物紹介

壇千郷:中学校の国語教師。代々、他人の飛沫を浴びるとその人の未来が見える体質をもつ。
布藤鞠子:壇の教え子。自作の小説を書いて、檀先生に見せている。
ロシアンブル:布藤が書く小説に登場する人物。ネコジゴハンターで悲観的な性格。
アメショー:同じくネコジゴハンターで楽観的な性格。

 

感想

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今回は現実世界での描写、そして小説の物語といった2視点で描かれる話です。
そもそもペッパーズ・ゴーストとはどのような意味でしょうか?

ペッパーズ・ゴースト

劇場などで使用される視覚トリックである。板ガラスと特殊な照明技術により、実像と板ガラスに写った「幽霊」を重ねて見せることで効果を発揮する。(Wikipediaより引用。)

端的に言うと、何もないところであたかもそこで何かが起こっているように視認させること、のようですね。

読了前は全く意味を知らずに読んでいましたが、読んでいる最中になるほどなぁと。

一体どんな結末になるんだろう?とハラハラしながら読めました。
作中に哲学描写が多々出てくる作品は初めて読みましたが、どこか新鮮で面白かったです。

読み始めは、この合間に挟まれる小説の展開が気になるからこっちも別枠で描いてくれよ!!と思いながら読んでいましたけどね(笑)

ロシアンブルとアメショー。
性格は真逆でありながらもどこか見ていて安心する2人組でした。
まさに名コンビと呼ぶに相応しかったです。
伊坂幸太郎さんの作品では、こういった特徴ある2人組の印象がどこかあるのは気のせいでしょうか?

最後に、私の好きな表現をいくつかあったので、何個か紹介します。

スポーツ中に笛を吹いた審判が、「どうして反則になったと思いますか?」と訊ねてきたり、(中略)早く答えを言えよ!と内心で言いたくなるのは想像に難くない。

不幸や恐ろしいことは、予想もしてないところからやってくるんだよ。事前に、こうなったら嫌だな、と心配していたことは意外に起きない。(中略)それは、嫌なこととは言えない。

 

ネタバレありのコメント

主人公がまさか飛沫感染することで未来予知できるとは思いませんでしたよ。
イムリーな話題ですが、今のこのご時世だとできませんよね・・・(笑)

対象人物の未来予知をするためには、手段を選ばずに飛沫感染しに行くんですが、なんだか格好付かないなぁって。
切手の下りとかさすがにびっくりしましたよ。

檀先生も、これまで人を救えずにもどかしい思いをされてきたんでしょうね。
今回は先生の苦労が報われて本当に良かったです。

ロシアンブルも撃たれて死んでしまったのか?と思いましたが、変わらずアメショーと談笑している描写があってホッとしました。

それまでは楽観的だったアメショーが、ロシアンブルを気に掛けるシーンはグッとくるものがありましたね。

最近読みすぎでは?ってほどに伊坂幸太郎さんの作品を読んでいますが、定期的に読み漁りたくなってしまうんですよね。
今回も素敵な作品でした。

これは完全に余談ですが、哲学書って結構面白そうだなと思いましたね。
子どもの頃は絶対に読みたいとは思えませんでしたが、大人になった今なら結構読めるのかも?
まぁ、ニーチェはレベルが高く難解なようですので、まずは簡単そうなものから挑戦してみますかね。

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。

もういちど生まれる【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『もういちど生まれる』(朝井リョウ/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

彼氏がいるのに、別の人にも好意を寄せられている汐梨。バイトを次々と替える翔多。絵を描きながら母を想う新。美人の姉が大嫌いな双子の妹・梢。才能に限界を感じながらもダンスを続ける遥。みんな、恥ずかしいプライドやこみ上げる焦りを抱えながら、一歩踏み出そうとしている。若者だけが感受できる世界の輝きに満ちた、爽快な青春小説。(本書より引用。)

 

人物紹介

汐梨:尾崎という彼氏がいる。風人やひーちゃんと一緒に麻雀をよくする。
翔多:大学入学当初から椿に思いを寄せる。バイトを転々としていた。
美大に通って絵を描く青年。
:現在、浪人生。美人な双子の姉、椿を疎ましく思っている。
:翔多からはハルと呼ばれて慕われる。ダンスの専門学校に通う。

 

感想

harbad university 

今回はもうすぐ20歳になる19歳の大学生に焦点を当てた作品です。
20歳を目前に控えた方に読んでほしいと何度思ったことか。

私には既に20歳は通り過ぎてしまった年代ですが、思わず当時を思い出して懐かしい気持ちになりました。

内容としては、5人に焦点が当てられた短編集となっています。
最初はそれぞれが独立しているのかな?と思っていましたが、それぞれの繋がりが徐々に明らかになってきます。

その話では分からなかった人物の苦悩が別の話でわかると、思わず切ねぇ・・・とつぶやいてしまうほど。

高校生、そして大学生ならではの葛藤が如実に表れた作品だと思います。

純粋であるからこそ、新しく知ってしまうことは時に残酷だったり儚いものだったりしますよね。まさにそんな一冊でした。

私は中でも、『破りたかったもののすべて』が一番好きでした。

ネタバレありのコメント

正に、自分は自分で良いんだよを体現したような一冊。
周りがどうであろうと自分は自分でしかない。

それでも、ふと瞬間に他人と自分を比べてしまう。
そんな生きづらさがひしひしと感じられます。

新しく何かを学ぼうとすることは素晴らしいことでありながらも、どこか残酷な事実をたたきつけることだってある。

純粋であることの奇麗さ、現実という免れることのない事実。
当時の懐かしい気持ちを思い出させてくれるだけでなく、どこか寂しさを感じずにはいられませんでした。

朝井リョウさんの作品である、『桐島、部活やめるってよ』が高校生に贈りたい作品だとすると、この『もういちど生まれる』はぜひとも大学生に手に取っていただきたい一冊ですね。

私自身も当時にこの本を読んでいたら、今以上に思う所があったのではないかと思います。

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。

夜市【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『夜市』(恒川光太郎/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

妖怪たちが様々な品物を売る不思議な市場「夜市」。ここでは望むものが何でも手に入る。小学生の時に夜市に迷い込んだ裕司は、自分の弟と引き換えに「野球の才能」を買った。野球部のヒーローとして成長した裕司だったが、弟を売ったことに罪悪感を抱き続けてきた。そして今夜、弟を買い戻すため、裕司は再び夜市を訪れた――。(本書より引用。)

 

人物紹介

裕司:小学生の頃に夜市に迷い込み、弟と引き換えに野球の才能を買った。
いずみ:裕司とは高校時代の同級生。現在大学2年生。
老紳士:夜市で2人と出会い、案内してくれることに。

:幼い頃、誰も知らない長い路地へ迷い込んだことがある。
カズキ:私の親友。私とその長い路地に行ってみようと提案する。
レン茶店で出会った青年。出口まで案内してくれることに。

 

感想

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夜市、風の小道、共に出口のわからない異世界に迷い込むことになります。
まさにホラー小説と呼ぶに相応しく、恐怖感や不気味さを感じられる作品です。

私自身、ホラーはあまり得意ではないですが、とても楽しめました。
本当に自分がこの異世界に迷い込んでしまったのでは?と手に汗を握りながら読んでいました。

夜市には自分の望むものが売っている。
だけど、何かを買うまでは決して出ることができない。
迷い込んでこの先どうなってしまうのだろう、とハラハラしながら読めました。

風の小道でも時々刻々と追い込まれ、私はどうなってしまうのだろうと考えずにはいられません。

 

ネタバレありのコメント

夜市では弟を失ったものの、いざ現実世界に戻ったら弟はもともと存在していなかった世界線となった。
兄の裕司も本当は弟なんていなかったのでは?と思ってしまうほど。

それでも、どこか罪悪感を感じる日々。
どこか充足感のない日々。
弟も報われない生活を過ごすことに。
彼らの過ごした日々、そしてこれからの生活を思い浮かべるだけで切なくなります。

結末はどこか不気味さを残しつつフェードアウトしていくので、どこか背筋が凍る思いでした。

一緒に行った男の人はどんな人だったっけ。いや、思い出さなくてもいい。(中略)それが彼女に再び巡るそのときまで。

これは成長の物語ではない。何も終わりはしないし、変化も、克服もしない。(中略)私だけではない。誰もが際限のない迷路のただなかにいるのだ。

ブログを書きながらこの結びを改めて読みましたが、何とも言い難い余韻に浸れました。

ホラー小説の中で一番好きな作品かもしれません。
私は異世界というか、SF要素の強い作品が大好きなので。

読んでくださりありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。

52ヘルツのクジラたち【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『52ヘルツのクジラたち』(町田そのこ/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

52ヘルツのクジラとは―他の鯨が聞き取れない高い周波数で鳴く、世界で一頭だけのクジラ。たくさんの仲間がいるはずなのに何も届かない、何も届けられない。そのため、世界で一番孤独だと言われている。自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれていた少年。孤独ゆえ愛を欲し、裏切られてきた彼らが出会い、新たな魂の物語が生まれる。(本書より引用。)

 

人物紹介

三島貴瑚:キナコと呼ばれる。親が長く放置していた祖母の家に引っ越してきた。
少年:キナコが偶然出会った少年。会話することができず、虐待されていた。
村中眞帆(マホロ):家の床張り替えを行った職人。そこから何かと話すようになる。
アンさん:キナコが慕っていた人物。遠くに行ってしまってもういない。

 

感想

sunset beach

今回は本屋大賞を受賞した作品です。
こちらはまだ読んだことがありませんでしたが、遂に読むことができました。

一体、キナコは誰を刺そうとしたんだ?このアンさんという人を刺そうとしたのか?何がきっかけでそんな事態になったんだ?と冒頭から様々な想像をしながら読みました。

何と言ってもこの虐待されている少年。
キナコは52と呼ぶようにしますが(え?番号で人の子と呼ぶの?)、彼の境遇が徐々に明らかとなります。

この少年やキナコの育った境遇は非常に劣悪で、少々手が進まないことも。
本当にこんな状況の人いるのかな?いないといいなぁってなんとなく思いながら読んでいました。

読了後に悪い感じはしないので、その点はご安心ください。
ただ、好き嫌いははっきりと分かれる作品では?と個人的には思いました。

ネタバレありのコメント

意外と愛(イトシ)の母親は悪い人ではなくて誤解では?別人が虐待してるんじゃね?だなんて冒頭では思っていましたが、とんでもない屑で驚きましたよ。

フィクションとはいえ、周りの人間がクズ過ぎてびっくりです。
何はともあれ、読了後は色々と解決して本当に良かった。

とは言え、良くも悪くも今風の作品だなって思いました。
まさかアンさんがトランスジェンダーとは思いませんでしたが、考えさせられる内容でしたね。
最近は性同一性障害とか知的障害を内容に取り入れた本が多いんですかね。
以前紹介した推し、燃ゆでもそのような描写がありましたからね。

sh1roha468.hatenablog.jp


やはり、こういった人たちへの配慮と理解が必要な時代となってきて、この手の題材も増えてきているんですかね。
簡単には理解も解決もしない非常に難しい課題だよなぁ、とこの手の小説を読むたびに痛感させられます。


誰にも聞こえない声で鳴くクジラと、誰にも聞こえない助けを求める人の声。
タイトルの意味が分かるとなんて悲しい事なんだと思わずにはいられませんでした。

最後には全員が報われて本当に良かったなぁと思いました。
アンさんもきっとどこかで見守ってくれていますよね。

汚れた手をそこで拭かない【書評】

こんにちはしろはです。
本年も宜しくお願い致します!!
今回は『汚れた手をそこで拭かない』(芦沢央/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

あらすじ

 

平穏に夏休みを終えたい小学校教諭、認知症の妻を傷つけたくない夫。
元不倫相手を見返したい料理研究家……始まりは、ささやかな秘密。
気付かぬうちにじわりじわりと「お金」の魔の手はやってきて、
見逃したはずの小さな綻びは、彼ら自身を絡め取り、蝕んでいく。
取り扱い注意! 研ぎ澄まされたミステリ5篇からなる、傑作独立短編集。(本書より引用。)

 

感想

今回は短編5つから構成された作品です。
内容としては、日常でも簡単に起こりえるような恐怖体験が描かれています。
結末が想像しにくいことからもミステリー作品となっています。

5つに共通しているのは、とある失敗を犯してしまった人物がこっそりと秘密裏に解決しようとするが、徐々に追い詰められていくという点です。
一部は当人の失敗ではないですが、不気味な演出があります。

あーあ、そんなこと止めておけばいいのにだなんて思いながら読んでいましたが、当人だとしたらそんな冷静でいられないかもしれませんよね。
実際に起こり得る失態だからこそ想像しやすく、ゾッとする体験を味わえるのではないでしょうか。

人間、やっぱ悪いことはするものじゃないですね。

ネタバレありのコメント

読む前からなんとなく読了後は後味の悪いものだろうなぁとは思っていましたが、案の定でした。
実際に私生活でも起こり得ることだからここまでの臨場感がありますよね。

些細な失敗や過ちから徐々に追い詰められ、堕ちていく。
ふと気づいた時には取り返しのつかない事態となっている。
本書は、そんな恐怖体験が5回も体験できますよ(笑)
倒叙トリックとは違った恐怖体験ができました。

"汚れた手"ということが自身の失態を表し、"そこで拭かない"ということがそんな誤った対処法せずに己の失敗を認めるべき、ということを表しているんですかね。
このタイトルの話があるならば、いつか読んでみたいです。

ただ、私には少々内容が物足りない気がしました。
片手間に読む本としては十分すぎるほどに満足感が得られると思います。

悪いことしてしまったら、手遅れになる前に正直でありたいと思いました。
いざという時に、助けてくれる人は必ずいるはずですよね!

死神の精度【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『死神の精度』(伊坂幸太郎/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

あらすじ

 

こんな人物が身近に現れたら、彼/彼女は死神かもしれません──(1)CDショップに入りびたり(2)苗字が町や市の名前と同じ(3)会話の受け答えが微妙にずれていて(4)素手で他人に触ろうとしない。1週間の調査の後、死神は対象者の死に「可」「否」の判断を下し、「可」ならば翌8日目に死は実行される。ただし、病死や自殺は除外。まれに死神を感じる人間がいる。──クールでどこか奇妙な死神・千葉が出会う、6つの人生。(本書より引用。)

 

人物紹介

 

千葉:千葉と名乗る死神。対象者と関わりをもち、その人の死は可か見送りかの判定をする。

 

感想

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今回は人の死に"可"か"見送り"か判定を下す死神の話です。
死神というとちょっと不気味な感じがしますが、もしかしたら現実でも起こっているのかも?と想像を掻き立てられます。

えー、単刀直入に言います。
私、この作品がとても好きです(笑)

著者である伊坂幸太郎さんの作品ってこれまでに何冊も読みましたが、一番好きになったかもしれません。
これまでは砂漠という作品が一番でしたが、超えてきた気がします。
興味のある方はこちらもぜひ!!


死神は無機質でありながらも、どこか感情があるのではないかと錯覚を覚えます。
千葉はただ単に"可"の判定を下すのではなく、しっかり調査を行ってうえで判断しています。
死神たちはこぞってミュージックを好むというのも何だかいいなって(笑)

人間だなんて、いつ死ぬか誰にもわからないことなんだからもっと悔いのないように楽しく過ごしたいと再認識しました。

作中ではこんなセリフもありました。

人が生きているうちの大半は、人生じゃなくて、ただの時間、だ

これ誰の名言なんだろう?(2000年ほど前にいた思想家とのことだったので)と思って読了後に調べましたが、特に出てきませんでした。
作中で出てきたオリジナルの文言でしょうが、とてもいい表現だなと思いました。

本作は短編で構成されているので、活字が苦手な方も読みやすいのではないでしょうか。
人の死といっても、決して重い作品ではないので楽しんでいただけたらなと思います。

ネタバレありのコメント

大抵は"可"の判定をするといっていたのに、序盤からいきなり"見送り"をしたので、これは後々また何かあるのでは?と思っていましたが、期待通りでした。
私はこういう展開が大好物なんですよね。
お、きたきたこれだよこれ、だなんて読みながら嬉しくなりましたよ(笑)

余談ですが、作中で出てきた奥入瀬渓流にはいつか行ってみたいです!
きっと素敵な景色が見えるはずですよね?
もし天候が優れていないようだったら、私は周囲にこの千葉さんのような死神の存在を疑いたいと思います(笑)