活字紀行

自分自身に満足を。つらつらと書評ブログ。Twitter@sh1roha_468

自由研究には向かない殺人【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『自由研究には向かない殺人』(ホリー・ジャクソン/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

高校生のピップは自由研究で、5年前に自分の住む町で起きた17歳の少女の失踪事件を調べている。交際相手の少年が彼女を殺害し、自殺したとされていた。その少年と親しかったピップは、彼が犯人だとは信じられず、無実を証明するために、自由研究を口実に警察や新聞記者、関係者たちにインタビューをはじめる。ところが、身近な人物が次々と容疑者として浮かんできてしまい……。予想外の事実にもひるまず、事件の謎を追うピップがたどりついた驚愕の真相とは。ひたむきな主人公の姿が胸を打つ、英米で大ベストセラーとなった謎解きミステリ!
(本書より引用。)

 

人物紹介


ピッパ・フィッツ=アモービ:通称"ピッパ"。リトル・キルトン・グラマースクールの最上級生。17歳。
アンドレア・ベル:通称"アンディ"。五年前に失踪。
サリル・シン:通称"サル"。アンディのボーイフレンド。故人。
ラヴィ・シン:サルの弟。

感想

今回は17歳の少女が自由研究で殺人事件の真相を追い求めることになった作品です。

海外で書かれた作品であるため、日本語に翻訳されたことから少々読みにくい点もあるかと思います。
一番とっつきにくい点は登場人物の名前ですかね。
ただ登場人物が多いだけでなく、名前も日本人には少々馴染みにくいため、その点は注意が必要かと思います。

さて、自由研究で殺人事件の真相に迫ることとなった主人公のピッパですが、彼女の行動力には目を見張るものがあります。
行動力が高すぎて、時々親目線に立って心配してしまうことも。

彼女自身が危険に目に遭ってしまう危険性を顧みず、果敢に真相に迫ろうとする勇敢さにはどこか勇気づけられるものがありました。
さすがに猪突猛進すぎでは?と思ってしまうこともありましたが・・・。

先述の通り登場人物が多く把握しにくい、そして500ページ以上というなかなかのボリュームがあるため、メモを取りながらとか一気に読み切ってしまう方がおすすめです。

私はただでさえ人の名前が覚えられないのに、このボリューム感で読むのにかなり苦労しました。

ただ、一つのミステリとして非常に満足感がありました。
現時点で複数の続編が出ているようなので、読んでみようと思います。

軽く調べると前日譚もあるとか?楽しみですね。

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

 

全体を読み終えての感想(ただの独り言)

久々に原作が海外の小説を読みましたが、やはり読み応えありますね。
この独特な言い回しとかがその要因になるんですかね。

ミステリとしては非常に面白かったです。
決して彼女のような自由研究に取り組みたいとは思いませんが、たくさんの友人や親せきに囲まれていてなんだか羨ましかったです。

日本にはあまり無い(なくなったと私が勘違いしている?)温かみのあるご近所付き合いや気の許せる友人たちとのやり取りは、学生時代を彷彿させる懐かしさがありました。

ピッパの行動力には少々冷や汗をかいてしまうこともありましたが・・・。
被害者の家族や容疑者、薬物のバイヤーなど何のためらいもなく尋ねることができる彼女の行動力は何なのでしょうか。

追っているのは殺人事件とかなり物騒なものですが、知りたい、解き明かしたい!という好奇心は私も見習ないといけないなと思いました。

大人になったからと言って自分の興味あることへの追究は忘れてはいけないもんですね。
私も私自身の人生をもっと楽しんでいこうと思いました。

人に迷惑をかけないことが一番大切だと思っていますが・・・(笑)


今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。

硝子の塔の殺人【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『硝子の塔の殺人』(知念実希人/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

雪深き森で、燦然と輝く、硝子の塔。
地上11階、地下1階、唯一無二の美しく巨大な尖塔だ。
ミステリを愛する大富豪の呼びかけで、
刑事、霊能力者、小説家、料理人など、
一癖も二癖もあるゲストたちが招かれた。
この館で次々と惨劇が起こる。
(本書より引用。)

 

人物紹介


神津島太郎:館の主人。壱の部屋。
加々見剛:刑事。弐の部屋。
酒泉大樹:料理人。参の部屋。
一条遊馬:医師。肆の部屋。
碧月夜:名探偵。伍の部屋。
巴円香:メイド。陸の部屋。
夢読水晶:霊能力者。漆の部屋。
久留間行進:小説家。捌の部屋。
左京公介:編集者。玖の部屋。
老田真三:執事。拾の部屋。

感想

spider sculpture

今回は硝子の塔という場所で起こった殺人事件を描いた作品です。

冒頭から犯人と思われる後悔が綴られ、そして事件現場はクローズドサークルであることが早々から判明します。

登場人物らは10個の部屋に分かれて泊まっていたところ、事件は発生します。
プロフィールや泊まることになった部屋、そして塔の構造が掲載されています。

この人は何をしている人でどこの部屋に泊まっている人なんだ?と分からなくなってしまったら戻ってくるととても分かりやすいと思います。

さて、犯人の後悔から描かれていることからも、本作品は倒叙となっています。
作中では少々キャラの濃い自称名探偵が登場します。

事件の真相とは?そして彼女はどのようにして事件を解決していくのか。
ぜひ挑戦してみてください。

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

 

全体を読み終えての感想(ただの独り言)

どうしてこんなことになってしまったのだろう。

そんな始まり方をする本作品ですが、一見するとクローズドサークルで起こった倒叙かな?と予想しながら読み進めることとなりますが、それだけでは終わらないのが一つの魅力かと思います。

読者の我々にも語り掛けてくるような展開がありましたが、ここ数年で私が読んだものだと、どこかmediumを思い出させるようなものでした。
心なしか、探偵役の月夜と翡翠が似ていた箇所があったからでしょうか。

 

sh1roha468.hatenablog.jp

 

ただし、決して探偵役が酷似しているわけではなく、翡翠にはない魅力、そして月夜にはない魅力がそれぞれにあったのだと再認識しました。

さて、今回もミステリの謎を解いてみろ!!と言う展開がありましたが、私には見当もつきませんでした。

倒叙って犯人視点で描かれるから対して面白くないのでは?という偏見を軽く吹っ飛ばしてくれるのがミステリ好きとしては堪りません。

知念さんのミステリというと、医療要素がミステリのタネとして組み込まれていることが多々ありますが、今回はそのような要素があまりなかったことが意外でした。

また、メタ要素というか若干の叙述トリックが仕込まれていたのが面白いなと。
ミステリなんて所詮は小説の中の話だろ?という固定概念を抱きながら、小説を読んでいるんだなと思わされました。

まぁそれが当たり前だと思うんですけどね・・・(笑)

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。

特許やぶりの女王 弁理士・大鳳未来【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『特許やぶりの女王 弁理士大鳳未来』(南原詠/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

特許権を盾に企業から巨額の賠償金をふんだくっていた凄腕の弁理士大鳳未来。
現在は「特許権侵害を警告された企業を守る」ことを専門にし東奔西走している。
今回のクライアントは、映像技術の特許権侵害を警告され、活動休止を迫られる人気VTuber・天ノ川トリィ。
調べるうちにさまざまな企業の思惑が絡んでいることに気づいた未来は、トリィを守るため、いちかばちかの賭けに出る――。
(本書より引用。)

 

人物紹介


大鳳未来:"ミスルト特許法律事務所"の弁理士特許権侵害を警告された企業を守るために活動。
姚愁林:同じく"ミスルト特許法律事務所"の弁理士で所長。
天ノ川トリィエーテル・ライブ・プロダクション所属のVTuber

感想

今回は特許権を題材とした珍しい作品です。

特許と言うと少々堅い印象を持たれてしまうかもしれませんが、内容もそこまで長くなく短編で構成されているため、想像するよりは軽い気持ちで読めるかと思います。

私自身、一企業の社員として何気なく特許に触れる機会がある人間ですが、その程度の浅はかな知識でも楽しめることができました。

内容としては何となく想像できるかもしれませんが、特許侵害を警告された企業から依頼された弁理士大鳳未来が鮮やかに解決する様を描いています。

中にはテレビの映像と言ういかにも特許権です!!と思わず肩肘を張ってしまう内容だけでなく、昨今話題になる"VTuber"が登場するものもあり、多くの人に馴染みやすいと思います。

一風変わったミステリを読んでみたい!そんな方にオススメしたい一冊です。

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

 

全体を読み終えての感想(ただの独り言)

まさかミステリで特許法や下請法といった言葉が出てくるとは思いませんでした。
仕事中に触れる機会がある方も多いのではないでしょうか。

私自身、仕事で他社の特許を読む機会があるのですが、他社の特許を把握することは面d…大切なことですよね。

いざ侵害する立場となってしまったら、もしいちゃもんを付けるような機会に出くわしてしまったら。
そんなことを考えながら読んでいました。

現実の特許権トラブルって、きっともっと泥臭いものですよね。
そこに親しみやすさを持たせつつ、堅苦しい説明は多すぎずといった加減が非常に読みやすかったです。

私ももっと特許を読む習慣を身につけないとなぁ。
あの独特な文章の言い回しが何とも・・・。

まぁきっと慣れますよね。
他社特許を侵害しないようにこれからも精進しようと思いました。

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。

アリアドネの声【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『アリアドネの声』(井上真偽/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

救えるはずの事故で兄を亡くした青年・ハルオは、贖罪の気持ちから救助災害ドローンを製作するベンチャー企業に就職する。業務の一環で訪れた、障がい者支援都市「WANOKUNI」で、巨大地震に遭遇。ほとんどの人間が避難する中、一人の女性が地下の危険地帯に取り残されてしまう。それは「見えない、聞こえない、話せない」という三つの障がいを抱え、街のアイドル(象徴)して活動する中川博美だった――。
崩落と浸水で救助隊の侵入は不可能。およそ6時間後には安全地帯への経路も断たれてしまう。ハルオは一台のドローンを使って、目も耳も利かない中川をシェルターへ誘導するという前代未聞のミッションに挑む。
(本書より引用。)

 

人物紹介


高木春生:ドローンビジネスを手掛ける株式会社タラリアに勤務。スクール事業部所属。
花村佳代子:ハルオの新人教育の担当。スクール事業部所属。
我聞庸一:ハルオより二期上の先輩。開発部所属。
韮沢粟緒:ハルオの高校の同級生。事故に遭って陸上競技者としての選手生命が絶たれた。
韮沢碧:粟緒の妹。失声症
中川博美:見えない、聞こえない、話せないの三重苦をもつ、令和のヘレン・ケラー

感想

drone camera

今回はドローンを用いた災害救助活動を描いた作品です。
さほど遠くない将来にはこのようなことも可能になるのだろうなと思うと、ワクワクしてしまいます。

しかし、その救助活動を行う相手が見えない、聞こえない、話せないの三重苦を抱える人物だったことから、事態は困難なものへとなっていきます。

ハルオはドローンを操縦してその女性を地下空間から救う役を務めることとなる。

手に汗を握るような切羽詰まった救出劇。
それだけで終わることなく、ミステリ要素が含まれていることが本作品の大きな魅力だと思います。

三重苦を抱えた女性を水没というタイムリミットまでに救うことができるのか。
ドローンを扱うハルオ、そして彼をサポートする周りをどこか応援しながら楽しんでもらえればなと思います。

私は手に汗を握りつつも最後まで非常に楽しむことができました。
読んで良かった一冊です。

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

 

全体を読み終えての感想(ただの独り言)

もしかしたら彼女に障害はないのではないか?
そんな疑惑が中盤で出てきましたが、その情報に翻弄されてしまいました。

三重苦を抱えているには、あまりにも行動が完璧すぎる、できすぎている。
救助指示をしながら、ハルオたちがそんな疑念を抱いてしまうのは思わず納得してしまいました。

そんなことがあったからこそ、最後の真相には思わず感動してしまいました。
無理なことなんてないかもしれない、そんな力強さを感じました。
勇気を与えてもらえた気がします。

ハルオが奮闘する様も非常に良かったですね。

無理なことは考えなくていい。考えるべきは、今の自分に何ができるか、だ。
(本書より引用。)


作中ではこの"無理"という言葉が何度も出てきましたが、本当に使い方の難しい言葉だなと思いました。

自分の中で"無理"を決めることは簡単だが、相手に"無理"を押し付けるのは時に残酷なこととなる。
何でもできるよ!無理なことなんてない!!だなんて口で言うのは簡単ですが、その線引きは自分にしかできないことがほとんどですもんね。

人に助言を求められた際には気安くこの言葉を使ってしまうこともありますが、少々考え直さないとなと思いました。

何を伝えたかったのか(これもただの独り言)

作中では少し未来で普及するであろうドローンだけでなく、体に難を抱えた人物が何人か登場します。

そしてその"身体障碍者"に関して、冒頭でこのような説明があります。

<盲ろう>者は全国で二万人以上いらっしゃるそうです。ちなみに視覚障碍者を含め、体のどこかしらに障害を持つ<身体障がい者>の方は、全国で四百万人以上―え?と思いますよね。日本の人口が一億二千万人くらいなので、実にその三パーセント以上が、何かしら体に難を抱える計算です。
(本書より引用。)


3%って相当な割合ですよね。
普段生活している中でそれほど感じない当たり、無意識のうちに見えないものとして蓋をしてしまっているのでしょうか。

もしくは、パッと見ただけでは判断できず、当人としては苦労しているのでしょうか。
そう思うと、現実って残酷だなって思ってしまいます。
私も無関係だと思ってしまっているんでしょうね。

最近だとヘルプマークを見かけることが珍しくなくなってきたので、多少なりとも優しくありたいと思いました。

さて、先ほども言いましたが本作品では"無理"という言葉が何度も出てきます。
序盤と終盤で出てきた文を紹介します。

「彼女みたいに、頑張りすぎる人がいると。ああいう人がいると、あれが基準になっちゃうじゃない。(中略)「無理なことは。無理なんだよ」
(本書より引用。)

 

成功のコツは、誰かと比べたりしないこと。あくまでも比べるのは、昨日の自分。<無理>から<できそう>に、<できそう>から<できる>に―
(本書より引用。)


あくまでも物事の限界を決めてしまうのは自分ですね。
そして、その感覚を人に押し付けてしまうことは、時に愚かなことだなと。

相手を思いやった助言は時に刃となり得るし、自分で自分の可能性を潰してしまうことも。

SNSが発展した昨今だからこそ、思わず人と比べてしまうこともありますよね。

自分の中の芯は決してブレることなく、貫いていこうと思えました。
人と比べたってしょうがないですもんね。

そして、時には気楽に生きたいと思いました(笑)

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。

むらさきのスカートの女【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『むらさきのスカートの女』(今村夏子/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

近所に住む「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性のことが、気になって仕方のない“わたし”は、彼女と「ともだち」になるために、自分と同じ職場で彼女が働きだすよう誘導する。
(「BOOK」データベースより引用。)

 

人物紹介


わたし:むらさきのスカートの女に興味を抱く人物。
むらさきのスカートの女:いつもむらさき色のスカートを穿いていることからそう呼ばれている。

感想

今回は"むらさきのスカートの女"と呼ばれる女性とそれを追う私の日々をつづった作品です。

物語冒頭から、"むらさきのスカートの女"とはどんな人物なのか。その人物を知る人はどのように思っているのか。
"わたし"視点での出来事がつらつらと書かれていきます。

あまり詳しいことは書けませんが、"むらさきのスカートの女"とはどうやら不思議な存在として認知されているようです。

"わたし"が何者であるのかぼやかされたまま話は進行していきます。
基本的に会話はなく、主観視点で描かれているのが本作品の一つの特徴かと思います。

果たしてこの女は何者なのか。
そして、この女に興味を持つ"わたし"自身もどのような人物なのか。

謎に迫るドキドキ感と共に本作品を楽しんでもらえればなと思います。

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

 

全体を読み終えての感想(ただの独り言)

さすが今村夏子さんって感じの本でした。
今村夏子さんを知ったきっかけはこちらあみ子でしたが、あれとはまた異なった没入感がありました。

そして読了後には、どこかもやもやとした余韻が残る。
綺麗な気持ちで読み終われないということも味があるんだなと教えてくれた著者でした。

ただ、やはり少々私にはカロリーが高いですね・・・。
しばらく時間を空けて、再び今村夏子さんの作品に触れてみようと思います。

さて、"むらさきのスカートの女"とは何者だったのか。
そして"わたし"とは何者だったのか。

序盤では、"むらさきのスカートの女"という存在にどこか不思議さを感じながら読んでいましたが、中盤あたりからやたらと"わたし"が"むらさきのスカートの女"の事情を把握しきるような事態となってきます。

さすがにそんなこと簡単には知り得ないのではないか?と言うことまで意のままに。
徐々にこの"わたし"と言う人物は何者で何をしている人なんだろうか。

そんな不気味さがふつふつと湧いてくるではありませんか。

最序盤といっても過言ではない箇所で何気なく出てきた"黄色いカーディガンの女"。
その対比がわかるにつれて、一体どちらの心情だったのだろう?という箇所まで出てくる始末。

明確な答えは私の中でできていませんが、考えてもわからない気がします。
もやもやさは抱えつつも満足感のある一冊でした。

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。

この夏の星を見る【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『この夏の星を見る』(辻村深月/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

亜紗は茨城県立砂浦第三高校の二年生。顧問の綿引先生のもと、天文部で活動している。コロナ禍で部活動が次々と制限され、楽しみにしていた合宿も中止になる中、望遠鏡で星を捉えるスピードを競う「スターキャッチコンテスト」も今年は開催できないだろうと悩んでいた。真宙(まひろ)は渋谷区立ひばり森中学の一年生。27人しかいない新入生のうち、唯一の男子であることにショックを受け、「長引け、コロナ」と日々念じている。円華(まどか)は長崎県五島列島の旅館の娘。高校三年生で、吹奏楽部。旅館に他県からのお客が泊っていることで親友から距離を置かれ、やりきれない思いを抱えている時に、クラスメイトに天文台に誘われる――。
(本書より引用。)

 

人物紹介


溪本亜紗:砂浦第三高校二年生。天文部所属。
飯塚凛久:同じく天文部所属の二年生。学校では珍しい男子生徒の一人。
綿引邦弘:天文部顧問。亜紗が星に興味を持つようになった原因の人物。

安藤真宙:渋谷区立ひばり森中学校一年生。学年唯一の男子生徒。
中井天音:真宙のクラスメート。理科部所属で真宙を誘った。
森村尚哉:真宙の担任。

佐々木円華長崎県立泉水高校三年生。長崎の五島列島で生まれ育った。
武藤柊:野球部所属。円華のクラスメート。島の外の福岡から来た。
小山友悟弓道部所属。武藤と同じく島の外の神奈川から来た。
才津勇作:五島天文台館長。

感想

今回はコロナ禍を舞台とした作品です。
もしかしたらこのようなことも起こっていたのかも?と感じながら読みました。

内容としては、遠く離れた地域に住む学生らが同じ星を観測するものとなっています。
星空は遠く離れていようとも、そしてコロナ禍で会うことが難しい中でも。
そんな状況でも、同じ星空を(天候によっては)楽しむことができます。

なんだか、星観測が好きだった頃の幼い私を思い出しました。
当時は星空を眺め、何座が見えるだの言って喜ぶ程度でしたが、望遠鏡をこしらえて見たらまた違った感想を抱くんでしょうね。

普段はあまり気を付けて観ることのない星空を眺めてみませんか?
遠く離れた友人と連絡を取ってみませんか?

どんな状況だろうと、楽しむ方法なんていくらでもあるんだなと再認識しました。
明日は夜空を眺めようと思います。

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

 

全体を読み終えての感想(ただの独り言)

私たちの状況って、今、すごくおかしいよね?
(本書より引用。)


コロナ禍の時にこう思っていた方も少なくはないのではないでしょうか。
とは言っても、何が正解なのかなんて誰にもわからない。
それはコロナ禍が落ち着いてきた今になっても。

今だからこそ言えることもあるのかもしれませんが、当時はその時にしかない独特な雰囲気がありましたからね。
言ってはいけないことは正しい、のかもしれない。

何が正解かなんて終わってみないと誰にもわからない。
だからといって、自分の境遇に文句を言うだけでなく、自分たちにできることを見つけて、作って実行した彼ら彼女らの美しさには目を見張るものがあります。

まぁ私が実際に学生時代にコロナ禍に巻き込まれていたら、ひたすらに文句を言っていただけの人になっていたと思いますが・・・。

だからこそ、彼ら彼女らの正に"今"を生きているんだという姿勢は見習うべきものがありました。

たとえどんな状況だろうと、今きっとできることが何かありますもんね。

何を伝えたかったのか(これもただの独り言)

どんな状況だろうと、どんな距離だろうと、誰とだって簡単に同じ時間を共有することができる。
何気ないことですけど、これって今のように技術が発展したからこそできる素晴らしいことですよね。

作中はまだコロナ禍の最初期で、混乱の最中にあります。
学生にとっては、本当に辛い日々だっただろうなと改めて痛感しました。

私たち大人からすれば、自粛なんて大したことない(人によるか・・・。)かもしれませんが、学生たちは本当に"今"しか味わえない瞬間にいましたからね。

ただ、そんな中でも何とかして自分たちのやりたいことを成し遂げたい!
そんな姿勢は本当に眩しいものでした。

作中ではこのように亜紗がコメントしています。

 

「コロナの年じゃなかったら、私たちはこんなふうにきっと会えなかったから。どっちがいいとか悪いとか、わからないね。悪いことばかりじゃなかったと思う」
(本書より引用。)


所詮はフィクションだからー、とか言うのは簡単ですが、自分もあのコロナ禍は悪いことばかりじゃなかったなと思います。

何年か経って、こんなこともあったよなー、と笑い飛ばせる日がいつかきっと来ますよね。

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。

透明な夜の香り【書評】

こんにちはしろはです。
今回は『透明な夜の香り』(千早茜/著)を紹介します。
※本文にはネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

 

 

 

あらすじ

 

元書店員の一香がはじめた新しいバイトは、古い洋館の家事手伝い。そこでは調香師の小川朔が、幼馴染みの探偵・新城と共に、完全紹介制の「香り」のサロンを開いていた。亡き夫の香りを求める女性の依頼や、匂いを手がかりに行方不明の娘を探す案件など、風変わりなオーダーが次々に舞い込んで―。
(「BOOK」データベースより引用。)

 

人物紹介


若宮一香:元書店勤務。アルバイト急募と書かれた求人広告を見て、バイト応募をした。
小川朔:調香師。嗅覚が非常に優れている。香りを作る仕事をしている。
新城:幼馴染みの探偵。興信所の人間。
源次郎:源さん。庭の面倒を見ている。

感想

今回は調香師と呼ばれる、人が望む匂いを作って生計を立てている人たちの暮らしを描いた作品です。

調香師である朔は非常に嗅覚が優れており、どんな匂いだろうと嗅ぎ分けることができます。
それがまだ発見されていない物質だろうと嗅ぎ分けることができ、再現することが可能。
まさに天才だからこそ成り立つ事業となっています。

そんな彼の元にはどのような依頼が来るのでしょうか。
私も似たような依頼をする状況になることがあるだろうか。何をお願いするだろうか。
そんなことをぼんやりと考えながら読んでいました。

全体の流れとしては、複数のセクションに分かれており、様々な客が朔らの元を訪れることとなります。
よって、片手間に香りを楽しめる一冊となっています。

私はいつも通り仕事の昼休憩中に読んでいましたが、普段では味わうことのできない幸福感がありました。
香りの良さを文章で再認識させられるとは思いませんでした。

読んで良かった一冊です。
ぜひ朔らが華麗に香りを元に依頼をこなしていく様子を堪能ください。

ネタバレありのコメント

これからはネタバレありのコメントをつらつらと書きますので、見たくないという方はここまでとしてください。
これまで見てくださり、ありがとうございました!

 

全体を読み終えての感想(ただの独り言)

読んでいるだけでどこからか匂いが感じられるような小説は初めて読みました。
また、匂いだけでなく料理を作る部分も多々あるため、最後まで飽きることなく五感を感じながら読むことができました。

私自身、香りって普段はあまり意識しないのですが、この小説を読んでいる間は草木や料理の匂いを意識しながら生活していた気がします。

懐かしい匂いを感じて感動するみたいな場面ってあるんでしょうか。
私にはこれだ!!というものがぱっと思いつきませんが、そういうものを再現してもらえるのを考えるととても素敵な仕事ですよね。

懐かしの景色や味とは違った、懐かしの匂い。
簡単に体験、作ることができないからこそ尊さを感じるのでしょうね。

匂いというものにももう少し注目してみようと思いました。

昨今だと"スメハラ"と言われて悪く言われることもある匂いですが、自然由来の良さもしっかり感じて生きたいです。

金木犀の香りしかわからないだなんてダメですよね・・・。

今回はこの辺で。
閲覧くださり、ありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。