活字紀行

自分自身に満足を。つらつらと書評ブログ。Twitter@sh1roha_468

明け方の若者たち【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『明け方の若者たち』(カツセマサヒコ/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

あらすじ

 

明大前で開かれた退屈な飲み会。そこで出会った彼女に、一瞬で恋をした。本多劇場で観た舞台。「写ルンです」で撮った江の島。IKEAで買ったセミダブルベッド。フジロックに対抗するために旅をした7月の終わり。世界が彼女で満たされる一方で、社会人になった僕は、“こんなハズじゃなかった人生”に打ちのめされていく。息の詰まる満員電車。夢見た未来とは異なる現在。高円寺の深夜の公園と親友だけが、救いだったあの頃。それでも、振り返れば全てが美しい。人生のマジックアワーを描いた、20代の青春譚。
(本書より引用。)

 

人物紹介

 

:妥協や後悔の多い人生を送ってきた大学生。"勝ち組飲み"で彼女と出会う。
彼女:"私と飲んだ方が、楽しいかもよ笑?"と僕に声を掛けた。僕とはよく飲む仲となり出掛けることも。

尚人:僕が入社した会社の同期。事あるごとに僕と彼女、尚人の三人で飲みに行く。

 

感想

tropical beach

今回は一人の青年と一人の女性が描く、切ないながらもどこか儚さを感じる作品です。

 

決してこんな経験はしていないのにどこか懐かしさを感じました。
各省冒頭が僕の回想シーンで始まるからでしょうか。
今の若者風の言葉で言うと"エモい"というやつですね。

これ、20代とか30代には思い当たる節がある作品ではないでしょうか。
決して主人公のような体験はしていないのに心のどこかで思い描く日がある。

主人公の僕は大学生から始まり、社会人へと成長する。
そして、どこかで"こんなはずじゃなかったのに"と後悔する日々を過ごす。

映画化されているようなので、そちらでもまた楽しめそうです。
忘れていた日々を思い出すきっかけになるかもしれませんよ。
そして読了後には、どこか前向きな気持ちになれると思います!

私は過ぎ去ってしまった日を思い出し、あの頃は良かったなぁとテンプレートのようなセリフを吐いてしまいましたが・・・(笑)
私にはとても刺さる一冊で、読んで良かったです。

機会があれば小説だけでなく映画も楽しんでもらえればと思います!

 

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!


物語の結末

主人公は何があって彼女と別れて後悔しているんだろう?と読み進めていましたが、まさか彼女が既婚者だったとは。
そして、それを知っている僕が彼女との関係性を続けているとは。

尚人には本当にそのままでいいのか?のようなことを言われていたようですが、僕は本当に彼女との日々が心地よく楽しくて仕方なかったんでしょうね。

何者にもなれなかった僕を何かにしてくれた彼女。
そう考えると、僕にとって彼女はかけがえのない存在となっていたんですね。

なんか心のどこかでわかるんだよなぁ、と感情移入してしまうのは私の感受性が豊かすぎるからなんですかね?
彼女が既婚者であることを知った際には、なんて酷い奴なんだと思いましたが、別に彼女がそれを隠していたわけでもないし、僕自身もこの関係がいつの日か必ず終わることをわかっていた。

彼女自身も海外赴任でいない夫を僕で埋めていたんでしょうね。
あくまでも代用。そう考えるとやるせない気持ちになりますが、彼らは幸せだったんでしょうね。

なんだか、実際にこんな生活をしている人もいるのかも?と考えてしまいました。
終始、どこか"エモい"作品でした。
読んで良かったです。

思い出の中にある後悔

過去の良い出来事って、どうして懐かしく戻りたくなるのでしょうか。
決して戻ることはできないのに、どうしてあの頃は良かったなぁと口をそろえて言うのでしょうか。
次はこうしよう、次は何かを目指そうと意気込むもののうまくいかないのはなぜでしょうか。

作中であった、ありとあらゆる選択肢を選んで現在に達したのではなく、ありとあらゆる選択肢を捨てて現在に至る。
それなのに、いつだって後悔してしまうのはどうしてなんでしょうね。

僕の後悔には感情移入してしまい、私にも色々な後悔があるなぁと懐かしい気持ちになれました。
個人的に、僕の心理描写には自己投影できるような描写がたくさんありました。

そして、決してあの頃には戻れないのだからと前向きになれた作品でした。
彼女の思い出を引きずり続けていた僕。
最終的には彼女のことを、どこか美しい思い出として昇華できたのかな?と納得できるような結末でした。

映画化されているようですが、映画だとさらに感情移入できるんだろうなぁと勝手に思っていました。
この作品、20代とか30代に刺さる作品だと思いますね。
ぜひ興味があれば映画も見てみてください!

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。