活字紀行

自分自身に満足を。つらつらと書評ブログ。Twitter@sh1roha_468

人の記憶に残しておく,残ってしまうということ。

今回は『記憶翻訳者 いつか光になる』(門田充宏/著)を読みました。

簡単ではありますが,まずは簡単なあらすじ紹介から。

※本文にはネタバレを含む場合がありますので,ご注意ください。

記憶翻訳者 いつか光になる (創元SF文庫)
 

過剰共感能力者とは、他人の感情に共感しすぎてしまう特異な体質のために、社会生活に支障をきたしてしまう人々。生きづらさを抱える彼らの共感能力を生かし、本来はその持ち主にしか理解できない記憶を第三者にも分かるようにする“記憶翻訳”の技術を開発したのが九龍という企業だった。珊瑚はその中でもトップクラスの実力を持つ記憶翻訳者だ。依頼人の記憶に寄り添い、その人生を追体験するうち、珊瑚は幼い頃に失った自身の一部について思いを馳せるようになる──(本書より引用。)

 

珊瑚:過敏共感能力者の中でもトップクラスの実力をもつ”記憶翻訳者”。

孫子:珊瑚の統合サポートシステム。珊瑚からは"孫くん"と呼ばれる。

不二:九龍(クーロン)の社長。完治不能な悪性腫瘍を宣告されている。

眞角那須:専務。

 

今回はSF要素がかなり強い作品です。

物語冒頭から軽い気持ちで読み始めたものの,「ヤバイ,全然わからんぞ??」となってしまいました…。

似たタイトルを見かけた気がするからもしかしてまた2巻目を買う失態をしてしまったのか?と確認するものの,何度確認しても1冊目で合っている様子。

あ,じゃあ私の理解力が足らないだけか!!と冷静に読み進めていく。

最初なんて,主人公はサンゴ礁なのか!とアホなことを考えてました…(笑)

 

主人公の"珊瑚"は"過敏共感能力"と呼ばれる,端的に言えば自分と他人の五感に関する区別がつけられない人にあたる。

通常であれば,目に映るものや体が感じる解釈は違うが,過敏共感能力ではそうはいかない。

他者に異常なほど依存してしまうようになると,社会的に障害だと考えられるほど。

その能力を生かして珊瑚は,感覚情報翻訳者こと"インタープリタ"と呼ばれる他人の思い出やイベントを記録する仕事をしている。

このような感じでしょうか?拙い文章ですが,少しでも伝わっていれば嬉しいです(笑)。

 

さて,本編は短編のような感じでいくつかに話が分かれています。

後半になると登場する登場人物もいるのでそちらも楽しんでほしいです!

"インタープリタ"をしている最中の文章表現には感服しました。

恐怖体験のような思わず読んでいてゾクゾクしたり,思いかけず胸にグッと来たりしてしまう描写があるのでぜひ読んでみてほしいです。

記憶を一つのかたちとして残しておけるって素敵なことだなって。

私も機会があれば楽しい瞬間は映像とか写真に残しておきたいなと思いました!

 

珊瑚から発せられるこってこてな関西弁が心地よい人にとっては良いのではないでしょうか?

私自身,以前は関西に住んでいたことがあるので懐かしい匂いがしましたね。

あー,もう一度読み直したい!!と思わずにはいられませんし,再読したならより理解が深まってもっと好きになりそうです!

続編も出ているのでこちらもどうぞ!私はこれから読みます。

記憶翻訳者 みなもとに還る (創元SF文庫)

記憶翻訳者 みなもとに還る (創元SF文庫)

  • 作者:門田充宏
  • 発売日: 2021/02/12
  • メディア: 文庫
 

 

評価は 4.0/5.0 とさせていただきます。

閲覧くださり,ありがとうございました。

気になった方は是非読んでみてください!

 

ではまたの機会にお会いしましょう! 

才能・努力について考えさせてくれる一冊。

今回は『ゴールデンタイムの消費期限』(斜線堂有紀/著)を読みました。

簡単ではありますが,まずは簡単なあらすじ紹介から。

※本文にはネタバレを含む場合がありますので,ご注意ください。

ゴールデンタイムの消費期限

ゴールデンタイムの消費期限

 

自分の消費期限は、もう切れているのかーー
小学生でデビューし、天才の名をほしいままにしていた小説家・綴喜文彰は、ある事件をきっかけに新作を発表出来なくなっていた。孤独と焦りに押し潰されそうになりながら迎えた高校三年生の春、綴喜は『レミントン・プロジェクト』に招待される。それは若き天才を集め交流を図る11日間のプロジェクトだった。「また傑作を書けるようになる」という言葉に参加を決める綴喜。そして向かった山中の施設には料理人、ヴァイオリニスト、映画監督、日本画家、棋士の、若き五人の天才たちがいた。やがて、参加者たちにプロジェクトの真の目的が明かされる。
招かれた全員が世間から見放された元・天才であること。このプロジェクトが人工知能「レミ
ントン」とのセッションを通じた、自分たちの「リサイクル計画」であることをーー。 (本書より引用。)

 

綴喜文章:小学生で天才小説家としてデビュー。高校生となった今では一冊も出版できていない。

真取智之:高校生にして天才料理人。

秋笠奏子:同じく高校生にして天才ヴァイオリニスト。

秒島宗哉:大学生にして日本画家の天才。

御堂将道:高校生にして天才棋士

凪寺エミ:天才映画監督。

 

今回は若い世代でありながらもある分野で活躍する天才に焦点を当てた作品です。

青春小説でありながらもAIといったSF要素が合わさっています。

あらすじでも紹介した通り,彼らは誰しもが天才と呼ばれたものの,現在は結果を残せていない元・天才。

自身たちが再び天才として活躍するために"レミントン"とよばれるAIの力を借りることに。

11日間の"レミントン・プロジェクト"を通じて彼らは何を得るのかという話ですね。

 

何と言うか,私はこの作品を読んで元気づけられたのが一番ですね。

私自身は彼らのように突出した部分は持ち合わせていませんが,彼らが苦悩する姿には考えさせられるものがありました。

"好きこそものの上手なれ"という言葉がありますが,私はこの言葉がとても好きです。自分にはこれしかないんだ,これを失ったら自分には何もない人間になってしまう,という主旨が作中で登場しますが,自分を追い詰めてしまっても何も生まないなぁと。

その分野でお金を稼いで生計を立てていく,または趣味として楽しむことは全くの別物だと思いますが,前者の方々は本当に凄いなと思いました。

にしても,登場人物は大人っぽいなぁ。元であろうと天才には敵いませんね。

 

私はのらりくらりと暮らして趣味を楽しむくらいが丁度いいなと思いましたね。

これからも好きこそものの上手なれの精神で自分のしたい分野だけ努力します!

 

評価は 4.5/5.0 とさせていただきます。

閲覧くださり,ありがとうございました。

気になった方は是非読んでみてください!

 

ではまたの機会にお会いしましょう! 

人生の迷子になってしまったように感じる方に贈りたい一冊。

今回は『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』(町田そのこ/著)を読みました。

簡単ではありますが,まずは簡単なあらすじ紹介から。

※本文にはネタバレを含む場合がありますので,ご注意ください。

思いがけないきっかけでよみがえる一生に一度の恋。
そしてともには生きられなかったあの人のこと――。 大胆な仕掛けを選考委員の三浦しをん辻村深月氏両名に絶賛されたR-18文学賞大賞受 賞のデビュー作「カメルーンの青い魚」。
すり鉢状の小さな街で、理不尽の中でも懸命に成長する少年少女を瑞々しく描いた表題作。その他3編を収録した、どんな場所でも生きると決めた人々の強さをしなやかに描き出す5編の連作短編集。 (本書より引用。)

今回は5つの短編集から構成された作品です。

どの話も"ここではないどこか"や"ここ"といったことがコンセプトとなっています。

私自身も何か新しいことをしてみたいなぁと時折思うことがあるので,それもある意味では近いのかなぁと思いながら読んでいました。

 

感想としては,あー!どれも切ねぇ,でも良い!!くらいには知能が落ちてました(笑)

そのくらい心にグッとくるものがあるものの良い感傷に浸れる作品でした。

短編集と言いながらも,それぞれの作品にはとある繋がりが仕組まれています。

私は気づくのが随分と遅かったですが,読了後にはあー!もう一回読みたいわ,とこれまた余韻に浸ることができました。

 

短編として楽しみつつも,一冊の作品といて楽しんでいただければなと思いました。

私はこれからもこの著者さんの作品を読んでいきます!

 

評価は 4.5/5.0 とさせていただきます。

閲覧くださり,ありがとうございました。

気になった方は是非読んでみてください!

 

ではまたの機会にお会いしましょう! 

ちょっとした空き時間に気楽に読める一冊。

今回は『余命3000文字』(村崎羯諦/著)を読みました。

簡単ではありますが,まずは簡単なあらすじ紹介から。

※本文にはネタバレを含む場合がありますので,ご注意ください。

余命3000文字 (小学館文庫)

余命3000文字 (小学館文庫)

 

「大変申し上げにくいのですが、あなたの余命はあと3000文字きっかりです」ある日、医者から文字数で余命を宣告された男に待ち受ける数奇な運命とは――?(「余命3000文字」)。
「妊娠六年目にもなると色々と生活が大変でしょう」母のお腹の中で六年も引きこもり、ちっとも産まれてこようとしない胎児が選んだまさかの選択とは――?(「出産拒否」)。
他、「彼氏がサバ缶になった」「不倫と花火」など、書下ろしを含む全26編を収録。(本書より引用。)

今回は5分程度で簡単に読める短編集です。

一冊で26個もの話が読めます。お得ですね(笑)

私は小学生の頃に星新一さんのショートショートにどっぷり浸かっていたのでこういう作品は大好物です。

ちょっとした隙間時間でも気軽に読めるのが最高なんですよ。

 

本作品で私が一番好きな話は"影"という短編です。

こちらはある男性が好きな女性の影を買うというものなのですが,文章表現が悲しいもので何かグッとくるようなものがあります。

たった5分少々で心を満たしてくれる作品は活字嫌いさんにもぜひお勧めしたいです!

 

評価は 4.0/5.0 とさせていただきます。

閲覧くださり,ありがとうございました。

気になった方は是非読んでみてください!

 

ではまたの機会にお会いしましょう! 

洋服の福袋を買ってみた話。

こんにちはしろはです。

今月は年始に初めて買ってみた洋服の福袋についてメモ代わりに書いてみようと思います。

 

私自身,洋服は人並み程度に買うのですが,まぁ昨今の情勢からお店に足を運ぶ機会が減っていたんですよね…。(いつも洋服の相談に乗ってくれる店員さんには感謝しかありません)

そこでよく買うお店だけでなくネット販売を主流とするショップでも福袋を購入してみました。

年明けから販売を開始するものや,コートといった冬場で活躍する洋服を着てもらうためにも12月中には購入が可能になるものと様々です。

 

私は①コートが確定で入っているもの,②完全にランダム,③Tシャツなど肌着が主流となっているもの,等々色々と買ってみました。

買ってみたところ,近年の福袋は売れ残った洋服を福袋として詰めるのではなく,

福袋用の洋服を別途準備して福袋として販売している店舗が多いようです。

ただ,トータルコーディネートとして入っている洋服を合わせて着こなせられるようなセットとなっているケースも。

 

私は結構何でも着るタイプですし,うわこれはちょっとなぁ…と思っても部屋着として利用してしまうので結構アリかなぁって思いました!

また,ファッションとかあまり自信ないなぁ,お店だと店員さんに話しかけられて気を遣って疲れてしまう,といった方には是非お勧めですね。

福袋を買ってみてファッションに興味が出たり,自分はこんな服も似合うんだな?といった意外な発見もあるかも…?

 

以上,2021年の年始に購入した洋服の福袋に関してでした!

興味を持った方がいましたら,新たな可能性を求めていかがですか?

 

では,またの機会にお会いしましょう!

読書好きにはたまらない,一冊で何度も物語を楽しめる一冊。

今回は『この本を盗む者は』(深緑野分/著)を読みました。

簡単ではありますが,まずは簡単なあらすじ紹介から。

※本文にはネタバレを含む場合がありますので,ご注意ください。

 

「ああ、読まなければよかった! これだから本は嫌いなのに!」
書物の蒐集家を曾祖父に持つ高校生の深冬。父は巨大な書庫「御倉館」の管理人を務めるが、深冬は本が好きではない。ある日、御倉館から蔵書が盗まれ、父の代わりに館を訪れていた深冬は残されたメッセージを目にする。
“この本を盗む者は、魔術的現実主義の旗に追われる”
本の呪いが発動し、街は侵食されるように物語の世界に姿を変えていく。泥棒を捕まえない限り世界が元に戻らないと知った深冬は、探偵が銃を手に陰謀に挑む話や、銀色の巨大な獣を巡る話など、様々な本の世界を冒険していく。やがて彼女自身にも変化が訪れて――。 (本書より引用。)

 

御倉深冬:御倉館の管理人である御倉あゆむの娘。

御倉の人間であることを鬱陶しく思うとともに,本が嫌いである。

真白:突如,深冬の前に現れた謎の少女。本の世界での冒険をサポートしてくれる。

 

今回は通称”本の町”と呼ばれる読長町を舞台としたファンタジー要素のある物語です。

御倉館から本が盗まれると呪いが発動することでその本の世界に閉じ込められ,泥棒を捕まえるまでその冒険は終わらないという主旨です。

本嫌いな深冬が物語を理解するために本を読むシーンが何度もあるのですが,本編とは違った世界観を楽しめます。

ただ,私は小さい頃から根っからの本好きだったので主人公の話にはあまり共感できませんでした。

一冊で色々な世界観が楽しめるのはファンタジーならではの良さだなと改めて思いました。

 

評価は 4.0/5.0 とさせていただきます。

閲覧くださり,ありがとうございました。

気になった方は是非読んでみてください!

 

ではまたの機会にお会いしましょう! 

薬物はダメ。ゼッタイ。

今回は『強制終了,いつか再起動』(吉野万理子/著)を読みました。

簡単ではありますが,まずは簡単なあらすじ紹介から。

※本文にはネタバレを含む場合がありますので,ご注意ください。

強制終了、いつか再起動

強制終了、いつか再起動

 

地方から東京の中高一貫の私立中学に編入した加地隆秋(かじ・たかあき)は、勉強の進度に追いつけず、運動神経も悪い自分が周囲から浮いていると自覚している。そんな加地は、家庭教師の大学生、安岡を慕い、自宅に遊びに行くことになった。安岡の部屋で見つけたプラスチックケースから出てきたのはガラスのパイプと苔色の何かだった。加地はすすめられるがまま、大麻を吸った――。 (本書より引用)

 

加地隆秋:身長があるにも関わらず運動神経がないことにコンプレックスを抱く。

転校してきた環境に悩んでいたところ,ひょんなことをきっかけに大麻と出会う。

伊佐木周伍:YouTuber。転校してきた加地の声を聞いてYouTubeの活動に誘う。

麻矢夕都希:2人のクラスメイト。ある時期からYouTubeの活動に参加するようになる。

 

今回は中学生の薬物依存がテーマとなった作品です。

タイトルにもありますように"薬物はダメ。ゼッタイ。"というフレーズを誰しも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?

 

主人公の加地はとある人をきっかけに大麻と出会います。

見てすぐに薬物はやってはいけないものだ,と判断しますが私生活がうまくいっていないことから思わず大麻に手を出してしまいます。

大麻は依存性の低い薬物だから,とどこかで思っていたのでしょうか?

そこから徐々に加地の言動がおかしくなっていきます。

 

大麻は別名"ゲートウェイドラッグ"とも呼ばれ,薬物依存の入り口と称されます。

加地の変貌ぶりには思わずゾッとするような言動もあるのですが,これが薬物依存なのかと思うと恐ろしくてたまりません。

 

YouTuberとかTikTokなど,若者特有のノリが読んでいて少々キツイな…(これがジェネレーションギャップかぁ,年取ったわ)とか思っていましたが満足に読めました。

私自身,タバコは吸わないですしお酒も交流で飲む程度なので依存といった状態がよくわかっていませんが,今一度薬物には手を出していけないと思いました。

 

余談ですが,中学生の薬物経験率っておよそ2%もあるものなんですね。

遠いような存在でありながらもその危険性は意外と近いところに転がっているんだなと。

 

評価は 4.0/5.0 とさせていただきます。

閲覧くださり,ありがとうございました。

気になった方は是非読んでみてください!

 

ではまたの機会にお会いしましょう!