活字紀行

自分自身に満足を。つらつらと書評ブログ。Twitter@sh1roha_468

『きみと暮らせば』 著者 八木沢里志

今回は『きみと暮らせば』(著者 八木沢里志)を読みました。

簡単ではありますが,まずは簡単な登場人物とあらすじ紹介から。

※本文にはネタバレを含む場合がありますので,ご了承ください。

 

十一歳年の離れた義兄妹の陽一とユカリ。

十年前に陽一の母とユカリの父が結婚したものの,その五年後に両親が他界。

陽一が仕事で生活費を稼ぎ,ユカリが料理を担当しながら2人で暮らしていく。

そんな生活の中,庭にある猫が現れ2人と生活を共にする。

2人と1匹が織りなす何気ない日常の表し,そんな話です。

 

相田陽一:医療品メーカーに勤めながらユカリとの生活費を稼ぐ。

両親が他界した際には親戚の反対を押し切ってユカリの面倒を見ると宣言する。

 

相田ユカリ:中学校に通いながら義母のレシピ帳を参考にしながら料理を担当する。

庭で見かけた猫(後々の種田さん)を飼いたいと思う。

 

今回は義兄妹と一匹の猫が織りなす何気ない日常を描いた話。

はっきり言って,微笑ましいなと思う場面が多すぎてしょっちゅうニマニマしてました…(笑)

この作品を読んでいるときはこのご時世のマスクを付けなければならない風潮に感謝…。

職場で読む機会が多いのですが,はたから見たら完全に危ない人でしたね(笑)

 

なんて言うんでしょうかね,とにかく読んでいて心が温かくなるんですよね。

本当に何気ない日常が描かれているだけなのにあぁ素敵だなと思う場面ばかり。

義兄妹でありながらユカリは兄さんを思い,陽一はユカリを思い…。

うわぁ良いなぁ,と思わず感嘆の声が漏れそうになることがしばしば。

読んでいる方も何気ない幸せを感じることもあるのではないでしょうか。

 

タイトル,表紙絵からは猫に焦点が当たっているのかな?と思いますが,

素敵な家族愛が色濃く表現されています。

まずは何も考えずに一度読んでみて欲しいです。

必ず何かしらホッとこころに刻まれる描写があるのではないでしょうか?

 

評価は 5.0/5.0 とさせていただきます。

閲覧くださり,ありがとうございました。

気になった方は是非読んでみてください!

 

きみと暮らせば (徳間文庫)

きみと暮らせば (徳間文庫)

 

 

ではまたの機会にお会いしましょう!

『レゾンデートル』 著者 知念実希人

今回は『レゾンデートル』(著者 知念実希人)を読みました。

簡単ではありますが,まずは簡単な登場人物とあらすじ紹介から。

※本文にはネタバレを含む場合がありますので,ご了承ください。

 

”私がジャックです”

末期癌を宣告された医師の岬雄貴は酒浸りの生活を送っていた。

ある日,不良から理不尽な暴行を受けたものの生きる意味をくれたと復讐を果たす。

しかしその現場から連続殺人犯”切り裂きジャック”を彷彿させる1枚のトランプが発見される。

岬と”切り裂きジャック”の奇妙な関係が始まるが岬と運命とは…という話です。

 

岬雄貴:外科医として勤務していたものの末期癌を宣告された。

生きる希望を失い,酒に浸った生活を送っていた。

 

南波沙耶:歌手を夢見る一人の少女。

親友の上松恵美と一緒に少々危ないバイトをしていた。

 

切り裂きジャック:ここ半年で十数人の人間を殺害している連続殺人鬼。

何らかの犯罪を犯した人物を殺害し,事件現場には1枚のトランプカードを残していく。

 

今回は複数視点で展開されていくサスペンス小説。

物語がある程度進んだ段階でですが,沙耶には幸せになってくれ…ってずっと思っていました(笑)

まぁそんな感じで感情移入しまくりでしたね!

 

物語中盤や終盤でなされる雄貴と沙耶のやり取りには思わずグッときてしまうようなものがあります。

何とかうまくいかないのかなと思いつつも雄貴のやり遂げるカッコ良さには圧巻です。

終盤の医者ならではの闘い方には思わずスゲェとつぶやくほどです…(笑)

目立つようなキャラではありませんが,雄貴の元恋人兼友人の真琴にもグッとくるものがあります。

医療が関与した作品はどうしてこんなにも”命”の大切さを考えさせてくれるんでしょうかね!

 

評価は 4.5/5.0 とさせていただきます。

閲覧くださり,ありがとうございました。

気になった方は是非読んでみてください!

 

レゾンデートル (実業之日本社文庫)

レゾンデートル (実業之日本社文庫)

 

 

ではまたの機会にお会いしましょう!

『クリムゾンの迷宮』 著者 貴志祐介

今回は『クリムゾンの迷宮』(著者 貴志祐介)を読みました。

簡単ではありますが,まずは簡単な登場人物とあらすじ紹介から。

※本文にはネタバレを含む場合がありますので,ご了承ください。

 

”火星の迷宮へようこそ。”

傍らにあった携帯用ゲーム機が無機質なメッセージを表記する。

辺りを見渡せば一面が鮮やかな深紅色に染まった異様な世界。

指示に従っていると他のプレイヤーと出会い,サバイバルが始まる。

このゲームがゼロサム・ゲームなのか考えながら藍との脱出を目指す…という話です。

 

藤木芳彦(主人公):昨年までは大手の証券会社に勤めていたものの現在は1人の失業者。

目が覚めると一面が鮮やかな深紅色に染まった異様な世界にいた。

 

大友藍:藤木が最初に出会った補聴器を身に付ける女性。藤木と行動を共にすることとなる。

 

今回はSF要素が絡められたホラー×サバイバル主体の話。

最初はおーおー,意外と登場人物が多くて大変だな??と思っていましたが,読んでみればハラハラとさせるサバイバル描写や臨場感に引き込まれていきました。

自分がこんな状況に立たされたら呆然として何もできないだろうなと思ってしまいましたが…(笑)

さも当たり前のように,何もない状況下でも方角や距離を把握できる知識はすごいなと。

 

物語は中盤に差し掛かるにあたって,ホラー要素も追加されてきます。

迷宮と称するだけであって猛獣のような危険生物等々も登場します。

この繰り広げられる狂気のゲームには不気味でありながら惹きつけられるものがあります。

ハラハラとするようなサバイバルを読みたい!という方にオススメです!

 

評価は 4.0/5.0 とさせていただきます。

閲覧くださり,ありがとうございました。

気になった方は是非読んでみてください!

 

クリムゾンの迷宮 (角川ホラー文庫)

クリムゾンの迷宮 (角川ホラー文庫)

 

 

ではまたの機会にお会いしましょう!

 

『僕が愛したすべての君へ』 著者 乙野四方字

今回は『僕が愛したすべての君へ』(著者 乙野四方字)を読みました。

簡単ではありますが,まずは簡単な登場人物とあらすじ紹介から。

※本文にはネタバレを含む場合がありますので,ご了承ください。

 

少しだけ違う並行世界と日常的に揺れ動きながら生活していることが実証されたこの世界。

両親が離婚し母親と暮らすことになったが,学校では上手く馴染めずにいた。

そんな中,クラスメイトの瀧川和音から声をかけられ,自分は85番目の世界から来たと告げられる。

85番目の世界では暦と和音が恋人関係にあると告げられるが彼女を元の世界に戻せるのか。

そしてこの並行世界で暮らす自分は自分と同じなのか…という話です。

 

高崎暦(主人公):虚質科学研究所に勤める父をもつ。

10歳の時に初めて並行世界に移動する経験(パラレル・シフト)をした。

 

瀧川和音:暦のクラスメイトであり,同じく虚質科学研究所に勤める親をもつ。

今までは話したことが無かったのに,ある日突然85番目の世界から来たと暦に告げる。

 

今回はSF要素が強めな並行世界の実証された話。

実際にもこんなパラレルワールドのようなものが実在するのかな?なんてふわふわと思いながら読んでました。

あの時,あの決断をこうしていたら今はどうなっていたんだろう…?とか。

まぁ結局は過ぎてしまったことに変わりはないんですけどね。

 

SF要素は大好物なため,非常にワクワクしながら読めました。

色々な決断,選択肢があったからこそ今があるんだなと認識させてくれました。

続編?というか別篇もあるようなのでまたの機会に読んでみようと思います!

 

評価は 3.5/5.0 とさせていただきます。

閲覧くださり,ありがとうございました。

気になった方は是非読んでみてください!

 

僕が愛したすべての君へ (ハヤカワ文庫JA)
 

 

ではまたの機会にお会いしましょう!

『最後の医者は桜を見上げて君を思う』 著者 二宮敦人

今回は『最後の医者は桜を見上げて君を思う』(著者 二宮敦人)を読みました。

簡単ではありますが,まずは簡単な登場人物とあらすじ紹介から。

※本文にはネタバレを含む場合がありますので,ご了承ください。

 

最後まで奇跡を信じて患者の治療にあたる福原。

対して,病気に勝つためには”死”を選択するのも一つの手だと考える桐子。

考えの対立した医者二人の繰り広げられる命との向き合い方。

寿命を告げられるような患者たちは,そしてその周囲の人は何を思うのか…という話です。

 

福原雅和:武蔵野七十字病院で副院長を務める外科医。

患者の命を救うことに誠意を尽くす。

 

桐子修司:福原と同じく武蔵野七十字病院で皮膚科医して勤務。

患者は自身の死を選ぶ権利がありと考え,周囲からは”死神”と呼ばれる。

 

今回は寿命わずかな患者と医者たちとの心情が描かれるような重い話。

なんかまた色々と考えさせられてしまうような作品に出会ってしまいました。

私は職場での休憩中に本を読むことが多いのですが,思わず涙腺に来るようなシーンもしばしば。

 

私はこれまで病気になった際には様々な治療法を試すべきだと思っていました。

ただ,この作品に触れて桐子の考え方に思わず賛同することが何度も。

この日本には安楽死というものが存在しなく,”死”に対して考え直させる機会を与えてくれました。

こういった医療小説を読むたびに思うのですが,医者という仕事はどうしてこんなにも偉大な仕事に見えるのでしょうか。

カッコイイと思える半面,私には絶対に務まらない仕事だと思いますが…(笑)

今現在,私の親しい間柄にある人たちでこういった病気を患っている人はいませんが,今後必ず遭遇すると思います。

病気の辛さをわかることは難しいでしょうが,その際にはその人にとって何が最善なのか少なからず考えられるようになりたいと思いました。

 

最後に私がグッときてしまったフレーズについて2つ紹介したいと思います。

後で死ぬ人は,みんなの死を見届けるのが仕事。先に死ぬ人は,みんなに死を見せつけるのが仕事。

命の価値はその『長さ』ではなく『使い道』にあるわけだろう?

 

自分や自分の大切な人の”死”と”命の重さ”,そして”生きる”ことの意味について考えさせてくれる,そんな作品でした。

 

評価は 5.0/5.0 とさせていただきます。

閲覧くださり,ありがとうございました。

気になった方は是非読んでみてください!

  

最後の医者は桜を見上げて君を想う (TO文庫)
 

 

ではまたの機会にお会いしましょう!

『インジョーカー 組織犯罪対策課 八神瑛子』 著者 深町瑛子

今回は『インジョーカー 組織犯罪対策課 八神瑛子』(著者 深町瑛子)を読みました。

簡単ではありますが,まずは簡単な登場人物とあらすじ紹介から。

※本文にはネタバレを含む場合がありますので,ご了承ください。 

 

必要となれば容疑者に手を挙げヤクザとも関わりをもつ刑事の八神瑛子。

己の信念にのっとって使命を全うする日々を送っていた。

そんな最中,外国人技能実習生の犯罪に直面する。

密かに監察から監視される中で瑛子は事件を解決することができるのか…という話です。

 

八神瑛子(主人公):警視庁上野署の犯罪対策課に所属する刑事。

同僚に金を貸したりヤクザと情報提供したりと警官らしからぬこともしている。

 

今回はヤクザと中国マフィアで勃発する争いに刑事が絡んでいく話。

しかし,私はまたやってしまいました…(笑)

前編が3作もあるとは知らずにシリーズ物の4作目を読んでしまいました。

何も知識が無いのに書店に並んでいる雰囲気だけで本を選ぶべきではないですね(笑)

ただ,それでも内容としては十分すぎるくらいに楽しめましたね!

それでも要所要所には前編の内容が描かれているようで?私も読んでみようと思いました。

 

最初は物語の視点がコロコロと変わり,登場人物もかなり多く混乱しました。

作品の最中には暴力の応酬や正義と悪との血の闘いが描かれています。

この八神瑛子という人物は明確に悪への怒りを露わにし,自分がどれほど悪に手を染めようとも己の信念を貫く強さを感じさせてくれます。

やはり刑事小説は手に汗握るようなシーンが多く,ハラハラドキドキしました。

時間の都合上で一気読みすることができなかったのですが,続きが気になってしょうがなかったです(笑)

 

ヤクザやマフィアといったアンダーグラウンドめいた刑事小説を読みたい方にオススメです!

ちなみに前作は"アウトバーン""アウトクラッシュ""アウトサイダー"となっていますのでそちらから読まれることをオススメします!!

 

評価は 4.0/5.0 とさせていただきます。

閲覧くださり,ありがとうございました。

気になった方は是非読んでみてください!

 

 

ではまたの機会にお会いしましょう!

『風は西から』 著者 村山由佳

今回は『風は西から』(著者 村山由佳)を読みました。

簡単ではありますが,まずは簡単な登場人物とあらすじ紹介から。

※本文にはネタバレを含む場合がありますので,ご了承ください。 

 

大手居酒屋チェーン店”山背”に勤める健介,大手食品メーカー”銀のさじ”に勤める千秋。

そんな2人の恋人が忙しいながらも2人での時間を大事にしていく。

店長になる,と張り切っていた健介だったが突然自らの命を絶ってしまう。

千秋は一番近くで健介を見ていたはずなのに助けられなかったことから自分を責めてしまう。

健介の自殺は労災ではないのか,彼の両親と真相に迫る,そんな話です。

 

伊東千秋:大手食品メーカー”銀のさじ”に勤める。健介とは恋人関係にあたる。

9年近くの長い付き合いだが,時々健介に対して不服に思うこともある。

 

藤井健介:大手居酒屋チェーン店”山背”に勤める。

”山背”で経験を積んで行く行くは実家の創作居酒屋”ふじ”を継ごうと考えている。

 

今回は1人の青年が自殺してしまい,その真相に迫っていく話です。

買った頃には背表紙のあらすじを読んでいたはずなのに,突然に健介が自殺してしまって非常に驚きましたね。

前半は健介の生活の闇が垣間見える中で日々が描かれて行きます。

千秋の視点,健介の視点とそれぞれが展開されていきます。

健介の店長としての生活は壮絶なもので,読んでいるだけでも思わず苦しくなりました。

ただ,どんな展開がされていくのか世界観へとどんどん引き込まれましたね。

 

テーマがテーマだけあって非常に色々と考えさせられました。

こんなご時世で著名人の訃報が報じられることもありますが,日本にはまだまだ多くの自殺者が出ています。

そういう人が減らない中で誰かに相談はできなかったのか,という意見になることもありますが,この作品を読んでその考えだけでは甘いのだなと思いました。

そういう行動を起こす人にしかわからない,相談できるような精神状態ではない,そんなこともあるから自殺というのは未然に防ぐことが難しいんだなと。

 

さて,物語の後半には千秋と健介の両親が”山背”と戦う展開がされていきます。

健介の自殺は彼が弱かったからでありわが社には問題が無いと暗示する”山背”,労災とにあたるはずだとし”山背”に謝罪を要求する千秋ら。

明るい性格で全身全霊を傾けて働いた健介が自殺に至った出来事。

千秋らの要求は”山背”が飲むことはあるのか,ぜひ読んでみて欲しいです。

 

今一度,近くにいる大切な人のことを思う,そして辛いときには人と話して逃げることの大切さと大変さを再認識させてくれる,そんな作品でした。

 

評価は 5.0/5.0 とさせていただきます。

閲覧くださり,ありがとうございました。

気になった方は是非読んでみてください!

 

風は西から (幻冬舎文庫)

風は西から (幻冬舎文庫)

 

 

ではまたの機会にお会いしましょう!