こんにちはしろはです。
今回は『嘘』(北國浩二/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。
あらすじ
認知症の父と、その父を憎みながらも介護をする娘。その家に、ひとりの少年が暮らし始めた…。気鋭のミステリ作家による「感動&驚愕」のストーリー。
(BOOKデータベースより引用。)
人物紹介
千紗子:絵本作家。久江からの連絡を受けて、父の面倒を見ることになる。
孝蔵:千紗子の父。認知症を患っている。現在は仏像彫刻にいそしむ。
拓未:事故を経て千紗子と出会った少年。虐待されており、千紗子と暮らすことになる。
亀田:医師で孝蔵の幼馴染。
久江:福祉課の職員。千紗子の幼馴染。
感想
今回は訳ありな家族を描いた一冊です。
千紗子は憎んでいた認知症の父親と暮らし始めます。
その矢先、友人の久江が運転する車で人を轢いてしまいます。
久江の頼みから交通事故を隠蔽することになります。
久江は自身の手を染めることなく、被害者をどうにかして元の環境に戻そうとします。
ただ、千紗子は虐待されていることが明確なその少年を保護し、拓未と名付けて共に生活していくことを決意します。
これが序盤のあらすじとなりますが、早くも良い結末にはならないだろうな、と察してしまうような境遇でしたね。
久江が事故を隠蔽しよう、公務員の私の気持ちも分かって欲しい、といった発言には少々思う所がありましたが、当人だったらそう思ってしまうのかな?と思ったりも。
それに田舎とはいえ、飲酒運転を正当化しているあたり何とかなぁって。
予想通り、終始良い気持ちで読み進められる作品ではないです。
ただ、読了後にはどこか心が救われたような気がしました。
彼らの生活が幸せで色づくことを願うばかりです。
二度読み必至との記載がありましたが、個人的に再読はしたくないです(笑)
ネタバレありのコメント
これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!
拓未との出会い、そして
物語の最終盤まで拓未の記憶が戻ることもなく、世間もバレることもなく進んでいたので、もしかしてこのまま終わってしまうの?と思ってしまいましたが、最後にあそこまでぐちゃぐちゃになるとは思いませんでした。
拓未が、そして千紗子が犬養安雄に危害を加えるシーンはさすがに驚きました。
千紗子が罪を犯しても拓未を守ってあげたい、と思えるほどに拓未には救われていた。
そう思うと何かグッと来るものがありますよね。
関係を断ってきた孝蔵の介護をする気になる、そして自分のせいで愛する息子の純を死なせてしまったのではないかということと向き合うことができた。
そして、拓未は母親である千紗子と祖父である孝蔵を守りたい。
この居心地の良い居場所を守りたいがためにあのような行動ができた。
千紗子と拓未。
歪な関係ではあったものの、お互いが以前よりも強くなれた。
支えたい人、支えてくれる人がいるからこそ強くなれた。
千紗子がしたことは決して許されることではないが、彼女らの生活が幸せでありますように。
あと、久江は何のお咎め無しなんですかね?(笑)
千紗子と拓未に焦点を当てた作品だからしょうがないとは思いますが、少々思う所がありました。
親の認知症
本作品は親の介護、認知症といった問題が密接に関係しています。
私自身、親が介護を必要とする状況にはまだなっていませんが、そうなってしまったら何をしてあげられるのか、何をしなければならないのかと考えさせられてしまいました。
最近だと、認知症の進行を遅くさせる医薬品の開発が進んでいるとか風のうわさで聞きましたが、さらに高齢化が進行したらどうなってしまうんですかね。
以前、認知症の第一人者である長谷川先生の本を読んだことがありますが結構タメになった記憶があります。
理解してもらえないんだ、話し合っても意味がない、と突き放してしまうのではなく、寄り添う事が必要、といったことが説明されていた覚えがあります。
とは言っても、全然簡単なことじゃないよなぁ。
今のうちから考えていますが、何が正解なのかさっぱりです。
寄り添おう!と口で言うのは簡単ですが、正直自身はないなって思ってしまいます。
この先も考え続けたい問題だと思いました。
興味のある方はこちらもぜひ読んでみてください。
医療の知識がほとんどない私にもわかりやすい一冊でした。
今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。