活字紀行

自分自身に満足を。つらつらと書評ブログ。Twitter@sh1roha_468

七回死んだ男【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『七回死んだ男』(西澤保彦/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

あらすじ

 

幾度も繰り返される殺人。殺されるのはいつも渕上零治郎。それは、現実の出来事。だが、それを認識できるのは孫の久太郎だけ。時間の“反復落とし穴”に嵌まり込んだ久太郎が、祖父の命を救うべき孤軍奮闘するが…。
(BOOKデータベースから引用。)

 

人物紹介

 

大庭久太郎:加美寿の息子。キュータローと呼ばれるが、本名はヒサタロウ。
"反復落とし穴"と呼ばれる、突如として同じ日を9回繰り返す不思議な体質をもつ。

渕上零治郎:エッジ・アップグループの社長。
跡継ぎとして胡留乃の養子に誰を迎えるか考えていた。

  胡留乃:零治郎の娘、次女。姉妹の中で唯一零治郎の面倒を見ていた。
大庭加実寿:同じく零治郎の娘、長女。息子は富士高と世史夫と久太郎。
鐘ヶ江葉流名:同じく零治郎の娘、三女。娘は舞とルナ。
槌屋龍一:零治郎の秘書兼運転手。
友理絵美:胡留乃の秘書。

感想

solar building 

今回は不思議な体質をもった一人の高校生の周りで起こるSFミステリーです。

主人公である久太郎は"反復落とし穴"と呼ばれる体質をもっています。
これは、頻度に差はあるものの、一度その穴に入ってしまうと同じ日を9回繰り返すというものです。

大のSF好きの私はこの説明の段階で、この本を読むことに選んで良かったなと思いました。

そしてタイトル名にもあるように、ある人物が作中で7回死亡することとなります。
あらすじにあるので言ってしまいますが、祖父である零治郎が毎回死亡します。
繰り返しのうち、最初と最後以外は死ぬんだろうなぁ、とやんわり想像しながら読んでいました。

背景としては跡継ぎ問題となりますので、人間関係のドロドロさも描かれています。
また、人の死が絡んでいるので暗い話ではないか?と思いがちですが、終始悩みながらも楽しく読むことができました。

家族や親戚ならではのやり取りも描かれているので、どこか懐かしい気持ちにもなれます。
少々、性格にクセのある人物ばかりですが。

人の名前が覚えにくい事や、読点がやたらと少ないな?と少々文章にクセはありますが、読みにくいといったことはなかったです。

物語の終盤ですべての謎が解ける感覚は、爽快以外の何物でもありませんでした。

SFだけでなく、ミステリーも読んでみたいという方にオススメしたい一冊です。

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

物語の結末

最終的には零治郎の死因が明らかとなり、零治郎の死は回避することができました。

繰り返しの真相、零治郎の死因等、私の想像とは全くかけ離れたものでした。
今回のミステリーも完全敗北です・・・(笑)
キュータローと一緒に混乱しっぱなしでした。

問題が解決したよ、やったね!!という描写になっても、新たに気にかかる点が出てくるのが本当にすごいなと思いました。

読了後は、なるほどなぁとすべてが解決してすっきりしました。
跡継ぎ問題はさらに複雑化していましたが・・・(笑)

久太郎は"反復落とし穴"もあって年齢に似つかわしくない説得力がありましたが、友理さんも理解力に富んだ聡明な人だと思いました。

え!今キュータローって言った!?って思うまで私は全然理解できていませんでした。
そこから、全ての点と点が線でつながる感覚は最高でした。

久太郎の人相

いや、大人っぽすぎん??
この"反復落とし穴"があったとはいえ、これが高校生とは。
友理さんから年齢を勘違いされて当然ですよね。

だとしても、久太郎のこの人相がなければ事件はより難解なものでしたよね。
いずれの週でも、久太郎の助言には素直に従う様が描かれていて、実年齢には似つかわしくない説得力が終始ありました。
まぁ、久太郎は同じ日を繰り返しているから当然と言えばそうなんですが。

親戚からすれば、なんでも知っている親戚や弟と思い、少々不気味なレベルですよね。
しかし、彼の行動力と説得力には高校生らしさを感じさせないものがありました。

"反復落とし穴"を経て、達観した高校生をここまで表現しているとは。
本当に高校生か!?と何度思ったことか。

冒頭では、人の名前とか文章表現が少々読みにくいな?と思っていましたが、読んで本当に良かった作品です。
SFミステリーが好きな方には、ぜひ読んでほしい一冊です。

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。

流浪の月【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『流浪の月』(凪良ゆう/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

あらすじ

 

最初にお父さんがいなくなって、次にお母さんもいなくなって、わたしの幸福な日々は終わりを告げた。すこしずつ心が死んでいくわたしに居場所をくれたのが文だった。それがどのような結末を迎えるかも知らないままに――。だから十五年の時を経て彼と再会を果たし、わたしは再び願った。この願いを、きっと誰もが認めないだろう。周囲のひとびとの善意を打ち捨て、あるいは大切なひとさえも傷付けることになるかもしれない。それでも文、わたしはあなたのそばにいたい――。
(本書より引用。)

 

人物紹介

 

家内更紗:幼い頃に父が他界、母は蒸発。
叔母のところに預けられたが、近所で噂になっていたロリコンについていくことになる。
佐伯文:更紗が幼い頃に近所でロリコンと噂されていた人物。
ひょんなことから更紗と同居することになる。

感想


今回はとある女性が少女時代から成人女性まで、人生の一片を綴った作品です。

少女時代には母親と父親で仲睦まじく過ごす日々が綴られ、突如その生活が壊れます。
叔母さんのところに預けられることとなりますが肩身が狭く、まるで自身の居場所がないように感じる日々を過ごします。

まだまだ幼く、もがき苦しむ様が描かれていきます。
読んでいる分には、声を上げればいいじゃないかと思ってしまいますが、9歳の少女にできることなんてたかが知れていますよね。

更紗は、公園で出会った大学生の文と同居することになります。
文と過ごすようになった更紗は、一見すると幸せに見えますがそんな歪な関係が続くこともありません。

そして、とあることをきっかけにして、文とは離れ離れになり、場面は現在の大人になった更紗になります。

少女時代での事件、そしてそれが現在まで影響を及ぼしている様はまさに現代社会にふさわしいと思いました。

発展したデジタル社会ならではの展開、非難、擁護。
そういった生き辛さを感じずにはいられない一冊ではないかと思いました。

ひとえに、更紗が声を上げないのが誤っている、と一言で非難するには違うのではないか。

自分の気持ちは、決して他人に理解してもらえるものではないが、本作品を読んだからには他人にも優しくありたいと思いました。
結局は自分が一番ですけどね。

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

 

他人への同情心

本作品を読んで一番初めに思ったことは、他人に同情できるということは、どんな場合でも良い事なのでしょうか。

私はあなたの味方だから、私はあなたの気持ちがわかるよ、だなんて言葉には何ら意味をなさないこともあるのではないでしょうか。

言い方は良くないですが、相手の気持ちを分かってあげられる自分はなんて美しい存在なのだろうかと、心のどこかでは思っている節があるのではないでしょうか。

作中にはこのような描写があります。

未成年だからといって、なにも守られたりはしないのだ。善人な人たちの好奇心を満たすために、どんな悲劇も骨までしゃぶりつくされる。
(本書より引用。)


可哀想に、大変だったね、と簡単に思ったり伝えたりするのは野暮なのでは。
じゃあどうすればいいんだよって感じですが・・・。

「普通」とか「常識」といった言葉で表してしまえば簡単ですが、つまはじきにされて生き辛い気持ちを感じている人もいる。

昨今では、表現の自由と言われていますが、なかなか難しい問題ですよね。
同情する、害を与えた人を非難するのは簡単ですが、果たしてそれは正しい事でしょうか。

改めて思いますけど、カウンセラーを請け負っている方って本当に凄いですね。
これほど扱いが繊細な職業、なかなか無いと私は思います。

結局は他人の気持ちだなんて完全には理解できませんし、自分の気持ちを一番理解できるのは自身でしかないですもんね。

気休め程度に人の相談に乗るのは、もうやめようかなとまで思いました。
正直、何も言わずに相槌を打つ程度が一番良いのかもしれませんね。

人間の不器用さ

では、結局私たちは一人で生きていくのが一番なのでしょうか。

私は決してそんなこと思いません。
作中にはこんな表現もされていました。

ひとりのほうがずっと楽に生きられる。それでも、やっぱりひとりは怖い。神さまはどうしてわたしたちをこんなふうに作ったんだろう。
(本書より引用。)


人間ってめんどくせーな・・・(笑)
そんなこと思ってはダメですよね、ごめんなさい(笑)

少しでも、自分のことを理解してくれる人は大事にしないとダメですね。

そして、自分もその相手のことを少しでも理解できる存在でありたいですね。
理解できなくても、困ったときだけでも寄り添えるように。

 

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。

変な家【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『変な家』(雨穴/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

知人が購入を検討している都内の中古一軒家。
開放的で明るい内装の、ごくありふれた物件に思えたが、間取り図に「謎の空間」が存在していた。
知り合いの設計士にその間取り図を見せると、この家は、そこかしこに「奇妙な違和感」が存在すると言う。
間取りの謎をたどった先に見たものとは......。
(本書より引用。)

 

人物紹介

 

筆者:オカルト専門のフリーライター。知人の柳岡さんからとある物件に関する相談を受ける。
栗原:大手建築事務所に勤める設計士。ホラーやミステリーの愛好家でもある。

 

感想

今回は物件の間取りを元にした変わったミステリーです。

私は、事前情報なしで読み始めましたが、著者の雨穴さんはyoutubeで活動されているハンドルネームだそうです。

そして本作品の第一章がyoutubeに上がっているようですね。
興味のある方はこちらから試しに聞いてみてはどうでしょうか?(決してステマではありません。)

【不動産ミステリー】変な家 - YouTube


見たら再生回数も多くて、当時は結構話題になったんだろうなと思いました。
こうやって書籍化するケースもあるんですね。

間取りを元にしたミステリーって初めて読んだので、新鮮な気持ちで読めました。
あとこれは個人的なことですが、事あるごとに間取りが再度出てくるので、電子書籍で読んでいる私でも非常に理解しやすかったです。

終始、筆者と登場人物が対話形式で物語が進められていきます。
活字に慣れてないけど小説が読んでみたい、手軽なミステリーが読んでみたい、という方はきっと読みやすいと思います。

ぜひそう言った方に読んでいただきたい一冊です!

 

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

物語の結末

これ、実際にあったことなの?と思いながら読み進めていましたが、最後に本作品はフィクションですと出てきて、まぁそれはそうだよなって感じでした。

良くも悪くも出来すぎ感を感じました。
最初から、え!!これ実話なの!?と思いながら読んできたのが良くなかったです。
どこからそういう風に思ったんだよって感じですが。

私には少々読み足りない感想となってしまいました。
サクッとミステリーが読みたい!という場合にはもってこいだと思いますけどね。

また何か書籍化されたら読んでみようと思います。

間取りを使ったミステリー

間取りを使ったミステリーって本当に新鮮でした。

私は別に引っ越す予定があるわけでもないのに、よく賃貸の間取りを見ることがあります。
ぼんやりと、うわこの家住みてえとか、こんな家は住みたくねえ(笑)とか言うことも。

そういったことからも、本作品に出てくる間取りの違和感はすぐ感じました。

今後は間取りを見る新たな視点を貰った気がします。
一風変わった間取りを見るのってなんであんなに楽しいんですかね。

まさか本作品のようなことが起こったのかも?と思うことはないと思いますが、ここに住んだらこんな生活ができそうだ、どんな苦労をしそうだとか考えながら選ぶようにしたいです。
どんな話してんだよって感じですが・・・。

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。

こちらあみ子【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『こちらあみ子』(今村夏子/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

あみ子は、少し風変わりな女の子。優しい父、一緒に登下校をしてくれる兄、書道教室の先生でお腹には赤ちゃんがいる母、憧れの同級生のり君。純粋なあみ子の行動が、周囲の人々を否応なしに変えていく過程を少女の無垢な視線で鮮やかに描き、独自の世界を示した。
(本書より引用。)

 

人物紹介

 

あみ子:田中家の長女として育てられた。学校には行かないこともしばしば。
:あみ子の兄。名前は考太。とある時期を境にして不良になる。
:あみ子たちの母親。自宅で書道教室を開いている。お腹には赤ん坊がいる。
:あみ子たちの父親。優しい性格。
のり君:あみ子のクラスメイト。書道教室に通う一生徒。

 

感想

今回はとある少女の周りで起こる日々を綴った作品です。

とは言うものの、読了した後味はあまり良くないです。
決して良い気分で読み終える作品ではないので、そういったものが苦手な方はご注意ください。

主人公のあみ子が周囲から気を遣われながらも、純粋に生きる様を描いています。
読んでいる私たちにも理解できない言動があるのではないでしょうか。

そういった言動に理解できず、思わず不快感を覚えてしまう方もいると思います。
私自身、良い気持ちがしない場面が多々ありました。

読了後に一番感じた感想は、"恐怖感"これに尽きました。
怖い作品だった、理解しがたい作品だったと一言で片付けてはいけないものだと思いました。

純粋だからこそ、周囲にとらわれることなく生きていけるという考え方も、もしかしたら幸せな事かもしれませんよね。
私には何が正しいのかわからなくなってしまいましたが・・・。

興味のある方はぜひ一読ください。
きっとあなたにも、何か考えるきっかけを与えてくれると思います。

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

タイトル名

こちらあみ子というタイトル名が何を示しているのか。

作中にはトランシーバーをもらうあみ子が描かれています。
このトランシーバーは、生まれてくるであろう弟(あみ子が弟と思い込んでいただけであって、本当は妹だった)と一緒に遊ぶためにもらったものでした。

しかし、実際に弟(妹)はできずにあみ子はこのトランシーバーを一人で使うことになります。
「応答せよ、応答せよ、こちらあみ子」と呼びかけても誰も応じてくれることはない。

そんなあみ子の、誰にも理解してもらえない孤独さを表していると思うと胸が痛くなります。

思わず目をそむけたくなってしまうほど悲しく、どうしようもない徒労感に思いやられることとなってしまいました。

短いながらも、あみ子の孤独さを表現した秀逸なタイトル名だと思いました。

あみ子に出会ったらどうすればいいのか

では、実際に近くにあみ子のような人物がいればどうすればいいのか。

正直、全くわかりませんでした。
あみ子の言動は全く理解できない場面が多すぎたので、実際にそのような現場に立ち会えば、絶句するしかないと思います。

弟の墓を手作りしたシーンには、思わず一度本を閉じてしまいました。
あみ子は良かれと思ってやったことだと伝わりますし、単純に悪いことだと伝えるだけで良いのか。

どうせ伝わらないんじゃないか、理解してもらえないんじゃないか。
そう思うと息苦しさを感じずにはいられません。

純粋だからこそ、一方的に非難するのは間違っているのではないか。
では何が正しいのか、そう考えると答えのない中でもがいて悲しくなります。

以前読んだ『推し、燃ゆ』とは違った息苦しさを感じました。
『推し、燃ゆ』では主人公の息苦しさ、本作では本人だけでなく周りの人間の息苦しさがひしひしと伝わってきました。

理解してあげようよ、寄り添ってあげようよ、と外部から口を出すのは簡単だが、当事者となったあなたや私には何ができるのか。

そういうことを考えさせてくれるきっかけを与えるという意味では素晴らしい一冊だと思います。

アルジャーノンに花束を』という作品がありますが、そちらとも違った良さがあるように感じました。

参考としてこれらのリンクも貼っておきます。
興味のある方はぜひ読んでみてください。

 


今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。

星を継ぐもの【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『星を継ぐもの』(ジェイムズ・P・ホーガン/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

月面調査隊が真紅の宇宙服をまとった死体を発見した。すぐさま地球の研究室で綿密な調査が行なわれた結果、驚くべき事実が明らかになった。死体はどの月面基地の所属でもなく、世界のいかなる人間でもない。ほとんど現代人と同じ生物であるにもかかわらず、5万年以上も前に死んでいたのだ。謎は謎を呼び、一つの疑問が解決すると、何倍もの疑問が生まれてくる。やがて木星の衛星ガニメデで地球のものではない宇宙船の残骸が発見されたが……。
(本書より引用。)

 

人物紹介

ヴィクター・ハント:原子物理学者。物質/反物質の粒子消滅に関する研究をしている。
グレッグ・コールドウェル:国連宇宙軍(UNSA)本部長。
リン・ガーランド:コールドウェルの秘書。
クリスチャン・ダンチェッカー生物学者
ドン・マドスン言語学者
チャーリー:月面から出てきた死体。UNSAがチャーリーと呼ぶことにした。

 

感想

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今回は壮大な宇宙を舞台にしたSF作品です。
物語冒頭で、5万年以上前に死んだと思われる死体が月面から発見されます。

もうこの段階でテンションが上がりませんか?
私は無類のSF好きですので、この段階で買って良かったなと思いました。

自然科学や宇宙が好きな人にはたまらない一冊ではないでしょうか。
チャーリーの正体とは、この点を多くの研究者と共に考察すると思います。

ああなんじゃないか、こうなんじゃないかと考えていましたが全然違いました(笑)

自然科学を楽しめるだけでなく、推理としても楽しめると思います。
発売されたのが1977年と45年前の作品というのも衝撃です。

もっと若い頃に読んでいたら今よりもワクワクしていたんだろうなと思うと心残りです。

ぜひ、科学やSFが好きなあなたには読んでもらいたい一冊ですね。

 

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

 

チャーリーの正体

徐々にチャーリーの正体が紐解かれ、終盤で明確な説が立証されることになります。
このなさそうで実は現実でも起こりそう?という絶妙な結末がとても好きです。

そして最終版では彼と共に行動したコリエルも登場します。

私自身、あまり理解できなかったのが正直なところです。
これいつかまた読み直したい作品ですね。

続編もあと2冊あるそうで。
そちらもいつか読んでみたいですね。

SFとしての世界観はとても私好みでした。
科学のなかでも自然科学が好きな方は絶対に好きな作品だと思います。

SFは色々と読んできましたが、上位に来る満足度でした。
SFとは何ぞやを語る上では欠かせない一冊だと思いました。

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。

結び目【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『結び目』(内池陽菜/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

親が作った弁当を一人で食べている浪人中の湊人。
無意識に自分の人生を諦めてしまっている幸子。
かつて夢を持っていた就活中の裕貴。
大切な人を失ったことを受け入れられないすず。
自分より大切にしたい人を見つけた旭。
あなたの人生が、日々、いろいろあるように、あの人にも、その人にも、実は、いろいろある。
人生は等しく劇的で、素晴らしい。御茶ノ水を舞台に、出会い、語り、泣き、笑う。
どこにでもありそうで、どこかにあったらいい、そんな物語。
(本書より引用。)

 

人物紹介

湊人:現在浪人中。『普通』から反れることを恐れている。まなみんのファン。
幸子:"まなみん"こと清水愛美の祖母。
裕貴:現在就活中。デジタルハリウッド大学に在籍。まなみんのファン。
すず:コーヒーショップの店長。
:裕貴の所属するゼミの先生。

 

感想

barista latte

今回は、今もこんなことが起こっているのかも?と想像させてくれるような日常を描いた作品です。

今のご時世と同じように、人々がマスクをして日常を過ごしていますが、登場人物の誰も彼もが悩みに苦悩するさまが描かれています。

本当に私の知らないところで起こっていてもおかしくないな、と終始考えていました。

すずさんはコーヒーショップの店長さんとのことでしたが、
こういうカフェとかで顔見知りの店員さんがいるのって少々憧れなんですよね。

外で本を読みたいなぁとか思うこともあるので、いつか行きつけのカフェを作ってみたい限りです。
個人経営とかの方がいいんでしょうか。

まぁそんなことはさておき、本作品は読んでいてどこか前向きになれる作品でした。
学生ならではの悩み、浪人生ならではの悩み、社会人ならではの悩みと、誰しもが悩みを抱えながら生きているのだなと思えました。

私ばかりが、俺ばかりが、だなんて考える必要はないってことですね。
人に共感してもらえることは大切だし心地の良いものだと思いますが、その悩みはある節目なんだとめげずに取り組んでみてはいかがでしょうか。

現代背景に即した設定で、片手間に読める一冊ではないでしょうか。
活字が苦手な方でも読みやすいと思います。

ぜひ機会があれば読んでみてください。

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

 

幸子さんの一言

『今この瞬間をどう生きるか』に悩むんじゃなくて、もっと長い目で見て『人生にどんな節目を作るか』を考えるべきだと思うのよ。
(本書より引用。)


これが本作品の最大の魅力だったのではないでしょうか。

竹は節があるから強い、節目は多いほど強い。
そんな竹になぞらえて、人生のあり方を教えてくれた気がします。

登場人物の誰もが、物語を通して以前よりも前向きになれてどこかホッとしました。
特にすずさんは、陰では思い詰めていたようなので、過去に捕らわれることなくなれて本当に良かったです。

2時間足らずで読み終えてしまいましたが、良い満足感でした。
思わずコーヒーが飲みたくなって読書のお供にしながら読みました。

今何かに悩んで立ち止まっている方に読んでいもらいたい一冊ですね。

今抱えている問題は、あなたの人生のターニングポイントになり得る節目かもしれませんよ?

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。

 

四月になれば彼女は【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『四月になれば彼女は』(川村元気/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

恋愛なき時代のベストセラー恋愛小説、ついに文庫化!
精神科医・藤代に大学時代の恋人から手紙が――失った恋に翻弄される十二か月。『世界から猫が消えたなら』『億男』著者の恋愛小説。
(本書より引用。)

 

人物紹介

藤代俊:大学では写真部の副部長を務めた。現在は精神科医
伊与田春:藤代の後輩として写真部に入部。当時は藤代と恋人関係にあった。
ペンタックス:写真部の部長。ペンタックスとは藤代が命名したあだ名。
大島:写真部のOB。いつも左肩が少し下がった猫背で歩く。

坂本弥生:藤代の婚約者。職業は獣医師。
坂本純:弥生の妹。アルバイトをしながら様々なブランド物を身に着ける。
松尾:純の夫。公立高校に勤める数学教師。
奈々:藤代の後輩の医師。

 

感想

uyunisaltflats bolivia

今回は恋愛を大きな題材とした作品です。

主人公である藤代が大学生時代の話、精神科医となった現在の描写から物語が展開されていきます。

個人的に、私はカメラの知識が全くなかったので現像の仕方など、とても勉強になりました。
楽しそうに風景画を撮っている描写を見ると、私自身も写真を撮りたくなりましたよ。

 

学生時代の部活動は本当に楽しそうでした。
思い出してもしょうがないですが、学生時代特有の何でもできる日々を思い出して懐かしい気持ちになりました。

さて、本作品は恋愛や結婚が大きなテーマになっていると思うのですが、率直に言いますと何が正しいのかわからなくなりました(笑)

これまでぼんやりと描いていたものがひっくり返されて壊された気がします。
恋愛は良いもの、素晴らしいもの、と考えている人にはあまり向いてないかもしれません。

人と恋愛をするということ、結婚して共に余生を過ごすということ、を考えるきっかけになる一冊だと思います。

ぜひ機会があれば読んでみてください。

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

 

恋愛とは

読了後に最も感じたことは、恋愛って何なんだろうということでした。

これまで私はどこかで恋愛は美しく良いものだと何となく感じていました。
ただ、読了後にはそういったことがボロボロと崩れてしまいました。


藤代も悩んでいたのだな、と思う節が色濃く表れています。

思えば藤代は、ハルと別れてからずっと、なにが好きなのかを探していた。弥生とともに嫌いなものを見つけていくことで、藤代は自分の居場所を見つけていくことができるような気がしていた。
(本書より引用。)


え?恋愛とかいうもの、難しすぎませんかね?
深く考えすぎなんでしょうか。

私の好きなライトノベルでもある通称"俺ガイル"でも共依存という表現が使用されます。
読んでいた当時も、じゃあ何が正しいんだ?と思考がぐるぐるしていたのを思い出しました。

自分を大切にするだけでなく、相手を尊重し思いやること。
人の関係とは、不器用ながらもどこか美しさを感じさせるものだと思いました。

ハルという人物

ハルは作中終盤まで、手紙という形でしか登場しませんでした。
そしてハルは病気ですでに他界していることが判明します。

驚きも大きかったですが、ハルの手紙には考えさせられるものが多々ありました。

以下に思わずうなった表現を2つ紹介します。

わたしは、わたしに会いたかった。あなたのことが好きだった頃のわたしに。
(本書より引用。)

わたしは愛したときに、はじめて愛された。それはまるで日食のようでした。「わたしの愛」と「あなたの愛」が等しく重なっていたときは、ほんの一瞬。
(本書より引用。)


なんか、本当に今までの"恋愛"という概念が崩されたような気がしました。

特に響いたのはこの恋愛は日食のようなものという捉え方。
いくらお互いを理解したとしても、結局は他人でしかない。
そして、あの頃こうしていれば良かったと考えたところで取り返しはつかない。

恋愛や結婚とは良いもの、と考えがちですがそんなことないなと思わされてしまいました。

過ぎ去って、手が届かなくなっても、後悔しない日々を過ごすために。

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。