活字紀行

自分自身に満足を。つらつらと書評ブログ。Twitter@sh1roha_468

彼女が最後に見たものは【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『彼女が最後に見たものは』(まさきとしか/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

あらすじ

 

クリスマスイブの夜、新宿区の空きビルの一階で女性の遺体が発見された。五十代と思われる女性の着衣は乱れ、身元は不明。警視庁捜査一課の三ツ矢秀平と戸塚警察署の田所岳斗は再びコンビを組み、捜査に当たる。
そして、女性の指紋が、千葉県で男性が刺殺された未解決事件の現場で採取された指紋と一致。名前は松波郁子、ホームレスだったことが判明する。
予想外の接点で繋がる二つの不可解な事件の真相とは――!?
(本書より引用。)

 

人物紹介

 

田所岳斗:戸塚警察署所属。再び、三ツ矢とコンビを組むことになる。

三ツ矢秀平:警視庁捜査一課殺人捜査第5係所属。
つかみどころのない雰囲気で変わり者として知られる。

 

感想

今回は2人の警察が繰り広げるミステリー作品です。

本作は2作目となっておりますので、先に1作目を読んでからの方がより楽しめると思います。
下に1作目を貼っておきますので、興味のある方はぜひ!

また、2人の警察が共通するだけでストーリー自体は連続していないので、本作品から読んでも楽しめるとは思います。


以前、当ブログでも取り上げたことがあるのでこちらも良かったら!
今とはブログの体裁が大きく異なっておりますが、気楽に読んでもらえたら嬉しいです。

sh1roha468.hatenablog.jp


前作はいわゆる"イヤミス"と表現されるような、読了後に少々嫌な気分になる作品でした。

ただ本作の読了後は、悲しみの中にもどこか優しくホッとするような作品でした。
どこにも救いがないじゃないか!とはならずに、人の温かみに触れた気がします。

前作に続き、自由奔放で不思議な雰囲気ながらも頼りになる三ツ矢、そして事あるごとに三ツ矢や何もできない自分に腹を立てる田所のキャラクター性は健在です。

この2人のやり取りも楽しんでもらえたらと思います。
そして、田所と一緒に事件の謎を悩みませんか?
私は最後まで事件の真相はさっぱりでした(笑)


読書慣れしていない方や、ミステリー好きな方にオススメしたい一冊です。

 

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

タイトル名

これ、タイトル名が秀逸すぎませんかね?
読了後になんて良いタイトルなんだと、心の底から思いました。

"彼女"とはいったい誰なんだろうか。
そう思いながら読んでいましたが、読了後にタイトル名の意味に触れた瞬間思わず唸ってしまいました。(私の解釈違いだったら悲しいですが。)

結局は彼女(松波郁子)にしかわからないことなんだと。
そしてこれは松波郁子に限らず、東山瑠美子や木村成美にも言えること。
彼女らが、最後に見たものというのは本人にしかわからないということ。

特に、松波郁子に関しては亡くなっていますので、誰にもわからないものとなっています。
作中にはこんな表現があります。

人生の終わりに自分にしか見えない光景を見つめ、自分にしかわからない心を握りしめて死んでいく。
(本書より引用。)

 

読者の私たちは松波郁子が何を思いながら死んでいったのかわかりますが、三ツ矢たちがそれを知るすべはない。
それでも、松波郁子と関わった人たちのことを思うとどこか優しい気持ちになれる。

このような表現もとても好きでしたね。

死んだことよりも生きていたことを見てほしいのです。
(本書より引用。)

これは三ツ矢のセリフでしたが、読了後にこのセリフにどこか救われた気がしました。

読んで良かった作品でした。
個人的に私は1作目よりも本作品の方が好きでした。

物語の結末

事件の真相は最後までさっぱりでした。
この松波郁子と過ごしていた少年が一枚かんでいるとは思っていましたが、東山瑠美奈と同一人物だとは思いもしませんでした。

どの登場人物も、どうか幸せになってほしいと願うばかりでした。
ただそう思うのも綺麗事であって、言うのも非常に簡単なことでしかありません。

逃げ場のない人はどうすればいいのか。
この表現には考えさせられるものがありました。
読了前より読了後は、少しでも優しい存在でありたいと思いました。

あと、木村湊が不憫すぎて辛かったです。
彼に救いはないのでしょうか。
母親の木村成美とどうにか幸せになってほしいと願うばかりでした。

 

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。