活字紀行

自分自身に満足を。つらつらと書評ブログ。Twitter@sh1roha_468

息が詰まるようなこの場所で【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『息が詰まるようなこの場所で』(外山薫/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

タワマンには3種類の人間が住んでいる。資産家とサラリーマン、そして地権者だ――。
大手銀行の一般職として働く平田さやかは、念願のタワマンに住みながらも日々ストレスが絶えない。一人息子である充の過酷な受験戦争、同じマンションの最上階に住む医者一族の高杉家、そして総合職としてエリートコースを歩む同僚やPTAの雑務。種々のストレスから逃れたいと思ったとき、向かったのは親友・マミの元だった。かつては港区で一緒に遊び回り、夢を語り合った二人だったが――。
幸せとはなんなのだろう。
逃げ場所などない東京砂漠を生きる人々の焦燥と葛藤!
(本書より引用。)

 

人物紹介


平田さやか:タワマンに暮らす銀行の一般職。充の勉強の面倒を見ている。
平田健太:さやかの夫。充への指導にはあまり口を出さない。
平田充:中学受験を控えている。
高杉綾子:同じタワマンの最上階に住む。PTA会長。
高杉徹:綾子の夫。医者。
高杉隆:中学受験塾、ブリックス湾岸校でトップを独走。

感想

今回はタワーマンションでの暮らしを描いた作品です。
タイトルにもあるように、息が詰まるようなこの場所で、そんな場所で暮らす人々の様子が伺えます。

タワマンでの暮らしや、仕事、子供の進学先といったマウンティングとして挙げられがちな内容がふんだんに組み込まれています。

 

そういったマウンティングを取ってくる人に嫌気がさしている人も多いのではないでしょうか。

くだらないなと共感心を覚えたり、少々耳が痛くなったりすることもあるのではないでしょうか。

 

子供のことを思いやって中学受験の勉強を促す母親のさやか。

そんな母を喜ばせたい息子の充。

 

私自身も中学受験を経験した身ですので、なんだか懐かしい気持ちになりました。

 

タワマンって憧れたことは一度もないですが、こんなしがらみがあるなら本当に嫌ですね・・・笑

 

まぁ、独り身だからこんなこと言えるんでしょうけどね。

 

思わず、ここじゃないどこかに行きたい!!と思う節がある人には刺さる一冊だと思います。

きっとどこか共感を覚える箇所があるのではないでしょうか。

 

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

 

全体を読み終えての感想(ただの独り言)

家族間でさえこんなしがらみがあるんですから、家族ぐるみの付き合いなんて悩みのタネが増えてしかるべきですよね。

 

そして、結婚ってできる気がしないなぁと思ったのが私でした。

 

よそはよそ、うちはうちとよく言ったものですが、どうしてマウンティングしてくる人は必ず存在しているのでしょうか。

 

おそらく、自分や親しい人のステータスを表に出さないと、自我を保っていられなくなる瞬間があるんでしょうね。

 

先ほども言いましたが、私は自身の中学受験と照らし合わせながら読んでいました。

 

当時は別に親から受けろと言われたわけでもないですし、自分もなぜ受験しようと思ったのか不明確です。

他人の自我を保つための過程として使われたことはありませんでしたが、苦労したことだけは覚えています。

 

ただ、苦手な国語を克服するために読書をする習慣を身に付けた当時があったからこそ、今の私があるのだとも思いました。

小学生時代の私には感謝です。

 

何を伝えたかったのか(これもただの独り言)

誰しもが苦悩を抱えながらも懸命に生きているのだと思いました。
何かとマウンティングを取りがちな人がいますが(私もそうだと思いますが)、そういった人の心理が少しわかった気がしました。

 

ふとした瞬間にここじゃないどこかに行きたい!と思ったことがある人はいるのではないでしょうか。

私にはあります。

 

別に現状に不満があるわけではないのに、何か満ち足りないものがある気がする。

それを探しにどこかに行ってみたい、そんな風に思い詰めることが私にはあります。

 

結局はそんなものなんてどこにも見つからないし、探したってしょうがないんだなって。

冷たい言い方ですけど、自分以外は他人なんですから自分が満足してるならそれで充分と思った方が生きやすいなって思いました。

 

人にマウンティングを取られたから別の面で見返してやろうと自身もマウンティングを取ってしまう。

この負の連鎖はなかなか止まらなさそうです。

 

それでも、誰しもが必死にもがきながら生きているのだと思えた一冊でした。

人間ならではの泥臭さだけでなく、芯の強さを感じられた一冊でした。

 

もし、タワマンに住むような機会があれば再度読んでみたい一冊です。


今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。