活字紀行

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麦本三歩の好きなもの【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『麦本三歩の好きなもの』(住野よる/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

朝寝坊、チーズ蒸しパン、そして本。好きなものがたくさんあるから毎日はきっと楽しい。図書館勤務の20代女子、麦本三歩のなにげない日常。 
(「BOOK」データベースから引用。)

 

人物紹介

 

麦本三歩:司書を務める。周囲からはぼうっとしている、食べ過ぎ、おっちょこちょい、間抜けと評される。

優しい先輩:先輩のうち一人。言葉の通り、快活な性格。
怖い先輩:同じく先輩の一人。三歩の指導係。
おかしな先輩:同じく先輩の一人。三歩からはおかしな人だと思われている。

感想

今回は司書を務める一人の女性が送る日常を綴った一冊です。

視点は主人公である三歩のみとなっており、全体が短編小説で構成されています。
片手間に三歩の生活が覗け、どこか明るい気持ちになれる作品でした。

登場人物は三歩の他にたくさん出てきますが、いずれも直接名前が書かれることはありません。
三歩がその人物に対してどう思っているのか、どういった印象をもっているのか、といったことを元にして人物を表現しています。
そもそも仕事の先輩が優しいだの、怖いだのといった表現がされていますからね。

三歩は感情表現が非常に豊かで、読んでいるだけで楽しくなれました。
だからといって、三歩が何も考えずに生きているのではないという点も良かったです。

二十字以内で説明できる小説はいい小説なのだと聞いたことがある。
(本書より引用。)

 

これ当ブログでも導入してみましょうかね。
私自身、短い言葉で簡潔に説明するのが苦手なのでそういった訓練になるかも。

本作品を表すなら、
何気ない日常に潜む嬉しさに気付く一冊。
とかですかね。

読むだけで明るくなれる一冊でした。
読んで良かったです。

 

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

 

物語の結末

まぁ、今回の一冊は淡々と散歩が過ごす日常を描いた作品ですので、結末も何もないと思いますが、全体を読み終えての感想を。

一番感じた事は、三歩の日々は見ているだけでどこか元気が出て、明日がより良いものへとなったらいいなということでした。
実際に三歩のような人物がいたら、はっきりと好き嫌いがわかれそうだなとは思いましたが、見ていて飽きることはなさそうです。

作中でも、かわいげのある後輩として気遣う優しい先輩、𠮟りながらも三歩のことを気に掛ける怖い先輩、そして三歩のことは苦手な部類に入ると言うおかしな先輩。

このあたりが非常にリアリティで、人付き合いは難しくうまくいかないことがありながらも、人付き合いを断つことも困難。
だからと言って、決して悪い事ばかりではないんだよ、そんな風に感じました。

三歩が一人で過ごす何気ない日常も非常に好きでした。
こうやって文章にしたら私の日常もこうやって色めいて見えるのかな?いや、そんなことないか(笑)と思いながら読んでいました。

自身の何気ない日常を大切にし、明日もきっといい事があるはずと、どこか前向きになれる一冊でした。

好きな表現

個人的に好きな表現を一つ紹介します。

 

楽しみなことがあると考えれば、出勤もチーズ蒸しパンから続いていくバトンタッチなのかもしれない。好きなものがたくさんあるから、布団だけと添い遂げるなんてもったいないから今日も職場に行くことにする。そう思えば、今日これからがなんだか楽しみになってきた。
(本書より引用。)

 

三歩はこうやって日々を過ごしているんだなぁと心から思いました。
自分が嫌いなもの、苦手なことばかり考えるのではなく、自分が好きなものをより際立たせるために、自分がしたくないこともそつなくこなしたいと思いました。

読んでいて明るくなれる一冊でした。

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。