活字紀行

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無人島に生きる十六人【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『無人島に生きる十六人』(須川邦彦/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

日露戦争第一次世界大戦に従軍し、商船学校教授・東京商船学校校長を歴任した須川邦彦による冒険実話。「少年倶楽部」に1941(昭和16)年から翌年にかけて連載。明治32年、帆船・龍睡丸は太平洋上で座礁し乗員16名は無人島に上陸。飲み水を確保し、火を起こし、海亀の牧場を作り食料を確保するなど様々な知恵を出し助け合いながら生き延びる。そしてその年の12月末、救出され無事祖国の土を踏むのだった。
(本書より引用。)

 

人物紹介

 

中川倉吉:龍睡丸の船長。十五人の乗組員と共に無人島で遭難する。
榊原作太郎:運転士。頼りになる参謀。
鈴木考吉郎:漁業長。遠洋漁業調査の第一線の部隊長。

 

感想

water coast

今回はとある無人島で遭難した十六人を描いた作品です。

読了後にあらすじを見て気付いたのですが、これって実話だったんですね。
全く気にせずに読み進めていたので、後で気付いて驚きました。
読んでいる最中はリアリティのある作品だなぁとは思っていましたが、実話となれば印象は大きく変わります。


やたらと読点が多い作風だな?だなんて思っていましたが、読んで本当に良かったです。
所々、古っぽい表現があるので読みにくい点はあると思います。

例としては、
ふかとはサメのことを表し、正覚坊とはアオウミガメのことです。

独特の表現が多々ありますが、昨今の小説ではあまり見られない作風で新鮮味が感じられて良かったです。

無人島で遭難した彼ら

彼ら十六人は無人島に遭難することになるのですが、なんて明るく勇敢なのでしょうか。
このまま無人島生活で本島(日本)には帰ることができないかもしれないのに、それを感じさせることのない明るさ。

十六人全員が、その無人島生活を楽しく過ごす様が想像させられ、読んでいる私までどこか楽しくなりました。

無人島でも悲観的になることなく、勉学に励む描写もありました。
どんな状況だろうと、知らないことは恐れずに聞いて理解したいです。

小さな悩みごとがどこかに飛んでいくような気持ちにもなりました。
漂流ものとは思えないほど終始明るく、非常に楽しく読むことができました。

 

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

 

船長の先頭力

十六人は楽しく遭難生活を送ることになったわけですが、何といっても船長の統率力には目を見張るものがあります。

人の上に立つもの故、悲観的になることなく場の規律を守り、先導していく。
まさに"リーダー像"を指し示した人格でした。

 

船長だけでなく、船員たちもお互いを尊敬し、高めあっている環境は本当に素晴らしい限りでした。

遭難してから2日目の朝、運転士と漁業長、水夫長を起こして各々の決意を表明するシーンが一番好きでした。

アオウミガメ

アオウミガメって絶滅危惧種だったよな?とふと思ったので、現状ではどうなっているのか調べてみました。

小笠原のアオウミガメはなぜ減った?なぜ増えた? | 認定NPO法人エバーラステイング・ネイチャー (elna.or.jp)


こちらの資料を参考にする限り、保護活動の甲斐あって現在では増加傾向にあるようですね。

ただ世界的に見れば絶滅危惧種(EN)に該当するため、油断を許さない状況ではあります。

同じく作中に登場したアカウミガメ絶滅危惧種(VU)に該当するため、こちらも注視しなければならない存在です。

人間一人にできることはあまりありませんが、忘れないで認知できる優しい存在でありたいですね。

 

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。